- 公開日:2026/09/20
- 最終更新日:2026/09/20
働き方が多様化するなか、オフィスに求められる役割も大きく変わってきました。社員が黙々と作業するだけの場所から、アイデアが生まれ、人と人がつながる場所へ。そんな転換期にあるのが今のオフィスです。
本記事では、集中して仕事に向き合えるエリアと、自然な交流が生まれるオープンな空間をどう両立させるか、設計の考え方と実践のコツをまとめました。リフォームを検討中の経営層や施設運営に関わる方に役立つ内容です。
① モダンオフィスづくりに欠かせない3つのゾーニングの考え方
集中・交流・リフレッシュの3ゾーンが果たす役割を解説します。
② 社内コミュニケーションを促進するレイアウトと動線設計のポイント
フリーアドレスやABW、回遊型動線による偶然の出会いの生み方を紹介します。
③ 柔軟な働き方を支える設備・家具選定の考え方
可動式の仕切りや多機能家具を活用する工夫を整理します。
④ オフィスリフォームを成功させるための事前準備と注意点
ヒアリングの進め方や、費用・工期の目安を解説します。
空間をゾーン分けして働き方にメリハリを生む
モダンなオフィスづくりの第一歩は、用途ごとに空間を分けて使う発想です。一つの広い部屋で全てをまかなう時代は終わりつつあります。
集中ゾーンで個人作業の質を高める
静かに考え事をしたい、オンライン会議に集中したい。そんな場面に応える専用エリアを設けるのが今の主流です。背の高いパネル付きソファや一人用ブースを置けば、視線も音も遮られ、自分の世界に入り込めます。
ある調査では、こうした集中スペースを拡大した事例が9割を超えるという結果も出ています。背面型のデスク配置にすると前方の視界が開け、作業に没頭しやすい環境がつくれます。
交流ゾーンで自然な対話を生む
オープンなミーティングスペースを社内に点在させると、部署を越えた会話が生まれやすくなります。会議室を予約する手間なく、立ち話の延長で打ち合わせが始まるような気軽さがポイントです。
曲線を取り入れたカウンター席や、誰でも座れるフリーな席を設けると、人の流れやコミュニケーションに変化が生まれます。偶然の出会いから新しい企画が動き出す確率が高まるのは、こうした仕掛けがあってこそです。
リフレッシュゾーンで頭を切り替える
カフェのようなくつろぎの場所は、休憩だけでなく雑談の舞台にもなります。役職や部署の壁を越えて話せる環境は、組織の風通しをよくする効果があります。
キッチンスペースを休憩エリアの近くに設けると、コーヒーを淹れるついでの会話が生まれます。何気ない数分の立ち話が、思いがけないアイデアの種になることも珍しくありません。
▶ モダニズム建築とは?機能的×現代性が必要な理由をシーン別に解説
下の表は、3つのゾーンの特徴を整理したものです。
| ゾーン | 主な用途 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 集中 | 個人作業、オンライン会議 | 作業効率の向上、ストレス軽減 |
| 交流 | 打ち合わせ、ブレスト | 部署間連携、発想の広がり |
| リフレッシュ | 休憩、雑談 | 気分転換、関係性の構築 |
レイアウトの工夫で人の動きをデザインする
固定席だけのオフィスから、状況に応じて場所を選べる柔軟な配置へ。この流れがモダンオフィスの中心にあります。
フリーアドレスとABWで自由度を上げる
その日の業務内容に合わせて席を選ぶフリーアドレスや、活動別に場所を使い分けるABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)は、社員一人ひとりに選択肢を与える方式です。固定席にこだわらないことで、新たな組み合わせの会話が生まれます。
ただし完全な自由席だけでは落ち着かない人もいます。ワークブースを併設し、集中したい時はそこへ移れる構成にすると安心感が生まれます。柔軟さと安定感の両方を持たせる設計が成功の鍵です。
▶ オフィス設計の完全ガイド!建築設計がもたらす働きやすい環境づくり
回遊型の動線で偶然の出会いを増やす
まっすぐな通路だけのオフィスでは、人は最短距離しか歩きません。あえて緩やかなカーブやジグザグの動線をつくることで、普段会わない人と顔を合わせる機会が増えます。
