建築設計監理費に内装デザイン費は含まれるのか?|告示第8号+JCD下限値による合理的算定【無料自動計算ツール付き】

 
     
  • 公開日:2026/03/29
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  • 最終更新日:2026/03/29

 

「建築設計監理を頼んだら内装デザインも含まれるのか?」——答えはノーだが、その理由を正確に理解している設計者は意外と少ない。本稿では建築設計監理費と内装設計監理費が別建てになる根拠を整理し、KTXアーキラボが両者を組み合わせて提示する場合の算定方針を解説する。

建築設計監理費と内装設計監理費はなぜ別々なのか

建築設計と内装デザインは、法律上も業務内容上も、まったく異なる専門領域だ。この2つが別建てになる理由を4つの観点から整理する。

① 根拠となる法律と資格が異なる

建築設計監理は建築士法に基づく業務であり、一級・二級・木造建築士の資格を持つ者だけが行える。確認申請図書の作成、構造・設備設計との総合調整、工事中の施工監理——これらは建築士資格者の独占業務だ。国土交通省が告示第8号で報酬基準を定めているのも、建築士法25条を根拠としている。

一方、内装デザインは法令上の資格要件が建築設計とは異なる。一般社団法人 日本商環境デザイン協会(JCD)が業界団体として業務報酬基準を定めているが、これは法律に基づく告示ではなく、業界の自主基準だ。内装デザインの業務領域——空間コンセプトの立案、内装仕上げ・家具・照明・サイン計画、グラフィックデザインとの調整——は建築設計監理の法定業務には含まれていない。

② 業務内容と専門性が異なる

建築設計監理は「建物が法令に適合した安全な構造物として成立するか」を担保する業務だ。平面計画・断面計画・構造計算・設備設計・確認申請——これらは建築物の骨格をつくる作業であり、インテリアの仕上げ選定や空間の演出とは目的が異なる。

内装デザインは「その空間がビジネスの目的をどう達成するか」を設計する業務だ。来店者の動線体験、ブランドの世界観を伝える素材と照明の組み合わせ、什器レイアウトによる売上動線の設計——これらは建築設計が完成した後に初めて本格的に展開される専門領域だ。

建築設計監理 vs 内装設計監理 — 業務範囲の違い
項目 建築設計監理 内装設計監理
根拠法 建築士法 業界自主基準(JCD等)
報酬基準 告示第8号(国土交通省) JCD業務報酬基準(例)
主な業務内容 意匠・構造・設備設計、確認申請、工事監理 空間コンセプト、仕上・照明・家具・サイン計画
確認申請 ◎(必須) ×(不要)
構造計算 ◎(必須) ×(不要)
内装仕上け選定 △(概略のみ) ◎(詳細)
家具・照明計画 ×(対象外) ◎(詳細)

③ 「工事費の○○%」方式が生む誤解

業界に根強い「工事費の○○%が設計費」という慣習が、この誤解を助長している面がある。この方式では建築設計と内装デザインを区別せず、一括して工事費比率で設計費を算定するケースが多い。そのため施主側から「設計費を払っているのだから内装も含まれているはず」という認識が生まれやすい。

しかし実態として、設計事務所内の建築設計チームと内装デザインチームは別の専門家集団であり、それぞれ独立した業務を担っている。これを一括した工事費比率で合算することは、専門性の違いを曖昧にし、設計者にとっても施主にとっても不合理な状況を生む。

建築設計費と内装設計費を別建てにして明示的に契約することは、双方にとって業務範囲と報酬の透明性を高める。

④ テナントビルという現実が示す構造的な証拠

商業施設・オフィスビル・医療モールなどのテナントビルでは、ビルのオーナーが建築設計事務所に建築設計監理を依頼し、共用部以外の専有部はスケルトン状態で竣工する。内装デザインはそれぞれのテナントが独自にデザイン事務所へ依頼する——これが業界の標準的な構造だ。

ここで考えてほしい。建物のオーナーとテナントが同一人物になったからといって、内装デザインに必要な業務量が減るわけではない。空間コンセプトの立案、素材・照明・什器の選定と調整、施工者との打合せ——これらの業務量はオーナーが誰であろうと変わらない。にもかかわらず「建築設計費に内装デザインが含まれる」とすれば、設計会社は内装デザインを事実上無償で提供しなければならないことになる。

弊社は建築意匠も内装意匠も高度なものを提供しており、どちらにもかなりの業務量をこなす必要がある。そのぶん膨大な人件費を投入している。内装デザイン費が建築設計費に含まれるという前提では、高品質な内装デザインに人件費を投じれば投じるほど損失が拡大する。それならば建築設計か内装デザイン、どちらか一方のみを受ける方式でなければビジネスとして成り立たない——これでは設計事務所としてクライアントに最善のサービスを提供するうえで本末転倒だ。


「工事費の○○%」が設計費の算定として不合理な理由

建築設計費でも内装設計費でも、工事費比率方式には共通した根本的な矛目がある。

同じ業務量なのに報酬が変わる

たとえば同じ延床500㎡のクリニックを設計するとする。設備グレードや仕上げ水準によって工事費は大きく異なるが、設計者が行う業務——図面作成、法規チェック、施工者との調整、現場監理——はほぼ変わらない。工事費が6,000万円か1億2,000万円かで設計費が倍になるのは、設計の専門的価値を反映していない。

