飲食店設計のポイントとは?失敗しない店舗づくりの流れと動線や席配置・照明の考え方

 
     
  • 公開日:2026/01/04
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  • 最終更新日:2026/01/04

飲食店の成功は、料理の質やサービスだけでは決まりません。店舗設計の良し悪しが、顧客満足度、スタッフの働きやすさ、そして収益性に直結します。動線が混乱すれば提供スピードが落ち、照明が不適切なら料理の魅力は半減し、客席配置が甘ければ売上機会を逃すことになります。

この記事では、飲食店設計における動線計画、席配置、照明設計の具体的なポイントと、失敗しない店舗づくりの流れを解説します。

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飲食店設計で押さえるべき基本原則

飲食店の設計は、単なる空間デザインではなく、ビジネスモデルそのものを形にする作業です。開業前の設計段階で確立すべき原則を理解することが、長期的な繁盛店への第一歩となります。

コンセプトと顧客体験を軸にした設計思想

飲食店設計の出発点は、明確なコンセプトと提供したい顧客体験の定義です。高級フレンチと大衆居酒屋では、求められる空間設計がまったく異なります。コンセプトが曖昧なまま設計を進めると、ターゲット顧客にとって居心地の悪い空間が生まれ、リピート率の低下を招きます。

具体的には、客単価、滞在時間、客層、提供する料理のスタイルを明確にした上で、それに適した空間要素を選定します。例えば、回転率を重視するカジュアル業態なら動きやすい椅子と明るい照明、ゆったりした食事体験を売りにするなら落ち着いた色調と柔らかな間接照明が適しています。コンセプトブックを作成し、設計チーム全体で共有することで、一貫性のある空間づくりが可能になります。

また、顧客体験の設計では、入店から退店までの一連の流れを時系列で想定します。エントランスでの第一印象、着席時の安心感、料理を待つ間の快適さ、食事中の満足感、会計時のスムーズさ、退店時の余韻まで、各場面で顧客が何を感じるかを設計段階で描き切ることが重要です。

収益性を左右する空間効率と客席回転率の関係

飲食店の経営において、坪効率と客席回転率は利益を決定する重要指標です。限られた面積の中で、適切な客席数を確保しながら快適性を維持するバランス感覚が設計者には求められます。

1坪あたりの席数は業態やコンセプトによって変動します。席数を増やせば売上機会は増えますが、窮屈な空間は顧客満足度を下げ、結果的に客単価や再来店率の低下につながります。逆に、過度にゆとりを持たせると固定費に対する売上効率が悪化します。

空間効率を高める設計テクニック
  • 可動式パーティションによる席構成の柔軟化
  • 時間帯によってレイアウト変更可能な什器選定
  • デッドスペースを収納や演出スペースに活用
  • 客席以外のエリア(厨房、バックヤード)の最適化
  • 縦空間の有効活用による圧迫感の軽減

客席回転率の設計には、テーブルサイズ、椅子の快適性、照明の明るさ、BGMの選択など、細かい要素が影響します。ファストカジュアル業態では、適度に硬めの椅子と明るめの照明で回転率を高め、高単価業態では快適な椅子と落ち着いた照明で滞在時間を確保するといった設計意図が反映されます。自店舗の収益モデルに応じて、これらの要素を戦略的に設計することが不可欠です。

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動線計画が店舗の成否を分ける理由

飲食店における動線設計は、見えない部分でサービスの質を決定づける重要要素です。適切な動線計画は、スタッフの労働負荷を軽減し、顧客へのサービススピードを向上させ、結果的に収益性を高めます。

顧客動線とスタッフ動線を分離する重要性

飲食店設計で重要な原則は顧客動線とスタッフ動線の明確な分離です。両者が頻繁に交差する設計は、接触事故のリスクを高め、サービス効率を著しく低下させます。

顧客動線は、入口からレジ、待合、客席、トイレ、出口へと続く流れであり、この経路は直感的で分かりやすく、かつ他の顧客と不必要に接触しない設計が理想です。特に入口付近の混雑は、入店を躊躇させる要因となるため、待合スペースの位置や会計カウンターの配置には慎重な検討が必要です。席への誘導がスムーズに行える動線設計により、顧客は落ち着いて店内に入ることができます。

一方、スタッフ動線は、厨房からホール、バックヤード、洗い場を結ぶ業務の流れです。料理提供、食器回収、バッシング、清掃といった作業が効率よく行える経路設計が求められます。特に注目すべきは、厨房とホールを結ぶ出入口の位置と幅です。ピーク時に複数のスタッフが同時に通行できる幅を確保し、顧客席を横切らない経路を設定することで、オペレーションの円滑化が実現します。

