飲食店の内装デザインの考え方|コストとデザインを両立し、選ばれる店に変える秘訣

 
     
  • 公開日:2026/01/06
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  • 最終更新日:2026/01/06

飲食店経営において、料理の味やサービスと同じくらい重要な要素が内装デザインです。どれほど優れた料理を提供していても、空間の魅力が不足していれば顧客の心をつかむことはできません。内装デザインは単なる装飾ではなく、ブランド価値を体現し、顧客体験を設計し、最終的に収益を生み出すビジネスツールなのです。

この記事では、飲食店の内装デザインにおけるコストとデザイン性の両立方法、そして選ばれる店舗へと変革するための具体的な戦略について解説します。

飲食店 外観

飲食店の内装デザインが売上を左右する理由

飲食店において内装デザインは、顧客の心理と行動に直接的な影響を与える重要な経営資源です。空間の質が顧客満足度を高め、リピート率や客単価の向上につながります。ここでは、内装デザインがビジネス成果に結びつくメカニズムを解き明かします。

第一印象が集客力を決める仕組み

飲食店において、外観や入口から見える内装の第一印象は顧客の入店判断を大きく左右します。特に新規顧客にとって、店舗の外観と内装の雰囲気は、料理の味を想像させる唯一の情報源です。

内装デザインの第一印象を構成する要素には、照明の明るさと色温度、色彩計画、素材の質感、清潔感などがあります。例えば、暖色系の照明と木材を多用した空間は温かみと安心感を与え、心理的ハードルを下げます。一方、モノトーンでシャープなデザインは洗練された印象を与え、高級感を求める顧客層に訴求する力を持ちます。

さらに重要なのは、内装デザインとブランドコンセプトの一貫性です。イタリアンレストランであれば、地中海を連想させる色彩や素材選びが期待と一致し、顧客の信頼感を醸成します。逆にコンセプトとデザインにギャップがあると、顧客は違和感を覚え、リピートにつながりにくくなります。第一印象の設計は、単なる見た目の美しさではなく、ターゲット顧客の期待値をいかに的確に満たすかという戦略的思考が求められます。

空間設計と客単価・滞在時間の相関性

内装デザインは、顧客の心理状態だけでなく、滞在時間や消費行動にも影響を及ぼします。空間設計の質が高ければ、顧客は居心地の良さを感じて滞在時間が延び、結果として追加注文の機会が増えるという好循環が生まれます。

座席配置と動線設計は、この好循環を生み出す重要な要素です。プライバシーが確保された半個室風のブース席は、顧客に安心感を与え、ゆっくりと食事を楽しむ雰囲気を作り出します。一方、回転率を重視するカフェや定食屋では、適度な開放感と程よい賑わい感が、長居しすぎない快適さを演出します。このように、ビジネスモデルに応じた空間設計が収益性を最適化します。

空間設計が収益に与える影響
設計要素 顧客心理への影響 期待される経営効果
座席間隔の広さ プライバシー感、リラックス度 滞在時間延長、客単価向上
照明の明るさ・色温度 覚醒度、食欲、居心地 回転率調整、雰囲気づくり
音響・BGM リラックス、会話のしやすさ 滞在時間調整、ブランド体験
視覚的な抜け感 開放感、圧迫感の軽減 客席稼働率向上、快適性

失敗しない内装デザインの基本設計プロセス

飲食店の内装デザインを成功させるには、感覚的な美意識だけでなく、論理的な設計プロセスが不可欠です。多くの失敗事例は、コンセプトの曖昧さや動線設計の不備から生じています。ここでは、投資を無駄にしないための基本設計プロセスを具体的に解説します。

コンセプト設計とターゲット顧客の明確化

内装デザインの出発点は、明確なコンセプト設定です。コンセプトとは、「誰に」「何を」「どのように」提供するかを言語化したもので、すべての設計判断の基準となります。曖昧なコンセプトは、デザインの一貫性を欠き、ターゲット顧客に響かない中途半端な空間を生み出します。

コンセプト設計では、まずターゲット顧客の具体的なペルソナを設定します。年齢層、職業、ライフスタイル、価値観、消費行動などを詳細に定義することで、どのような空間体験を求めているかが見えてきます。例えば、平日ランチのビジネスパーソンをターゲットとするなら、効率的な動線と適度な集中環境が求められます。一方、週末に家族連れをターゲットとするなら、子どもが安心して過ごせる配慮と、大人がリラックスできる空間の両立が必要です。

