居抜き物件の内装を活かす方法|リノベーションで上質な空間に再生する秘訣とは?

 
     
  • 公開日:2026/01/25
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  • 最終更新日:2026/01/25

新しく店舗やオフィスを構える際、居抜き物件の内装をそのまま活用すれば、初期費用を大幅に削減できます。しかし、前の借主が残した内装をどのように活かし、どこに手を加えればブランドイメージに合った上質な空間に再生できるのか、判断に迷う経営者や担当者の方は少なくありません。

この記事では、居抜き物件の内装を最大限活用しながら、リノベーションで理想的な空間を実現するための具体的な方法と実践的なポイントをご紹介します。

飲食店 外観

居抜き物件の内装を活かすメリット

居抜き物件とは、前の借主が使用していた設備や内装がそのまま残されている物件のことです。飲食店であれば厨房設備やカウンター、オフィスであればパーテーションや空調設備などが含まれます。これらを上手に活用すれば、開業や移転にかかるコストと時間を大幅に削減できます。

居抜き物件を選ぶ経済的メリット

居抜き物件の内装を活用する最大の利点は、初期投資を抑えられることです。一般的にスケルトン状態の物件から内装工事を始めると、設計から施工まで数百万円から数千万円規模の費用が発生します。しかし居抜き物件であれば既存の設備や内装をベースにできるため、改修費用を最小限に抑えることができます。

飲食店の場合、厨房設備は非常に高額です。ガス配管や換気設備、グリストラップなどの設置には専門的な工事だけで数百万円かかることも珍しくありません。居抜き物件ではこれらの設備がすでに整っているため、コストの削減が期待できます。また、設備導入にかかる時間も短縮できるため、早期に営業を開始して収益を上げられるという利点もあります。

オフィス利用の場合も同様に、空調設備や電気配線、インターネット回線などがすでに整備されていることが多く、これらを活用することで初期費用を抑えられます。

居抜き物件なら工事期間を短縮してスピーディーに開業できる

居抜き物件の大きな魅力のひとつが、「工事期間を大幅に短縮できる」という点です。スケルトン物件では、設計から施工、設備工事までゼロから整える必要があるため、一般的に2〜4ヶ月ほどの工期がかかります。一方、居抜き物件は、前テナントが使用していた内装や設備、レイアウトがある程度残っているため、それらを活かして改修工事を最小限に抑えることが可能です。その結果、開業準備にかかる期間は1〜2ヶ月程度に短縮されるケースも多く、スピーディーなオープンが実現します。

また、工期が短いということは、賃料が発生してから売上が立つまでの期間(いわゆる“空家賃”)を削減できるという経済的メリットにも直結します。さらに、開業までの時間が短い分、オーナーは早い段階で店舗運営に集中でき、スタッフの教育やメニュー開発など“中身づくり”にリソースを回せる点も見逃せません。

特に飲食店や美容室のように、開業タイミングが集客や話題性に大きく影響する業種では、スピード感は経営上の強力な武器となります。時間を味方につけて事業を軌道に乗せたい方にとって、居抜き物件は最適な選択肢と言えるでしょう。

居抜き物件の内装評価とリノベーション計画の立て方

居抜き物件の内装を活かすためには、まず現状を正確に把握し、どの部分を残してどこを改修するかを見極めることが重要です。計画を立てずに工事を始めてしまうと、予算オーバーや工期の遅延、さらには開業後のトラブルにつながる恐れがあります。

内装の状態を見極める確認ポイント

居抜き物件を契約する前に、必ず現地で内装の状態を細かくチェックしましょう。見た目がきれいに見えても、見えない部分に問題が潜んでいることがあります。ここでは確認すべきポイントをいくつかご紹介します。

まずは床や壁、天井の状態です。表面に目立つ汚れや傷がある場合、清掃や部分的な張り替えで対応できることもありますが、カビや腐食が進んでいる場合は大規模な改修が必要になります。飲食店として使われていた物件では、油汚れや水漏れの跡がないか注意深く確認してください。壁紙の剥がれや床材のたわみは、下地に問題がある可能性を示しています。

次に設備関係の確認です。給排水設備や電気配線、空調設備、ガス設備などは見た目だけでは判断できないため、専門家に点検を依頼することをおすすめします。厨房設備は使用頻度が高く劣化しやすいため、動作確認だけでなく、配管の状態や換気ダクトの清掃状況もチェックすることが必要です。

内装確認時の主要チェックリスト
  • 床・壁・天井の汚れ、傷、カビ、腐食の有無
  • 給排水設備の動作確認と漏水の痕跡
  • 電気容量と配線の状態(ブレーカー、コンセント位置)
  • 空調設備の動作と効き具合
  • 厨房設備の動作確認(ガスコンロ、換気扇、冷蔵庫など)
  • トイレ、洗面所などの水回りの清潔さと機能
  • 窓やドアの開閉状況と鍵の動作
  • 照明器具の状態と明るさ
  • 害虫やネズミの痕跡
  • 前借主が残した不要な備品の処分責任の確認

