- 公開日:2026/02/08
- 最終更新日:2026/02/08
はじめに:見積書は「請求書」ではない
建設プロジェクトにおいて、クライアント(施主様)が最も頭を抱えるのが、施工会社から提出される「工事見積書」です。
昨今の資材高騰を背景に、当初の予算を大きく上回る金額が出てくることは珍しくありません。
多くの施主様は「高いけれど、今の相場なら仕方ないのか……」と諦めてしまいがちです。
しかし、その見積書の中には、施工会社がリスク回避のために乗せた「過剰な安全マージン」や、「相場とかけ離れた単価」が紛れ込んでいることがあります。
私たちKTXアーキラボは、見積書をただ受け取るだけではありません。
生成AI(NotebookLM)を駆使して数千行に及ぶ明細を「査定」し、適正価格まで引き下げるための「根拠ある減額リスト」を作成しています。
今回は、オフィスビル新築計画で実際にAIを活用し、大幅なコストダウンに成功した事例をご紹介します。
1. 数千行の「数字の羅列」から、異常値を見つける
あるプロジェクトで、施工会社から提出された見積もりが、想定予算を大きく超過しました。
通常、減額調整(VE)といえば「仕様のグレードを下げる(=質を落とす)」ことが一般的です。
しかし私たちは、質を落とす前に「そもそも、この単価は適正なのか?」を疑います。
私たちは、提出された「工事見積書(PDF)」と、「標準的な建設資材の市場単価データ(Webデータ等)」をNotebookLMに読み込ませ、比較分析を行いました。
2. AIが指摘した「大判タイル」の単価異常
AIによるスクリーニングの結果、いくつかの項目で「市場価格との乖離」が見つかりました。
最も顕著だったのが、外壁に使用予定だった「大判タイル」の項目です。
【プロンプト(AIへの指示)】
「アップロードした見積書の単価と、一般的な市場価格(設計単価)を比較し、乖離が大きい項目をリストアップして。」
【AIの回答】
「警告:見積書の大判タイル(商品名)施工単価は『○○円/㎡』計上されていますが、一般的な市場価格や過去の類似事例と比較すると、約1.5倍〜1.8倍の価格設定になっています。材料費は定価通りですが、施工費(手間賃)が相場より著しく高く積算されている可能性があります。」このタイルの費用だけで建築主体工事の1/3を占めており、この費用が安くなればかなりの減額になります。
なぜ、高くなっていたのか?
特殊な材料は、施工に技術を要するため、施工会社が「やったことのない業者」に見積もりを取ると、失敗リスクを見込んで非常に高い金額(安全マージン)を提示されることがあります。
AIの指摘により「これは実費ではなく、リスク代が乗っている」と確信した私たちは、施工会社に対してピンポイントで指摘を行いました。
私たち:「この施工費は相場より高すぎます。専門業者を変えるか、適正単価まで見直してください」
調べた結果、メーカーから建設会社へ見積が上がるまでに2つの業者が入っていることが分かりました。本来このメーカーは建設会社から直接取引できる企業です。しかし建設会社はこのメーカーのタイルを扱ったことがなく、とりあえず下請けのタイル業者に見積依頼をしました。その下請け業者もそのタイルを扱ったことがなく、更に下請け業者に見積をとり、その業者がメーカーに材工見積(材料と工事を併せて見積)をとりました。結果としてメーカーと建設会社の間に入った2つの業者は、自分たちは全く仕事をせず下請けに任せるだけなのに、扱ったことのない知らない材料なので、念のため普通より多めに利益を乗せて見積書を提出していました。本来不要だった2つの業者の利益が間に乗せられていたということです。これを建設会社から直接メーカーに発注するよう指示することで大幅な減額に繋がりました。
結果、仕様(見た目)を一切変えることなく、適正な施工業者を選定し直すことで、大きな減額に成功しました。
3. 「数量の拾い出しミス」も見逃さない
単価だけでなく、AIは「数量」の矛盾も検知します。
別の内装工事項目において、AIは図面データと見積書を突き合わせ、以下の指摘を行いました。
【AIの指摘】
「意匠図の展開図から算出した『会議室の壁面積』に対し、見積書の『クロス貼りの数量』が約20%多く計上されています。ロス率(切り捨て分)を考慮しても過大です。」
これも人間が電卓を叩いてチェックすると数日かかる作業ですが、AIなら一瞬です。
この指摘を基に数量を訂正し、無駄なコストを削減しました。
まとめ:「根拠のある指摘」だけが、価格を下げる
「もっと安くしてください」と頭を下げるだけの交渉は、プロの仕事ではありません。
建設会社もビジネスですから、根拠のない値引きには応じられません。
しかし、「この単価は相場と比べてここがおかしい」「数量が図面と合っていない」というデータに基づいた指摘であれば、相手も認めざるを得ません。
KTXアーキラボは、AIという「最強の計算機」を武器に、クライアントの大切な資金を守ります。
「見積もりが高すぎて納得できない」
「どこを削ればいいか分からない」
もうそんな心配はいりません。
デザインのクオリティを維持したまま、コストを適正化する「賢い建築」をご提案します。
2026.2.8

【この記事を書いた人 松本哲哉】
KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師
2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)
【お問い合わせ先】
KTXアーキラボ一級建築士事務所
東京都港区南麻布3-4-5 エスセナーリオ南麻布002
兵庫県姫路市船丘町298-2 日新ビル2F
事業内容
建築設計・内装デザイン
メール:kentixx@ktx.space
電話番号:03-4400-4529(代表)
コメントを投稿するにはログインが必要です。

コメントを投稿するにはログインしてください。