プール付きジム建設費の相場|1F設置vs上階設置の費用差と構造選定を徹底解説

 
     
  • 公開日:2026/04/06
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  • 最終更新日:2026/04/06

プール付きジムの建設を検討するとき、最初に直面するのが「いったい、いくらかかるのか」という問題だ。通常のジムとは異なり、プールには構造補強・防水・機械設備など特有のコストが発生する。さらにプールを1Fに設置するか、上階に設置するかで費用差は3,000万〜5,000万円にもなる。本記事では、建築設計事務所の視点から、プール付きジムに必要な面積・構造選定・設置階別の費用差を解説する。

プール付きジムに必要な面積はどの程度か

プール付きジムの計画において、まず確認すべきは必要面積だ。プールといっても競泳用の25mプールを指しているわけではない。フィットネス用途では、コンパクトな流水プール(Endless Pool等)が採用されるケースが多い。

Endless Pool(流水プール)の寸法と設置面積

フィットネスジムで多く採用されるEndless Pool(EP508モデル等)の本体寸法は、おおむね全長5.5m × 幅3.0m程度だ。水量は約12,700リットル(約12.7トン)。これに周囲の安全通路・メンテナンススペースを加えると、プール室だけで最低30〜40㎡(約9〜12坪)が必要になる。

さらに、更衣室・シャワー室・機械室(循環ポンプ・ろ過装置・ヒートポンプ・除湿機)を含めると、プール関連エリアだけで50〜70㎡(約15〜21坪)を見込む必要がある。一般的なトレーニングスペースを併設する場合は、これに加えてジムエリア100〜150㎡(30〜45坪)程度が必要となる。

プール付きジムの最低必要面積の目安
エリア 必要面積 備考
プール室 30〜40㎡ Endless Pool+安全通路
更衣室・シャワー 10〜15㎡ 男女分離の場合は倍
機械室 10〜15㎡ 循環ポンプ・ろ過・除湿
ジムエリア 100〜150㎡ マシン・フリーウエイト
合計 150〜220㎡ 約45〜66坪

プール設置にかかる費用の内訳

プール付きジムの建設費用を理解するには、まず「プール設置そのものにかかる費用」と「プールがあることで建物全体に影響する費用」を分けて考える必要がある。

プール本体と関連設備の費用

流水プール(Endless Pool等)の場合、本体価格は機種・仕様により異なるが、設置工事費込みで1,000〜1,800万円が目安となる。これに加え、以下の設備費用が発生する。

項目 費用目安 備考
プール本体+設置工事 1,000〜1,800万円 Endless Pool等の流水プール
循環ろ過・水処理設備 300〜500万円 保健所基準適合
空調・除湿設備 300〜500万円 プール室専用
給排水・追加配管 200〜400万円 大量給水・排水対応
プール関連合計 1,800〜3,200万円 1F設置の場合

上記はプールを1Fに設置した場合の費用だ。これが上階設置になると、後述する追加工事により大幅に増加する。

1F設置と上階設置で費用差が生じる理由

プール付きジムの建設費用を左右する最大の要因が、プールをどの階に設置するかだ。1Fに設置するか、2F以上に設置するかで、構造設計と防水仕様が根本的に変わる。

1F設置の場合

プールを1Fに設置する場合、水槽は地盤(土間コンクリート)の上に直接据え付けられる。約12.7トンの水荷重は地盤が直接受けるため、上部構造への影響は限定的だ。防水もFRP(繊維強化プラスチック)防水など一般的な工法で対応できる。

上階設置の場合

プールを2F以上に設置する場合、状況は一変する。約12.7トンの水+プール本体の重量が床スラブにかかるため、局所的な荷重は約780kg/㎡にもなる。これは一般的なオフィスビルの積載荷重(300kg/㎡)の2.5倍以上だ。

上階プール設置で追加となる主な工事
  • 構造補強: 梁・柱の断面増大、プール直下の構造設計変更
  • SUS(ステンレス)完全溶接防水パン: 地震時のFRP割れリスクを回避するため、ステンレス製の完全溶接防水パンが必須。下階への漏水事故を防ぐ
  • 防振浮き床: 水流振動が下階テナントに伝わることを防止
  • 漏水検知システム: 万一の漏水を早期発見する二重安全対策

設置階別の費用比較

以下の表は、同じ流水プール(Endless Pool EP508クラス)を1Fに設置した場合と上階に設置した場合の費用差を示している。

項目 1F設置 上階設置 差額
プール本体+設置工事 1,200万円 1,200万円
循環ろ過・除湿・水処理 800万円 800万円
防水工事 300万円 800万円 +500万円
SUS完全溶接防水パン 800〜1,200万円 +800〜1,200万円
構造補強 500〜800万円 +500〜800万円
防振浮き床 300〜500万円 +300〜500万円
追加配管(揚水・排水) 200万円 400万円 +200万円
設計費増(構造計算増) 200〜400万円 +200〜400万円
プール関連合計 約2,500万円 約5,500万円 +約3,000万円
結論:上階設置は1F設置に比べて約3,000〜3,500万円高くなる

この差額は主に、SUS完全溶接防水パン・構造補強・防振浮き床といった「上階ならではの追加工事」に起因する。プールの性能や快適性に差はないため、コスト面だけを見れば1F設置が圧倒的に有利だ。