コンセプト設計の要素
  • ターゲット顧客のペルソナ設定(年齢、性別、職業、ライフスタイル、消費行動)
  • 提供価値の明確化(味、雰囲気、利便性、体験価値など)
  • 競合との差別化ポイント(独自性、強みの可視化)
  • 価格帯とサービススタイルの整合性
  • ブランドアイデンティティの言語化・視覚化
飲食店舗内装デザイン

動線設計と収益性を高めるレイアウト戦略

内装デザインの成否を分けるもう一つの要素が動線設計です。顧客動線とスタッフ動線を最適化することで、サービスの質と業務効率が飛躍的に向上します。動線設計の失敗は、顧客のストレスとスタッフの疲労を生み、最終的に収益性を損ないます。

顧客動線においては、入店から着席、注文、食事、会計、退店までの流れをスムーズにすることが基本です。入口付近に待合スペースを設け、混雑時のストレスを軽減する工夫や、トイレへの動線を食事エリアから適度に分離することで、他の顧客への配慮を示すことができます。また、視線の抜けや空間の奥行き感を演出することで、実際の面積以上の広がりを感じさせることも可能です。

スタッフ動線では、キッチンからホール、ホールからレジまでの移動効率を最優先に考えます。配膳と下膳の動線が交差しないレイアウト、調理スタッフとホールスタッフの連携がスムーズになるカウンター配置などが重要です。動線の最適化は人件費削減と顧客満足度向上を同時に実現するため、投資対効果が高い設計要素と言えます。

効果的なレイアウト戦略のチェックポイント
  • 入口から客席までの視認性と誘導動線の明確さ
  • 客席配置と回転率・客単価のバランス設計
  • キッチンとホールの作業動線の効率性
  • トイレ・手洗いへのアクセスの配慮
  • 混雑時と閑散時の両方に対応できる柔軟性
  • 将来的なレイアウト変更の可能性を考慮した設計
飲食店 外観

事例紹介:The Grand Blue Express(アクアリウムレストラン NAUTILUS)

ここまで解説してきた飲食店設計における動線計画や席配置の考え方が、実際の店舗空間でどのように機能しているのかを、弊社が手がけた事例を通してご紹介します。

東京都上野にあるThe Grand Blue Expressは、雑居ビル5階という制約の多い条件の中で和風居酒屋からフレンチレストランへと業態転換を行った飲食店リノベーション事例です。限られた面積の中で最低限の席数を確保すると、メイン通路の幅は80cm程度となり、一般的な飲食店設計ではマイナスに捉えられがちな条件が浮き彫りとなりました。

本計画では、この「狭さ」を欠点として隠すのではなく、「海底を走る豪華列車の旅」という明確なコンセプトを設定し、通路そのものを体験価値へと転換しています。窓の外に広がるアクアリウムを眺めながら進む動線は、移動時間すら演出の一部として機能し、空間への納得感を生み出しています。

限られた床面積でも高付加価値な飲食体験を成立させるためには、単に広さを確保するのではなく、動線・視線・物語性を一体で設計することが重要です。本事例は、制約条件を設計の起点とすることで、飲食店のブランド価値そのものを高めた好例と言えるでしょう。

東京 店舗内装デザイン  飲食店設計

コストを抑えながら高品質を実現する方法

飲食店の内装において、高品質なデザインと予算管理の両立は綱引きとなりがちです。無制限に資金を投入できる経営者は稀であり、限られた予算内で最大の効果を生み出す戦略的思考が求められます。ここでは、賢明な投資判断によってコストを抑えながらも、顧客に高い価値を提供する方法を紹介します。

店舗内装デザイン

投資対効果を最大化する予算配分の原則

内装デザインの予算配分において重要なのは、「顧客の目に触れる部分」と「機能的な部分」のバランスです。すべての要素に均等に予算を配分するのではなく、顧客体験に直結する部分に重点投資し、バックヤードや見えない部分ではコストを抑えるメリハリが必要です。

具体的には、入口やファサード、客席エリアの主要な壁面や床材、照明器具、家具など、顧客の視界に入る「見せ場」となる部分には質の高い素材とデザインを採用します。一方、厨房内の壁仕上げやバックヤードの床材、天井裏の設備配管などは、機能性と耐久性を確保した上で、コストパフォーマンスの高い選択をします。

