【2026年最新】ナフサショックとは?建築資材の供給危機・値上げの実態と5つの対策

 
     
  • 公開日:2026/04/20
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  • 最終更新日:2026/04/20
2026年2月のイラン軍事情勢悪化を受け、建築業界は「ナフサショック」と呼ばれる前例のない資材危機に直面しています。塗料・断熱材・防水材・内装材を中心に40〜80%超の緊急値上げが相次ぎ、供給停止も現実化。住宅・商業施設・公共建築を問わず、あらゆる建設プロジェクトが影響を受けています。本記事では2026年4月時点の最新情報をもとに、建築業界全体への影響と実務的な対処法を解説します。

1. 何が起きているのか——ナフサショックの構造

2026年2月28日、米国・イスラエルによるイラン攻撃が発生しました。ホルムズ海峡という世界の原油輸送の要衝が不安定化し、日本の建築業界に連鎖的な打撃を与えています。

問題の核心は「原油価格」ではなく「ナフサの物理的不足」です。

ナフサとは原油を精製した際に得られる石油化学の基礎原料で、塗料・断熱材・防水シート・シーリング材・床材・壁材・接着剤など、現代建築に不可欠な膨大な数の資材の原料となっています。日本は国家備蓄として原油を約230日分保有していますが、ナフサは備蓄対象外で民間在庫は約20日分しかありません。

⚠️ 建築業界が受ける本質的な打撃
政府は2026年3月30日、石油製品を医療用途に優先供給する方針を発表しました。これは建築・リフォーム向け資材の調達優先度が必然的に下がることを意味します。「日本に石油が入ってくること」と「建設現場に資材が届くこと」はまったく別問題です。原油価格が落ち着いたとしても、建材の供給正常化には相当の時間がかかります。


2. 資材別・値上げ・供給停止の実態(2026年4月時点)

塗料・シンナー——最大80%の衝撃

建築用塗料の大手メーカーであるエスケー化研は2026年4月1日にシンナー製品を30〜80%値上げし、その約1週間後には水性・溶剤・粉体製品全般にも値上げ幅を拡大しました。日本ペイントは2026年4月17日から一時的に下塗り材の受注を完全停止しています。外壁塗装・屋根塗装・鉄骨塗装を問わず、塗装工事全般で工事費の5〜8%増額が不可避な状況です。

断熱材——主要メーカーが一斉値上げ・受注制限

アキレス・カネカ・デュポン・スタイロ・旭化成建材(ネオマフォーム・ネオマゼウス)など主力メーカーが2026年3月中旬以降、相次いで値上げと受注制限を表明しています。住宅・非住宅を問わず断熱性能を担保する上で不可欠な製品群であり、ZEB・ZEH対応案件への影響も懸念されます。

内装材——床材・壁材も20〜30%上昇

東リは2026年7月27日受注分からビニール床タイル・床シート・壁装材を20〜30%値上げ。サンゲツも7月1日受注分から壁装材・床材を18〜30%程度値上げすると発表しています。オフィス・商業施設・公共施設・住宅の内装工事に広く影響します。

防水材・外壁材——ルーフィングは40〜50%増

外壁材最大手のニチハは透湿防水シートの供給制限を通知。屋根の防水シート(ルーフィング)は2026年5月1日出荷分から40〜50%の大幅な価格改定が予告され、資材確保できず屋根工事に着手できない現場が既に発生しています。

シーリング材——入手が極めて困難な状況

塗料と同様にナフサ由来であるシーリング材(充填剤)も原材料不足により入手が非常に困難な状態となっています。外壁目地・サッシ周り・屋根板金など、新築・リノベーション問わずほぼすべての工事に影響する資材です。

住設機器——TOTOがユニットバス新規受注を一時停止

🚨 供給停止情報(2026年4月時点)
TOTOは2026年4月13日より、システムバス・ユニットバスを含む全シリーズの新規受注を一時停止しました。既発注品は順次出荷予定ですが、再開時期は未定です。住宅・ホテル・福祉施設・医療施設など、衛生設備を含むあらゆる建物用途で影響が出ています。

3. 建設業界全体への波及——二極化が加速する

帝国データバンクが2026年4月3〜7日に実施した調査では、中東情勢による原油高騰・供給不安が経営に「マイナス影響がある」と回答した企業が96.6%にのぼりました。半年以上事態が長引いた場合、4割超の企業が主力事業の大幅縮小を余儀なくされる可能性があるとしています。

