オフィスロビーを交流の起点に!コミュニケーションを活性化する内装設計

 
     
  • 公開日:2026/08/23
  •  
  • 最終更新日:2026/08/24
オフィスロビーを交流の起点に!コミュニケーションを活性化する内装設計

オフィスのロビーは、来訪者が最初に足を踏み入れる場所であり、社員が毎日通り過ぎる空間でもあります。ここをただの通過点として扱うのか、それとも企業文化を伝え、人と人をつなぐ場として育てるのかで、その後のビジネスや組織の空気感は大きく変わります。

本記事では、ロビーを「交流の起点」として機能させるための内装設計の考え方を、ブランド表現・動線・照明・展示活用の観点から整理しました。

この記事でわかること

企業らしさを自然に伝えるオフィスロビー設計の考え方

第一印象が事業に与える影響と、素材・色選びの基本を解説します。

来訪者と社員が心地よく行き交う動線計画のポイント

誘導サインやセキュリティと開放感を両立させる配置の工夫を紹介します。

会話しやすい空間をつくる照明や色彩の工夫と取り入れ方

ゾーンごとの照明計画と、季節・時間帯に応じた調整方法を整理します。

展示やディスプレイを活用してロビー空間を育てる際の注意点

情報量より物語性を優先する展示の考え方と運用のコツを紹介します。

オフィス建築設計事例TIAの内装デザイン

第一印象を左右するオフィスロビーの役割

ロビーは企業の顔であり、来訪者が会社を判断する最初の数秒が決まる場所です。ここで伝わる印象は、その後の商談や採用活動にも影響します。

第一印象が事業に与える影響

来訪者は受付に向かうまでのわずかな時間の中で、その会社に対する印象を自然と形づくっていきます。素材の質感や照明の雰囲気、香りや音の心地よさなど、空間の細かな要素が、安心感や期待感につながっていくためです。

ロビーの第一印象は、商談の入り方や採用候補者の志望度にまで影響する重要な接点であると捉え、設計段階から優先度を高く位置づけるべきです。経営層が判断に関わる場面でも、空間全体の落ち着きや整った雰囲気が、企業への信頼感を支える要素になります。

関連記事
ロビーを単なる通過点ではなく、企業のアイデンティティを伝える場にするための「空間ブランディング」の考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶ 空間ブランディングとは?印象に残る建築デザインをつくるための考え方

ブランドを伝える素材と色の選び方

床に石材、壁に木のパネル、サインに金属を使うなど、素材の組み合わせ方ひとつで企業の個性は伝わります。コーポレートカラーを家具や照明にさりげなく取り入れると、押しつけがましくない統一感が生まれます。

注意したいのは、流行のスタイルをそのまま当てはめないことです。自社の事業内容や顧客層と合わない素材を選ぶと、せっかくのオフィスロビーが借り物のように映ってしまいます。

素材や色彩の選定に加え、鏡面効果や照明を巧みに組み合わせることで、訪問者に圧迫感を与えない圧倒的な開放感と先進的な世界観を表現した実際の事例を見てみましょう。

事例紹介:天井鏡と白が創り出す圧倒的な開放感と未来空間(Learning Bright)