予算配分の優先順位
投資優先度 対象エリア・要素 予算配分の考え方
最優先 ファサード、エントランス、主要客席エリア ブランド体験の核となる部分に重点投資
高優先 照明計画、家具、サイン計画 顧客の印象を左右する視覚的要素に配分
中優先 トイレ、洗面、半個室などの付帯設備 清潔感と機能性を確保しつつコスト最適化
標準 厨房、バックヤード、天井裏設備 機能性・耐久性重視、見た目は二の次

また、工事の段階によってもコスト削減のポイントが異なります。設計段階での変更は比較的低コストですが、施工段階や完成後の変更は費用が跳ね上がります。そのため、設計初期の段階で十分な検討を重ね、施工中の変更を最小限に抑えることがコスト削減策となります。経験豊富な設計者と密にコミュニケーションを取り、事前に完成イメージを共有することが必要です。

素材選定とコストコントロールの実践手法

素材選定は、内装デザインの質を決定づける重要な要素であり、同時に予算を大きく左右します。高価な素材を全面に使用する必要はなく、戦略的な素材の組み合わせによって、コストを抑えながら高級感を演出することが可能です。

まず「本物」と「代替品」を使い分ける技術が重要です。例えば、無垢材は温かみと高級感を演出しますが、コストが高くメンテナンスも必要です。そこで顧客の目線が集まるカウンター天板やテーブルには無垢材を使用し、壁面や天井には木目調の化粧板を用いることで、視覚的には統一感を保ちながらコストを大幅に削減できます。

コスト効率の高い素材選定の実践例
  • カウンター天板やテーブルなど触れる部分は本物の無垢材や石材を使用
  • 壁面や天井など視覚的効果が主な部分は高品質な化粧材で代用
  • 床材は耐久性とメンテナンス性を重視し、デザイン性の高いタイルや複合フローリングを選択
  • 照明器具はデザイン性の高い製品を厳選して配置し、間接照明で空間の質を高める
  • 塗装は色彩計画の要として重視し、職人の技術で質感を出す

さらに、既製品とオーダーメイドのバランスも重要です。家具や照明器具は、既製品の中から空間コンセプトに合うものを選ぶことで、オーダーメイドに比べてコストを削減できます。ただし、空間の核となる要素、例えばメインカウンターや看板などは、オーダーメイドで唯一無二の存在感を出すことで、ブランド価値を高めることができます。

業態別に見る成功する内装デザインの特徴

飲食店の内装デザインは、業態によって求められる要素が大きく異なります。高級フレンチレストランとファストフードでは、ターゲット顧客も提供価値も異なるため、デザインアプローチも当然変わるべきです。ここでは、業態別の成功するデザインの特徴を具体的に解説します。

高級店と大衆店で異なる設計アプローチ

高級店と大衆店では、価格帯だけでなく、顧客が求める体験そのものが異なります。高級店では、非日常的な特別感と上質な時間の提供が価値の中心であり、内装デザインもそれを体現する必要があります。一方、大衆店では、親しみやすさ、気軽さ、コストパフォーマンスが重視され、デザインもそれに呼応したものである必要があります。

高級店の内装デザインでは、空間の余白が重要な役割を果たします。座席間隔を広く取り、プライバシーを確保することで、顧客は他者の視線を気にせず、ゆったりとした時間を過ごせます。照明も重要で、間接照明を主体とした柔らかな光の演出が、落ち着いた雰囲気と高級感を生み出します。

対照的に、大衆店では親近感と活気が求められます。明るく開放的な空間、清潔感のある内装、そして適度な賑わい感が、「入りやすさ」と「居心地の良さ」を両立させます。素材は耐久性とメンテナンス性を重視し、日々の清掃が容易なものを選びます。座席は効率的に配置しながらも、窮屈さを感じさせない工夫が必要です。照明は明るく、料理が美味しそうに見える色温度を選ぶことで、食欲を刺激し、活気ある雰囲気を演出します。