■ 工種別・影響の深刻度

最大級の影響:塗装・防水・舗装(石油化学製品に直接依存)
大きな影響:木造住宅(工務店)・リフォーム業者・解体業者
中程度の影響:非住宅新築(店舗・オフィス・施設)
比較的軽微:電気・設備工事(公共・非住宅系)

特に深刻なのは負債規模5,000万円未満の零細・中小企業です。大手ゼネコンや資材仕入れルートを持つ企業は先行発注・複数ルート確保で乗り越えられますが、仕入れルートが乏しい中小業者は資材が物理的に手に入らない状況に直面しつつあります。

また、新設住宅着工戸数は2026年2月時点で前年同月比マイナス5%・4ヶ月連続減となっており、情勢不透明な中での住宅購入様子見が加速しています。一方、公共工事・非住宅の事業系建設は政府から価格交渉に応じる旨の通達が各自治体に出ており、相対的に対応しやすい状況です。


4. プロジェクトへの具体的影響

建築費の上昇幅

三井住友トラスト基礎研究所の試算によれば、現在の原油価格水準が継続した場合、建築費は前年比で5%以上の上昇が見込まれています。石油化学系資材(塗料・断熱材・防水材・内装材)単体では40〜75%という異常な値上げが全体コストを押し上げており、工務店・設計事務所レベルでこの上昇分を吸収することは事実上困難です。

工期の不確実性

先週まで通常入手できていた資材が今週には入手不能になるケースが実際に発生しています。ルーフィング材の受注停止で屋根工事に着手できない現場、シーリング材の入手困難で外壁工事が止まる現場が増えており、当初の竣工スケジュールを維持できないプロジェクトが今後急増する可能性があります。

新設から改修・リノベへのシフト

資材高騰と金利上昇の同時進行を受け、デベロッパーや事業者の間では新設から既存建物の改修・リノベーションへのシフトが加速しています。新築に依存する鉄筋・型枠工事は徐々に影響を受ける一方、電気・設備系は比較的受けにくいと予測されています。


5. 設計者・事業者が今取るべき対処法

✅ 今すぐ取るべき5つのアクション

① 使用資材の早期確保・代替品の事前選定

設計確定前であっても、使用が想定される資材の早期発注・確保を検討してください。特にTOTOのユニットバスのように新規受注が止まっている製品は、代替品の選定を並行して進めることが急務です。

② 契約に「資材変動条項」を明記する

これからの設計契約・工事請負契約には、極端な資材高騰が発生した際の費用分担ルールを事前に明記することを強く推奨します。施主・設計者・施工者の三者が事前に合意しておくことが、後の紛争を防ぐ最善策です。

③ 石油化学系資材への依存を設計段階から下げる

塗装面積の削減(タイル・金属・木材への切り替え)、防水仕様の見直し、断熱工法の代替検討など、設計の初期段階から石油化学系製品への依存度を下げるアプローチが有効です。意匠的な制約が少ない部分から代替素材を積極的に検討してください。

④ 補助金・支援制度を最大活用する

中小企業庁は中東情勢等を踏まえた中小企業・小規模事業者向け支援を発表しています。また「給湯省エネ」「みらいエコ住宅」など2026年度の補助金も資材コスト上昇分の補填手段として有効です。設計初期段階から活用可能な制度を洗い出しておくことが重要です。

⑤ 仕入れルートを複数持つパートナーを選ぶ

今後は建材を仕入れられるかどうかが、そのまま「着工できるかどうか」に直結します。複数の仕入れルートを持ち、メーカーとの直接取引実績がある設計事務所・施工会社を選定することが、プロジェクトの実現可能性を大きく左右します。


まとめ

今回の中東情勢による「ナフサショック」は、建築業界にとって2021年のウッドショック・2022年のウクライナ危機を超える規模の打撃をもたらしつつあります。値上げのみならず「物理的に手に入らない」という供給停止の局面は、住宅・非住宅・公共建築を問わずあらゆるプロジェクトに影響します。

建設プロジェクトを計画・推進している設計者・施主・事業者は、今すぐ見積もりの再試算・資材の早期確保・契約条件の見直しを進めることが求められます。

KTXアーキラボでは、資材動向を踏まえた現実的なコスト設計と、代替仕様の提案も含めた総合的なプロジェクトマネジメントをご提供しています。


2026.4.20


【この記事を書いた人 松本哲哉】

KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界9位(日本国内1位)

ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


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