動線の途中にちょっとした立ち話スペースを置くと、すれ違いざまの会話が打ち合わせに発展することもあります。移動の経路そのものをコミュニケーションの舞台に変える発想が大切です。
小規模オフィスでの優先順位
面積が限られる場合は、機能の重複を避けて優先度をはっきりさせます。全部を盛り込もうとすると中途半端になりがちです。一般的な島型レイアウトをベースにしながら、空いたスペースに小規模な打ち合わせコーナーを設けるだけでも、コミュニケーションを取りやすい環境につながります。
- 社員数と業務内容に合った席数を見極める
- 会議や打ち合わせの頻度から必要な個室数を決める
- 来客動線と社員動線を分けて考える
- 将来的な人員増減にも対応できる余白を残す
設備と家具で空間に変化をつける
レイアウトが決まっても、選ぶ設備や家具次第で使い勝手は大きく変わります。柔軟に使える家具を選ぶことが、モダンオフィスづくりのポイントです。
仕切りで空間の表情を変える
移動できるパネルや折りたたみ式の間仕切りを使えば、その日の用途に合わせて広さを調整できます。普段はオープンな会議エリアを、研修日には仕切って複数の小部屋に変える、といった使い方が可能です。
音や視線をやわらげる素材を選べば、開放感を保ちながら集中も妨げません。空間を固定せず、その時々の必要に応じて変化させられる柔軟さが現代のオフィスには欠かせません。
多機能な家具で限られた面積を活かす
パネル付きソファや収納を兼ねたベンチなど、一つで複数の役割を果たす家具は省スペース化に効果的です。打ち合わせと個人作業の両方に使えるブース型の席もよく選ばれています。
家具のデザインを統一すると空間全体に落ち着きが出ます。一方で素材や色に少し変化をつけると、ゾーンごとの違いが視覚的にも伝わりやすくなります。
▶ おしゃれなオフィス内装の作り方|企業ブランドを高める空間デザインのポイントを紹介
照明と音環境を見直す
明るすぎる照明や反響しやすい床材は、集中の妨げになります。集中エリアは色温度を抑えめに、交流エリアは少し明るめに、と場所ごとに調整すると体感が変わります。
吸音性のある天井材や床材を取り入れると、会話の声が広がりすぎず、近くの人との対話だけがはっきり聞こえる環境になります。見た目だけでなく音と光の設計まで含めて考えることで、本当に居心地のよい空間になります。
設備や家具で空間に変化をつける際、柱や梁といった構造的なノイズを抑え、室内全体の開放感や柔軟性を高めることがひとつの鍵となります。ここでは、鉄骨構造でありながら構造材の存在感を消し去り、すっきりとした大空間を実現した本社オフィスの新築事例をご紹介します。
事例紹介:単一素材と均質な光が集中を生むオフィス(Wood Wool Workful)
株式会社丸尾建築 西宮支店の事例を用いて、素材の選択や独自の照明計画、多機能な什器によってノイズのない執務環境をどのように実現しているか見ていきましょう。
- コンセプト:「Wood Wool Workful」。天井・壁・什器を木毛セメント板で統一。余計な装飾や色彩を排したストイックな空間構成により、働く人の意識やステイタスを高めるオフィス。
- レイアウトと機能性:15坪(約50㎡)という限定されたスペースの中で、木毛セメント板で造作した大型什器に膨大な書類やサンプル収納を集約。生活感を排除し、執務の集中度を維持。
- 照明計画:天井の格子状開口にオリジナル制作の光幕(光天井)を組み込み、空間全体をムラなく照らす均質な光環境を創出。目への負担と視覚的ノイズを低減。
- ブランド形成:来客用ではなく社員専用の営業オフィスでありながら妥協のない意匠を尽くすことで、組織への誇りを育み、人材獲得(リクルート)と定着率の向上に貢献。
| 用(機能性) | 一見すると単なる塊に見える什器内部に大容量収納を組み込み、日常の作業スペースを広く保ちながら業務に必要な実務性能を担保。 |
|---|---|
| 強(構造・耐久性) | 建築下地材としても重用される木毛セメント板を空間全体に徹底的に用いることで、高いコストパフォーマンスと質実剛健な質感を形成。 |
| 美(美観) | 単一素材による無機質なテクスチャーと天井全面からの柔らかな光が調和し、静寂の中に美意識と集中力を研ぎ澄ます独自の空間美を表現。 |
リフォームを成功させる進め方
計画の立て方ひとつで、リフォームの満足度は大きく変わります。社内の声を集めるところから始めましょう。