予算が少ない案件ほど設計の難易度は上がる

ローコスト案件では、限られた予算の中でクライアントの期待に応えるために、設計者はより多くの工夫と代替案の検討を迫られる。それにもかかわらず工事費比率では報酬が下がる——これは逆誤的だ。

VEで自分の報酬が下がる構造

予算超過が判明した際にコスト削減(VE)を行うと、工事費比率では設計費も連動して下がる。追加業務をこなすことで自らの報酬を減らすという奇妙な構造だ。

工事費比率方式の本質的問題:
設計の対価は「工事費がいくらか」ではなく「どれだけの知識・技術・時間を投じたか」に比例するべきだ。工事費という外的変数に設計費を連動させる構造は、設計者の専門的価値を正しく反映しない。

KTXアーキラボが採用する算定方針:告示第8号 + JCD第2類下限値

KTXアーキラボが建築設計監理と内装設計監理を一括して受託する場合、以下の方針で報酬を算定している。

建築設計監理費:国土交通省 告示第8号(略算方法)

建築士法25条に基づく唯一の公的報酬基準。床面積・用途・構造から標準業務量を算出し、人件費単価を掛けて算定する。工事費に依存しないため、先述の矛盾が生じない。令和6年改正で人件費単価が大幅に引き上げられており、旧基準での算定は実態と大きく乖離する。

告示第8号の詳細と自動計算ツールについてはこちらの記事を参照。

内装設計監理費:JCD業務報酬基準 第2類ゾーン 下限値を採用する理由

JCDの業務報酬基準には、建物の規模(床面積)に応じた面積単価表が定められており、「第2類ゾーン」には上限と下限の2本の曲線がある。

弊社がこのうち下限値を採用しているのは、以下の考え方に基づく弊社独自の判断だ。

建築設計業務の中にも、法的基準を満たすための仕上げ材の選定——不燃・準不燃材料の指定、メンテナンス性も耐久性を主眼に置いた仕上げ選定——は含まれると考えられる。これらは意匠面ではなく機能面を主眼に置いた業務であり、建築設計監理の範疇に入る。しかし、クライアントのブランドを体現する高度な意匨設計——素材の質感や照明の演出、什器レイアウトによる動線設計——はその範疇を大きく超える業務量を必要とし、そのぶん事務所は相応の人件費を投入することになる。

そこで弊社は、建築設計に含まれる機能面を鑑みた内装仕上げ業務分を差し引き、さらに建築設計とセットでご依頼いただいていることを考慮したうえで、JCD基準の下限値を採用している。内装デザインのみを単独で受託する場合とは業務の前提が異なるため、下限値の採用が妥当だという判断だ。

KTXアーキラボの算定構造(建築設計セット)
費目 算定基準 根拠
建築設計監理費 告示第8号 略算方法 建築士法第25条・国土交通省告示
内装設計監理費 JCD 第2類ゾーン 下限値 JCD業務報酬基準+弊社独自の考え方

※ 両者の合計が最終的な設計監理報酬の目安となります。

なぜこの組み合わせが合理的か

告示第8号は「床面積と用途から業務量を算定する」合理的な構造を持ち、工事費に依存しない。JCDの下限値も同様に「床面積に応じた逓減曲線」で設定されており、規模が大きくなるにつれて㎡単価が下がる現実的な構造になっている。

この組み合わせは、施主に対して「建築設計でいくら、内装設計でいくら、なぜその金額なのか」を法的根拠と業界基準に基づいて明示的に説明できる唯一の方法だ。「工事費の○○%」では、根拠を問われたときに答えに窮する。


【無料ツール】内装設計監理費 自動計算システム(建築設計セット用)

JCD業務報酬基準の第2類ゾーン下限値に基づく自動計算ツールを用意した。建築設計監理(告示第8号)と組み合わせる場合の内装設計監理費の目安を、床面積を入力するだけで算定できる。算定書PDFの出力も可能だ。

📐 内装設計監理費 自動計算システム(建築設計セット用)|KTX アーキラボ 一級建築士事務所 提供

【免責事項】
本ツールはJCD(一般社団法人 日本商環境デザイン協会)業務報酬基準の第2類ゾーン下限値に基づく参考値を算定するものです。建築設計監理費(告示第8号)は別途算定が必要です。実際の設計料は業務篅囲・難易度・契約条件等によって異なります。本ツールの算定結果に基づく契約・見積もり等について、KTX アーキラボ 一級建築士事務所は一切の責任を負いません。参考値としてご自身の判断のもとご活用ください。

まとめ

建築設計監理費と内装設計監理費が別建てになる理由は明確だ。根拠法・資格・業務内容がそれぞれ異なる専門領域であり、これを一括した工事費比率で合算することは、専門性の違いを曾昧にし合理性を欠く。

KTXアーキラボが建築設計監理と内装設計監理を一括受託する場合は、告示第8号(建築)とJCD第2類下限値(内装)の組み合わせで設計報酬を算定している。この方法は法的根拠と業界基準の双方に裏付けられており、施主に対して明示的な根拠を提示できる唯一の方法だと考えている。

「なぜこの設計費なのか」をクライアントに説明できる体制を整えることは、設計事務所のプロフェッショナリズムの基本だ。

関連記事:内装設計費の算定方法(JCD面積単価方式)→ こちら / 建築設計費の算定方法(告示第8号)→ こちら

2026.3.29


【この記事を書いた人 松本哲哉】

KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)

ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


【お問い合わせ先】

KTXアーキラボ一級建築士事務所

東京都港区南麻布3-4-5 エスセナーリオ南麻布002

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