動線分離のチェックポイント
  1. 入店客と退店客の動線が交差しない配置になっているか
  2. 厨房からホールへの配膳動線が客席を横切らないか
  3. トイレへの動線が他の顧客の視線や動線を妨げないか
  4. ピーク時にスタッフ同士がぶつからない通路幅があるか
  5. 緊急時の避難動線が確保されているか

厨房とホールの位置関係で変わるオペレーション効率

厨房とホールの位置関係は、料理提供スピード、スタッフの労働負荷、そして顧客満足度に直結します。理想的な配置は、厨房からすべての客席への距離が均等で、最短経路でアクセスできる設計です。

オープンキッチンを採用する場合は、調理の臨場感を演出できる一方で、音や熱、匂いが客席に影響する可能性があります。この場合、適切な排気設備と防音対策、そして視覚的な演出効果を高める照明設計が必要です。顧客は調理過程を見ることで料理への期待感が高まりますが、雑然とした作業風景や過度な騒音は逆効果となるため、見せる範囲と隠す範囲の設計が重要です。

クローズドキッチンの場合は、厨房とホールを結ぶ出入口の数と位置が鍵となります。料理提供専用の出口と、食器回収専用の入口を分けることで、スタッフの混雑を防ぎ、作業効率が向上します。また、厨房内のレイアウトとホール側の配置を連動させ、調理完了から提供までの動線を最短化することで、料理の温度管理と提供スピードが改善します。

さらに、バックヤードや食材保管庫の位置も重要です。厨房から遠い場所に配置すると、食材の補充や在庫管理に無駄な時間がかかります。理想的には、厨房に隣接しながらも顧客の視線に入らない位置に設計し、搬入口からの動線も考慮した配置が求められます。これらの要素を総合的に設計することで、オペレーション全体の生産性が大きく向上します。

飲食店 外観

事例紹介:居酒屋つのふり(奈良県奈良市)

これまで解説してきた飲食店設計における動線計画の重要性が、実際の店舗づくりでどのように活かされているのかを、弊社が手がけた事例を通してご紹介します。

飲食店 外観

奈良県奈良市にある居酒屋つのふりは、かつて映画館として使われていた地下空間を、和風居酒屋へと再生した店舗です。映画館特有のスクリーンに向かって傾斜した床や、大空間ならではのスケール感といった制約条件を、単なるデメリットとして処理するのではなく、店舗の個性として積極的に活かす設計が求められました。

本計画では、既存の床の傾斜をあえて残し、フラットに作り直すための過剰な工事を避けながら、段差を活かした客席構成を採用しています。これにより、視線の抜けや空間の奥行きを生み出すと同時に、個室席と宴会席を明確にゾーニングし、用途に応じた動線分離を実現しました。

厨房とホールの位置関係についても、配膳・回収動線が交錯しないレイアウトを徹底し、ピークタイムでもスタッフの動きが滞らないオペレーション設計としています。結果として、地下という閉鎖的になりがちな条件下でも、回遊性とリズム感のある店舗体験を生み出すことができました。

このように物件が持つ制約や癖を丁寧に読み解き、動線計画と空間構成に落とし込むことで、他店にはない強い個性と高い収益性を両立する飲食店設計が可能になります。

飲食店 内装デザイン

客席配置と照明が生み出す空間価値

飲食店の収益性と顧客満足度を左右する要素として、客席配置と照明設計の重要性はしばしば過小評価されます。しかし、これらは顧客の滞在時間、注文内容、再来店意欲に直接影響を与える戦略的な設計要素です。

座席レイアウトで実現する顧客単価の最適化

客席配置は、単に座席数を確保するだけでなく、顧客のニーズに応じた多様な席種を用意することで客単価と満足度を同時に高める戦略です。グループの大きさ、利用目的、滞在時間によって、求められる席の種類は異なります。

基本的な席種として、2人席、4人席、6人以上の大型テーブル、カウンター席、個室またはセミ個室が考えられます。それぞれの席が店舗全体の何%を占めるかは、ターゲット顧客と立地特性によって決定します。例えば、ビジネス街のランチ需要が高い立地なら1〜2人席とカウンター席を多めに、住宅街のファミリー層向けなら4人席を中心に、接待需要があるなら個室を配置します。