現状把握とヒアリングを丁寧に
まずは今のオフィスの何が問題かを洗い出します。会議室が足りないのか、集中できる場所がないのか、人によって感じ方は違います。アンケートや小グループの聞き取りで実態をつかみます。
経営層の意向だけで進めると、現場との温度差が生まれます。使う人の声を拾い上げてから設計に入ることが、長く愛されるオフィスへの近道です。
予算と工期の目安を知る
内装のリフォームは規模にもよりますが、工期は3〜6ヶ月が一つの目安です。スケルトン状態から作り直す場合は、さらに2〜3ヶ月加わると考えておくと安心です。
費用は仕様や面積で変わるため一概には言えませんが、早い段階で設計事務所に相談し、概算をつかんでおくと判断がしやすくなります。下の表は、検討の流れをまとめたものです。
| 段階 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| ヒアリング・調査 | 現状把握、要望整理 | 1〜2ヶ月 |
| 基本設計 | ゾーニング、平面計画 | 1〜2ヶ月 |
| 実施設計 | 詳細図面、仕様確定 | 1〜2ヶ月 |
| 工事 | 解体、施工、検査 | 3〜6ヶ月 |
設計事務所との関わり方
設計事務所は図面を描くだけでなく、工事監理という立場で施工会社の仕事をチェックする役割も担います。一方、施工会社は工事管理として現場を動かします。この二つは似た言葉ですが役割が違います。
両者がうまく連携していると、想定外のトラブルが起きても柔軟に対応できます。設計と施工を分けて発注することで第三者の視点が入るのは、規模の大きいリフォームほど大きな安心につながります。
よくある質問
Qオフィスリフォーム中も業務を続けられますか?
A規模や工法によりますが、フロアを区切って段階的に進めることは可能です。ただし騒音や粉じんが出る工程もあるため、一時的な仮事務所への移転を検討するケースも多くあります。設計段階で施工会社と相談しておくと安心です。
Q小規模なオフィスでもモダンな空間にできますか?
A十分可能です。むしろ面積が限られている分、家具やレイアウトの工夫が効果的に働きます。多機能家具や折りたたみ式の仕切りを使えば、一つの空間に複数の役割を持たせられます。
Q社員の意見はどこまで反映すべきですか?
Aすべてを取り入れる必要はありませんが、日々使う人の感覚は貴重な情報です。アンケートで傾向をつかみ、共通する不満や要望を優先して設計に反映するのが現実的な方法です。
まとめ
この記事では、モダンなオフィスへとリフォームする際に押さえたいゾーニング、レイアウト、設備の考え方を整理しました。集中と交流のバランスをどう取るかが、働きやすさを決める大きな分かれ目になります。
リフォームは一度で終わるものではなく、使いながら少しずつ育てていくものです。完璧を目指すより、変化に対応できる余白を持たせる設計が長く活きます。ぜひ自社に合った形を探してみてください。
「商業建築の設計は、ただ美しい箱を作りだすためのプロセスであってはならない。」というのが、私達KTXの考え方です。
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✓ 集中・交流・リフレッシュの3ゾーンを設けることで働き方にメリハリを生み出せる
✓ 動線計画や家具配置を工夫することで偶発的な対話やコミュニケーションが促進される
✓ 計画初期から社員ヒアリングを実施し、現場の要望を設計へ反映することが重要
✓ 設計と施工それぞれの役割を理解したうえで、信頼できるパートナーへ相談することが成功につながる
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2026.09.20

【この記事を書いた人 松本哲哉】
KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師
2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界9位(日本国内1位)
【お問い合わせ先】
KTXアーキラボ一級建築士事務所
東京都港区南麻布3-4-5 兵庫県姫路市船丘町298-2
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