松尾学院 東進衛星予備校 JR京阪京橋駅北校の事例を用いて、これまでの内容を実際の空間にどう落とし込んでいるかについて詳しく見ていきましょう。

■ プロジェクトの要点
  • コンセプト:「Learning Bright(ラーニング・ブライト)」。ガラスと白を基調とした洗練されたカラーリングにより、先進性とワクワク感を高める「未来教室」の空間デザインを創出。
  • 天井鏡と広がり:天井面に鏡を施工することで視線を垂直方向へ拡張。圧倒的な開放感を生み出すとともに、照明光を立体的に反射させて空間全体を明るく演出。
  • ガラスと白の素材構成:透明なガラス間仕切りと白をベースにした統一感のある内装により、近未来的な透明感と洗練されたブランドイメージを確立。
  • ブランド形成:一歩足を踏み入れた瞬間から「新しい学びの場」を体感させるデザインが、来訪者や生徒の期待感を高め、施設独自の存在感を強烈に印象づける。
「用・強・美」で見る価値
用(機能性) 天井鏡による光の反射増幅とガラス仕切りによるクリアな視界構成が、空間全体に均一な明るさを届け、明るく見通しの良い高機能な学習・交流環境を整備。
強(構造・耐久性) 鏡面天井やガラス、白基調の異なる素材を精密に納める確かな設計技術により、限られた室内空間の圧迫感を払拭した堅牢かつ伸びやかな構造を実現。
美(美観) 天井鏡が与える無限の奥行き感と、白とガラスが醸し出す透明感が融合し、まるで近未来の「未来教室」を訪れたかのような先進的で記憶に残る美観を創出。

社員にとっての価値も忘れない

ロビーは外部向けの顔だけでなく、社員が出社時に最初に触れる場でもあります。気持ちよく一日を始められる空間は、組織全体のモチベーションにも影響します。

来訪者向けの見た目ばかりを重視すると、社員にとっては落ち着かない空間になってしまうことがあります。両者の視点をバランスよく設計に反映することが、長く愛される空間づくりの鍵となります。

動線設計で自然な交流を生み出す工夫

来訪者が迷わず移動でき、社員と自然にすれ違える動線をつくることで、会話のきっかけは生まれやすくなります。

入口から受付までの導き方

入口に立った瞬間に、どこへ進めばよいか直感的にわかる配置が理想です。受付カウンターの位置、サインの高さ、床材の切り替えなど、視線を誘導する要素を組み合わせて整えていきます。

通路の幅は最低でも1.2メートル程度を確保し、車椅子やベビーカーでも無理なく通れるようにしておくと安心です。避難経路と兼ねる場合も多いため、消防法上の要件も早い段階で確認しておきましょう。

待合と交流が生まれるレイアウト

受付の近くに少し腰を下ろせるソファや立ち話ができるカウンターを設けると、商談前の雑談や偶発的な出会いが生まれます。固すぎず、くつろぎすぎない椅子の硬さがちょうどよいバランスです。

以下の表は、動線設計で意識したい要素を整理したものです。

オフィスロビーの動線設計で押さえる要素
要素 設計の工夫 交流への効果
誘導サイン 入口から受付までの視線を切らさない 来訪者がリラックスして会話に入れる
セキュリティ 入退館管理を温かみのある素材で隠す 緊張感を抑えた応対が可能になる
待合スペース ソファとカウンターを使い分ける 立ち話と着席の両方が選べる

セキュリティと開放感の両立

セキュリティを強めるほど閉鎖的に見えやすく、開放感を求めるほど管理が緩く見えるという矛盾を、素材と配置の工夫で解く必要があります。木の温もりやガラスの透明感を活用すると、印象を和らげられます。

ゲートの位置を一段奥に下げ、その手前に自由に滞在できるエリアを設けるレイアウトもひとつの解です。来訪者が窮屈さを感じにくく、社員も気軽に立ち寄れる場になります。

照明と色彩で心地よさと会話を引き出す

照明と色彩は、空間の雰囲気を決める大きな要素です。用途に応じた使い分けで、自然な会話が生まれやすくなります。

ゾーンごとの照明計画

受付まわりは顔が暗く映らないよう、中間色温度の柔らかい光で整えます。待合エリアは少し暖かみのある電球色を選ぶと、肩の力が抜けて会話に入りやすい雰囲気になります。

天井からのダウンライトだけに頼らず、ペンダント照明や間接照明を組み合わせると、空間に奥行きが生まれます。光に強弱や広がりが出ることで、オフィス特有の無機質な印象がやわらぎ、落ち着いて過ごしやすい雰囲気につながります。