また、物件によっては前の借主が造作した部分が建物の構造に影響を与えている場合があります。たとえば、壁を撤去したり、配管を変更したりするには、建物オーナーや管理会社の許可が必要になることがあります。契約前に、どこまで改修が可能なのか、原状回復義務の範囲はどうなるのかを必ず確認しておきましょう。

費用対効果を高める改修優先順位の決定方法

内装の状態を把握したら、次は改修の優先順位を決めます。限られた予算の中で最大の効果を得るためには、「必ず直すべき部分」と「できれば直したい部分」を明確に分けることが重要です。

最優先すべきは、衛生面や安全面に関わる部分です。飲食店やクリニックなど衛生管理が求められる業種では、水回りの清潔さや換気設備の機能は妥協できません。また、電気配線やガス設備に不備があると事故につながる恐れがあるため、これらは専門家の点検を受けたうえで必要な修繕を行いましょう。

次に優先すべきは、顧客の目に触れる部分です。エントランス、接客スペース、トイレなど、顧客が利用する場所の印象は、ビジネスの成否に直結します。これらのエリアは店舗やオフィスの「顔」となるため、予算配分を多めに取ることをおすすめします。一方、バックヤードや倉庫など、顧客の目に触れない部分は、機能的に問題がなければ最低限の改修で済ませることも可能です。

また、改修の範囲を決める際には、将来的な変更のしやすさも考慮しましょう。たとえば、壁紙の張り替えや照明の交換は比較的簡単で費用も抑えられますが、配管や電気工事を伴う大規模な改修は後から行うと高額になります。初期投資として必要な部分と、後から調整できる部分を見極めることで、柔軟な経営が可能になります。

改修優先度の判断基準
優先度 対象エリア・項目 理由
水回り、電気・ガス設備、換気設備 安全性・衛生面に直結するため
エントランス、接客スペース、トイレ 顧客の第一印象を決めるため
床、壁、天井の美観 空間の印象に影響するが部分改修も可能
照明、家具、装飾 比較的低コストで変更可能
バックヤード、倉庫 顧客の目に触れず機能重視で可

予算を決める際には、見積もりに予備費を含めておくことも大切です。工事を始めてから想定外の問題が見つかることは珍しくありません。全体予算の一定額を予備費として確保しておくと、急なトラブルにも対応しやすくなります。

事例紹介:住宅リノベーション T-house(兵庫県姫路市)

居抜き物件の内装を活かしたリノベーションでは、既存の状態をどこまで活用し、どこに手を加えるかという判断が空間の質を大きく左右します。ここでは、既存建物を最大限に活かしながら再生した住宅リノベーションの事例をご紹介します。

兵庫県姫路市に建つ住宅リノベーション T-houseは、社屋オフィスとして使われていた建物を住宅へと用途転換した居抜きリノベーションです。既存の構造や空間スケールを活かしつつ、暮らしに必要な機能と快適性を再構築することが求められました。

■ プロジェクトの要点

  • 既存活用:建物の骨格や吹き抜け空間を残し、構造的な魅力を継承
  • 用途転換:オフィス用途から住宅用途への切り替えに伴う動線とゾーニングの再整理
  • 改修範囲:全面的に壊すのではなく、必要な部分に限定して改修を実施
  • 付加価値:既存棟に加え、シミュレーションゴルフ棟を新設し暮らしの幅を拡張
  • コスト配分:構造を活かすことで解体・新設工事を抑制
居抜きリノベーションの視点で見るポイント
用(機能性) 既存空間を活かしながら、住宅としての生活動線と快適性を確保
強(構造・合理性) 既存躯体を活用することで、工期とコストを抑えつつ安定した構造を維持
美(美観) 吹き抜けや大開口を活かし、スケール感のある開放的な住空間を実現

住宅リノベーション T-house のように、居抜き物件では「何を残すか」を明確にすることが、コストと空間価値の両立につながります。既存の魅力を読み取り、最小限の改修で再編集する姿勢が、上質なリノベーションを成立させる鍵となります。

豪邸設計デザイン

上質な空間を実現する具体的なリノベーション手法

居抜き物件の内装を活かしながらも、上質で魅力的な空間に再生するためには、デザインと機能の両面から計画的にアプローチすることが必要です。既存の要素を残しつつ、新しい要素を加えることで、統一感のある洗練された空間を作り出すことができます。

デザイン性と機能性を両立させる改修テクニック

リノベーションでは、見た目の美しさだけでなく、日々の業務や顧客対応がスムーズに行える機能性も欠かせません。ここでは、デザイン性と機能性を両立させるための具体的な手法をご紹介します。

まず、空間のゾーニング(区画分け)を見直しましょう。居抜き物件では前の借主の使い方に合わせたレイアウトになっていますが、自分のビジネスに最適とは限りません。たとえば、飲食店であれば厨房とホールの動線を見直すことで、スタッフの作業効率が大きく向上します。オフィスであれば、会議スペースと作業スペースを明確に分けることで、集中しやすい環境が作れます。