席種別の配置戦略
席種 適した顧客 単価特性 配置のポイント
カウンター席 一人客、カジュアル利用 回転率高・単価普通 厨房に面した配置で臨場感を演出
2人席 カップル、友人同士 滞在時間中・単価中 窓際や壁際で落ち着いた配置
4人席 家族、小グループ 滞在時間長・単価高 店内中央または奥で居心地重視
個室・半個室 接待、記念日利用 滞在時間長・単価最高 プライバシー確保と特別感の演出

さらに、席間の距離と配置角度も重要です。隣席との距離が近すぎると会話が筒抜けになり、不快感を与えます。一方で、適度な距離感は活気ある雰囲気を生みます。高級業態では席間を広く取り、カジュアル業態では適度な密度で賑わい感を演出するといった使い分けが必要です。また、席の向きを工夫することで、他の客と視線が合わない配置も可能になり、プライバシー感が向上します。

飲食店 内装デザイン

照明設計が創る雰囲気と食事体験の演出

照明は、飲食店の雰囲気を決定づける設計要素の一つです。適切な照明設計は料理を美味しく見せ、顧客の滞在時間をコントロールし、ブランドイメージを視覚的に伝える役割を果たします。

基本的な照明設計では、全体照明(ベース照明)、テーブル照明(タスク照明)、演出照明(アクセント照明)の3層構造を意識します。全体照明は店内の基本的な明るさを確保し、テーブル照明は料理と顧客の顔を適切に照らし、演出照明は空間に奥行きと変化を与えます。これらのバランスが、居心地の良い空間を創出します。

色温度の選択も重要です。暖色系(2700K〜3000K)の照明は温かみがあり、高級感やリラックス感を演出するため、ディナー営業や高単価業態に適しています。一方、昼白色(4000K〜5000K)は清潔感と明るさを与え、カジュアル業態やランチタイムに向いています。業態とコンセプトに応じて、適切な色温度を選定することが求められます。

業態別の照明設計指針
  • 高級レストラン:100〜200ルクス、暖色系、間接照明中心で落ち着いた雰囲気
  • カジュアルダイニング:200〜400ルクス、中間色、直接照明で明るく活気ある空間
  • カフェ:300〜500ルクス、昼白色、自然光を活かした開放的な雰囲気
  • バー・居酒屋:50〜150ルクス、暖色系、スポット照明で大人の雰囲気

テーブル照明は、料理を美味しく見せる重要な要素です。真上からの照明は料理に影を作らず、色を正確に再現します。演色性(Ra値)が高い照明を選ぶことで、料理本来の色彩が引き立ち、顧客の食欲を刺激します。特に、肉料理や野菜料理など、色が重要な料理を提供する店舗では、Ra90以上の照明が推奨されます。

飲食店 内装デザイン

まとめ

この記事では、飲食店設計における動線計画や客席の配置、照明設計の重要性について解説しました。設計は単なる空間デザインではなく、収益性、顧客満足度、運営効率を左右する戦略的な意思決定の連続です。コンセプトを明確にし、顧客体験を設計し、動線を最適化し、空間価値を最大化することで、長期的に繁盛する飲食店が実現します。

これから飲食店を開業される方、既存店舗のリニューアルを検討されている方は、本記事のポイントを参考に、専門家とともに戦略的な設計を進めてください。あなたのビジョンが形になり、多くの顧客に愛される店舗となることを心から応援しています。

「商業建築の設計は、ただ美しい箱を作りだすためのプロセスであってはならない。」というのが、私達KTXの考え方です。

より大きなベネフィットを生む建築を創り出し、投資に見合う利益を還元するビジネスツールを我々は設計しています。建築設計からインテリアの空間デザイン、グラフィックに至るまで、あらゆるデザインを一貫してコントロールすることであなたのビジネスに強力な付加価値を生み出します。もし、建築設計についてお悩みなのであれば、是非一度我々にご相談ください。

KTXアーキラボでは、失敗しない店舗づくりを実現する飲食店の設計をご提案しております。お気軽にお問い合わせください。

弊社の設計事例についてはコチラの作品集をご覧ください

2026.1.4.


松本 哲哉

【この記事を書いた人 松本哲哉】

KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)

ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


【お問い合わせ先】

KTXアーキラボ一級建築士事務所

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兵庫県姫路市船丘町298-2 日新ビル2F

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飲食店・クリニック・物販店・美容院などの店舗デザイン・設計

建築・内装工事施工

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