色彩計画と素材の調和

壁や床の色は、コーポレートカラーをそのまま広い面積に使うのではなく、ベース・アソート・アクセントの3層に分けて整理する考え方が扱いやすいです。落ち着いたベースに、企業らしさを差し色で添える組み合わせが定番です。

以下のリストは、ゾーンごとの照度と色調の目安です。

ゾーンごとの照度と色調の目安
  • 受付エリア:500ルクス前後・中間色温度で表情が見やすい光に
  • 待合エリア:300ルクス前後・電球色で落ち着いた雰囲気に
  • ミーティング寄りスペース:調光対応で議論の濃さに合わせる

季節や時間帯への配慮

朝と夕方では自然光の入り方が変わるため、時間帯に応じて照明を切り替える仕組みがあると便利です。調光・調色対応の器具を選んでおくと、後からの調整もしやすくなります。

季節ごとに小物や植栽を入れ替えるだけでも、空間の表情は変わります。大きな改装をせずとも、来訪者に新鮮さを感じてもらえる工夫として有効です。

展示を活用してロビーを育てる手法

ロビーを「見せる場」として活用すると、会話のきっかけが増え、企業のストーリーも自然に伝わります。

展示で何を伝えるかを決める

製品やサービスのサンプル、導入事例、創業からの歩みなど、伝えたい内容は企業によってさまざまです。すべてを並べるのではなく、来訪者にいちばん知ってほしいテーマを一つ決めて構成すると、印象に残ります。

展示は情報量より物語性を優先したほうが、見る人の記憶に残りやすく、その後の会話にもつながりやすいという点を意識しましょう。

関連記事
ロビー展示を単なる情報掲示ではなく、ブランドを体験してもらう場として設計する考え方は、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
▶ ブランド価値を体験に変えるショールーム設計とは?“魅せる空間”を生むデザインの考え方

更新しやすい仕組みをつくる

展示は作って終わりではなく、定期的な入れ替えを前提に設計することが大切です。マグネット式のパネルや差し替え可能なフレームを採用すると、運用の手間を抑えられます。

以下の表は、展示手段ごとの特徴を整理したものです。

ロビー展示の手段と運用のしやすさ
展示手段 向いている内容 更新の手間
実物サンプル 製品の質感や機能を伝えたい場合 やや大きい
サイネージ ニュースや事例を頻繁に更新したい場合 小さい
パネル・冊子 企業の歴史や理念を伝えたい場合 中程度

社員が関われる仕組みにする

展示の企画や入れ替えに社員が関わると、ロビーへの愛着が生まれます。部署ごとに月替わりで担当するなど、参加のハードルを下げる仕掛けが効果的です。

社員自身が自社の魅力を再発見する機会にもなり、来訪者への説明にも熱がこもるようになります。空間が育つほど、組織の結束も強まっていきます。

設計を依頼する際に押さえるべき視点

ロビーの設計は、内装デザインだけでなく、ブランドや運用まで含めた総合的な視点で進める必要があります。

建築設計と内装設計の違いを理解する

建物そのものから新築する場合は、規模や構造によって工期が大きく変わります。木造の小規模な建物なら1年ほど、鉄骨造の大規模な建物では完成まで5年かかることもあります。

既存ビルの一区画を改装する内装設計であれば、工期は3〜6ヶ月が目安です。スケルトンからの工事になる場合は、さらに2〜3ヶ月の追加が必要になります。

費用感とスケジュールの目安

建築工事費は規模・構造・法的要求条件・地域によって幅が大きく、坪単価で110万円から315万円程度まで開きがあります。一律の標準額を出すのは難しいため、初期段階でのヒアリングが重要です。

設計のフローは、ヒアリングから測量、法令調査を経て、ゾーニングや配置計画、基本設計、実施設計、確認申請へと進みます。各段階で経営判断が必要な場面があるため、決裁ラインの整理も早めに行っておきましょう。