ゾーニングを変更する際には、パーテーションやカウンター、家具の配置で空間を仕切る方法が効果的です。壁を新設すると大きなコストがかかりますが、可動式のパーテーションやオープンシェルフを使えば、比較的低コストで空間を区切ることができます。また、床材を変えることでも視覚的にゾーンを分けることが可能です。

次に、収納スペースの確保です。居抜き物件では前の借主の収納設備がそのまま残っていることもありますが、自分の用途に合わない場合があります。収納が不足すると、物が表に出てしまい雑然とした印象になります。壁面を活用した棚や、デッドスペースを利用した収納を追加することで、機能性と美観を両立できます

また、動線の最適化も重要です。顧客の動き、スタッフの動きをシミュレーションして、無駄な移動や交錯が起きないようレイアウトを調整しましょう。飲食店では、厨房からホールへの料理の運搬経路や、顧客の入退店の流れをスムーズにすることが、サービスの質向上につながります。

デザイン性と機能性を高める改修のポイント
  • ゾーニングの見直しで用途ごとに空間を明確に区分する
  • パーテーションや家具で視覚的に空間を仕切る
  • 壁面やデッドスペースを活用した収納を増設する
  • 顧客とスタッフの動線を分析して最適化する
  • カウンターや作業台の高さを使いやすい高さに調整する
  • コンセントや照明スイッチの位置を使いやすい場所に配置する

照明と素材選びで空間の印象を変える方法

空間の印象を大きく左右するのが、照明と素材の選び方です。これらは比較的低コストで変更できるにもかかわらず、劇的な効果を生み出すことができます。

照明は、明るさだけでなく色温度(色味)にも注目しましょう。暖色系(電球色)の照明は温かみのある落ち着いた雰囲気を、白色系(昼白色)の照明は清潔感やクリアな印象を与えます。飲食店であれば料理が美味しく見える色温度を選ぶことが重要ですし、オフィスであれば作業効率を高める明るさと色温度を選ぶことが必要です。

また、照明の配置や種類を工夫することで、空間に奥行きや立体感を生み出せます。天井からの主照明だけでなく、間接照明やスポットライトを組み合わせることで、陰影が生まれ、空間にメリハリがつけられるでしょう。たとえば、壁面を照らすウォールウォッシャーや、商品や装飾品を照らすスポットライトを追加することで、上質な印象を演出できます。

素材選びも空間の質感を決定づける重要な要素です。居抜き物件の既存の素材を活かしつつ、部分的に質の高い素材を追加することで、全体の印象を引き上げることができます。たとえば、カウンタートップを天然木や大理石調の素材に変更するだけで、高級感が増します。また、アクセントウォールとして一面だけ異なる素材やカラーの壁紙を使うことで、空間に個性を持たせることができます。

床材も印象を大きく変える要素です。居抜き物件の床が傷んでいる場合は全面張り替えが必要ですが、状態が良ければ部分的に別の素材を組み合わせることで変化をつけられます。たとえば、エントランスだけタイルにしたり、接客スペースだけカーペットにしたりすることで、ゾーニングと同時に印象の変化を作り出せます。

色彩計画も重要です。既存の内装の色を活かしながら、アクセントカラーを追加することで、統一感を保ちつつ新しい印象を与えられます。基本色(ベースカラー)を70%、補助色(サブカラー)を25%、強調色(アクセントカラー)を5%程度の割合で配分すると、バランスの良い配色になるといわれています。

照明と素材で印象を変える具体例
変更箇所 改修内容 期待される効果
照明 間接照明の追加、色温度の調整 温かみのある雰囲気、立体感の演出
カウンター 天然木や人工大理石への交換 高級感、質感の向上
壁面 アクセントウォールの設置 空間の個性化、視線誘導
床材 部分的に素材を変更(タイル、カーペット等) ゾーニング、歩行時の質感向上
色彩 アクセントカラーの追加 ブランドイメージの統一、視覚的魅力

これらの要素を組み合わせることで、居抜き物件の内装を活かしながらも、まったく新しい印象の空間を作り出すことができます。大規模な工事をせずとも、照明と素材の選び方次第で、上質で洗練された空間を実現することは十分に可能です。

まとめ

この記事では、居抜き物件の内装を最大限に活かしながらリノベーションによって上質な空間へと再生する方法についてご紹介しました。

KTXアーキラボでは、上質で洗練された居抜き物件の内装をご提案しております。お気軽にお問い合わせください。

弊社の設計事例についてはコチラの作品集をご覧ください

2026.1.25


【この記事を書いた人 松本哲哉】

KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)

ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


【お問い合わせ先】

KTXアーキラボ一級建築士事務所

東京都港区南麻布3-4-5 エスセナーリオ南麻布002

兵庫県姫路市船丘町298-2 日新ビル2F

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飲食店・クリニック・物販店・美容院などの店舗デザイン・設計

建築・内装工事施工

メール:kentixx@ktx.space

電話番号:03-4400-4529(代表)

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