構造選定(RC造 vs S造)がプール付きジムの費用に与える影響

プールの設置階は、建物全体の構造選定にも影響する。RC造(鉄筋コンクリート造)S造(鉄骨造)のどちらを選ぶかで、建設費は大きく変わる。

RC造とS造の坪単価比較

構造 坪単価目安(2026年時点) 特徴
RC造(鉄筋コンクリート造) 165〜200万円/坪 剛性が高く、上階プール設置に適する。工期はやや長い(12〜15ヶ月)
S造(鉄骨造) 150〜185万円/坪 RC造より15〜20万円/坪安い。工期も短い(10〜12ヶ月)

延床面積150坪(約500㎡)のビルの場合、構造の違いだけで2,000〜3,000万円の差が生じる。

上階プール設置では原則としてRC造が必須

ここで重要なのが、プールを上階に設置する場合はRC造を選ばざるを得ないという点だ。S造は以下の理由で上階プール設置に適さない。

S造で上階プールが非推奨とされる理由
  1. 床スラブの剛性不足: S造の床はデッキプレート+薄コンクリートが一般的で、12トン超の集中荷重に対して剛性が不足する
  2. 振動伝達: S造は振動が伝わりやすく、プール階の水流振動が下階のテナントに影響する
  3. 鋼材の腐食リスク: プール周辺は高湿度環境であり、万一の漏水時に鋼材が腐食するリスクがRC造より高い

つまり、プールを1Fに設置すればS造の採用が可能になり、躯体費用そのものも下がる。プール設置階の選択は、プール関連費用だけでなく建物全体の構造コストにも波及する。

プール設置階と構造の組み合わせによる総額比較

ここまでの内容を総合し、同規模(延床約500㎡)のプール付きジムビルを想定した場合の、プール設置階×構造別の概算建設費を示す。

スタンダードグレードの場合

構成 構造 概算建設費 基本構成との差額
プール上階設置(基本構成) RC造 約5.0億円
プール1F設置 RC造 約4.6億円 ▲約4,000万円
プール1F設置 S造 約4.3億円 ▲約7,000万円

ハイグレード・デザイナーズ仕様の場合

構成 構造 概算建設費 基本構成との差額
プール上階設置(基本構成) RC造 約6.3億円
プール1F設置 RC造 約5.9億円 ▲約4,800万円
プール1F設置 S造 約5.5億円 ▲約7,900万円
最大で約7,000〜8,000万円のコスト差が発生する

プールを上階に設置してRC造とする構成に対し、プールを1Fに移してS造を採用すれば、スタンダードグレードで約7,000万円、ハイグレードで約7,900万円の削減が見込める。この差額は、プール関連追加費用(約3,000万円)と構造差(約2,000〜3,000万円)の複合効果による。

それでも上階にプールを設置するケースとは

コスト面では1F設置が圧倒的に有利だが、それでも上階設置を選択するケースがある。

1F部分を別用途に使いたい場合——たとえば1Fにカフェや物販店舗など集客力のあるテナントを配置し、プール付きジムを上階に置くことで、ビル全体の収益性を高めるという計画がある。テナントビルやフィットネスビルでは、1Fの集客効果は上階の2〜3倍とも言われる。この「1Fの商業的価値」がプール設置の追加コストを上回ると判断される場合、上階設置は合理的な選択となる。

敷地制約がある場合——敷地面積が限られ、1Fにプールスペースを確保すると他の必要機能が収まらない場合も、上階設置が唯一の選択肢となる。

プール付きジムの建設で押さえるべきポイント

保健所への事前相談は必須

プールを設置する場合、管轄の保健所への事前相談が不可欠だ。水質管理基準、循環ろ過設備の仕様、換気・排水の基準など、設計段階で確認しておかなければ後から大幅な設計変更が発生する。

除湿・結露対策を軽視しない

プール室は常に高温・高湿度環境となる。除湿設備の容量不足は建物自体の劣化を招く。特に上階設置の場合、結露水が構造体に悪影響を及ぼすリスクがあり、設計段階での慎重な検討が必要だ。

メンテナンスコストも計画に含める

建設費だけでなく、運用後のメンテナンスコストも計画段階で把握しておくべきだ。水処理薬品、フィルター交換、ヒートポンプの電気代など、プールの維持には年間200〜400万円程度の追加コストが発生する。


まとめ:プール設置階の選択が建設費を左右する

プール付きジムの建設費は、通常のジムに比べて大幅に増加する。その最大の変動要因は「プールをどの階に設置するか」だ。

1Fに設置すれば、構造補強・SUS防水パンが不要となり、さらにS造の採用が可能になることで、上階設置・RC造の構成に比べて約7,000〜8,000万円のコスト削減が見込める。

一方、1Fを商業テナント等に活用して収益性を高めたい場合は、追加コストを投じてでも上階設置を選択する合理性がある。

いずれにせよ、プール付きジムの計画初期段階で設計事務所に相談し、設置階と構造の組み合わせによるコストシミュレーションを行うことが、予算超過を防ぐ最も確実な方法だ。

【免責事項】本記事に記載の費用は、2026年時点の公的統計・業界データに基づく概算であり、実際の建設費は敷地条件・地盤状況・仕様・施工時期・地域等により変動します。正確な費用算定には個別の設計・見積もりが必要です。本記事の情報に基づく判断について、当事務所は一切の責任を負いません。参考値としてご活用ください。

2026.4.6

【この記事を書いた人 松本哲哉】
KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師
2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)
ウィキペディア 松本哲哉(建築家)

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