関連記事
ロビー設計の指針となり、デザインのブレを防ぐ「建築コンセプト」の立て方や重要性については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
▶ 建築コンセプトとは?設計前に知っておきたい考え方と成功事例

工事監理と工事管理の違い

設計事務所が担うのは「工事監理」で、図面通りに施工されているかを第三者の立場で確認する役割です。一方、工事会社が行うのは「工事管理」で、現場の進行や安全、品質を取りまとめる業務を指します。

設計パートナーを選ぶ際に確認したい視点
  • 建築・インテリア・サインまで一貫して相談できるか
  • 過去の実績にブランド表現の事例があるか
  • 工事監理の体制と報告の頻度が明確か
  • 運用後のメンテナンスや改装提案まで視野に入れているか

よくある質問

Qオフィスロビーの内装工事はどのくらいの期間がかかりますか?

A一般的な内装工事であれば3〜6ヶ月が目安です。スケルトンからの工事や設備の大幅な変更を伴う場合は、さらに2〜3ヶ月程度の追加期間を見込んでおくと安心です。

Qロビー設計でブランド表現と機能性を両立させるコツはありますか?

A素材や色の使い方でブランドを伝えつつ、動線や照明は来訪者の使いやすさを軸に設計するのが基本です。デザインと機能のどちらかに偏ると、長く愛される空間にはなりにくくなります。

Q既存のオフィスでもロビーの印象を変えられますか?

A大規模な改装をしなくても、照明の入れ替えや家具の更新、展示エリアの追加だけで印象は大きく変わります。まずは小さな改善から始め、効果を見ながら段階的に進める方法もあります。

まとめ

この記事では、オフィスロビーを交流の起点として活かすための設計の考え方を、ブランド表現、動線、照明、展示活用の観点から整理してきました。来訪者と社員の双方にとって心地よい空間を目指すことが、組織と事業の両方に好影響を与えます。

ロビーは一度作ったら終わりではなく、運用しながら育てていく場所です。経営判断に関わる方こそ、設計の初期段階から関わり、自社らしさをどう表現するかを言葉にしていく姿勢が求められます。

「商業建築の設計は、ただ美しい箱を作りだすためのプロセスであってはならない。」というのが、私達KTXの考え方です。

より大きなベネフィットを生む建築を創り出し、投資に見合う利益を還元するビジネスツールを我々は設計しています。建築設計からインテリアの空間デザイン、グラフィックに至るまで、あらゆるデザインを一貫してコントロールすることであなたのビジネスに強力な付加価値を生み出します。もし、建築設計についてお悩みなのであれば、是非一度我々にご相談ください。

この記事のまとめ

ロビーは企業の第一印象を左右する空間であり、商談や採用にも影響を与える重要な接点となる

動線や照明、色彩、展示の見せ方まで丁寧に設計することで、自然な交流が生まれやすい空間につながる

来訪者だけでなく社員の使いやすさにも目を向け、運用しながら改善を重ねていく姿勢が大切

空間全体に統一感を持たせるためには、建築・内装・グラフィックまで一貫して相談できる設計パートナー選びが重要となる

空間の目的やブランドイメージに合わせてご希望に沿った建築設計をご提案しております。デザイン相談はこちら



【この記事を書いた人 松本哲哉】
KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師
2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界9位(日本国内1位)

ウィキペディア 松本哲哉(建築家)

【お問い合わせ先】
KTXアーキラボ一級建築士事務所
東京都港区南麻布3-4-5 兵庫県姫路市船丘町298-2
kentixx@ktx.space 03-4400-4529 https://ktx.space/
【関連記事リンク】
代表松本 Newsweek 誌インタビュー / KTXアーキラボ プロフィール / 建築設計・内装デザイン 事例集 / YouTube 動画チャンネル

コメントを残す

LINE公式アカウントLINEで何でもご相談下さい

設計にはどのくらい時間がかかる?
予算はどのくらい必要?
物件が自分の業種に合っているか相談したい