高級店と大衆店のデザインアプローチの違い
要素 高級店のアプローチ 大衆店のアプローチ
素材選定 本物志向、経年変化を楽しむ素材 耐久性・メンテナンス性重視
座席配置 広い間隔、プライバシー重視 効率的配置、適度な賑わい感
照明計画 間接照明中心、陰影の美学 明るく清潔感、活気ある雰囲気
色彩計画 落ち着いた色調、統一感 親しみやすい色彩、視認性

重要なのは、どちらのアプローチが優れているかではなく、ターゲット顧客と価格帯に整合したデザインを選択することです。高級店が大衆店的なデザインを採用すれば価格に見合わない印象を与え、大衆店が高級店的なデザインを目指せば敷居が高く感じられます。業態とデザインの一致こそが顧客の信頼を生み、リピートにつながるのです。

飲食店内装デザイン

カフェ・居酒屋・レストランの空間づくりのポイント

業態別にさらに具体的に見ていくと、カフェ、居酒屋、レストランではそれぞれ異なる空間づくりのポイントがあります。各業態の特性を理解し、それに応じたデザイン戦略を立てることが成功への近道です。

カフェでは、「居心地の良さ」と「インスタ映え」の両立が現代的な成功要因となっています。長時間滞在する顧客が多いため、座り心地の良い椅子と適度なテーブルサイズが重要です。また、自然光を取り入れた明るい空間、植物を配置したグリーンインテリア、フォトジェニックな壁面デザインなどが、SNSでの拡散を促し、集客力を高めます。電源やWi-Fiの充実も現代のカフェには不可欠な要素で、作業や勉強をする顧客層を取り込むための配慮となります。

居酒屋では、「賑やかさ」と「くつろぎ」のバランスが鍵となります。カウンター席は常連客のコミュニケーションの場として機能し、スタッフとの会話も楽しめる配置が理想的です。テーブル席やボックス席は、グループ客がプライベートな時間を楽しめるよう、適度な区切りを設けます。またオープンキッチンで調理の様子を見せることで、臨場感とエンターテインメント性を高めることができます。

レストランは、カジュアルと高級の間でさらに細分化されますが、共通して重要なのは「食事に集中できる環境」です。照明は料理が美味しそうに見える色温度と明るさを選び、テーブル上の照度を適切に設定します。音環境も重要で、BGMの音量や音質、周囲の騒音レベルが食事の満足度に直結します。

業態別の重点設計ポイント
  • カフェ:自然光と植物、座り心地、電源・Wi-Fi、インスタ映えする空間演出
  • 居酒屋:カウンターの配置、適度な区切りのある客席、温かみのある照明、オープンキッチン
  • カジュアルレストラン:ファミリー対応、清潔感、明るさ、効率的な動線
  • 高級レストラン:プライバシー、上質な素材、間接照明、静かな音環境
  • ファストフード:回転率重視、清掃性、明るく活気ある雰囲気、セルフサービス動線

まとめ

この記事では、飲食店の内装デザインがビジネス成果に直結する理由と、選ばれる店舗になるための戦略を解説しました。内装デザインは第一印象から顧客の滞在時間、客単価に至るまで、経営のあらゆる指標に影響を与える重要な投資です。明確なコンセプト設定、効率的な動線設計、そして業態に応じた空間づくりを実践することで、限られた資源から最大の価値を引き出せるでしょう。

飲食店経営における内装デザインへの投資は、ブランド価値を高めて持続的な収益を生み出す重要な経営戦略です。この記事があなたの店舗を次のステージへと導く一助となることを願っています。

「商業建築の設計は、ただ美しい箱を作りだすためのプロセスであってはならない。」というのが、私達KTXの考え方です。

より大きなベネフィットを生む建築を創り出し、投資に見合う利益を還元するビジネスツールを我々は設計しています。建築設計からインテリアの空間デザイン、グラフィックに至るまで、あらゆるデザインを一貫してコントロールすることであなたのビジネスに強力な付加価値を生み出します。もし、建築設計についてお悩みなのであれば、是非一度我々にご相談ください。

KTXアーキラボでは、コストとデザインを両立した飲食店の内装デザインをご提案しております。お気軽にお問い合わせください。

弊社の設計事例についてはコチラの作品集をご覧ください

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松本 哲哉

【この記事を書いた人 松本哲哉】

KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024-25年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界9位(日本国内1位)

ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


【お問い合わせ先】

KTXアーキラボ一級建築士事務所

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飲食店・クリニック・物販店・美容院などの店舗デザイン・設計

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