- 公開日:2026/01/24
- 最終更新日:2026/01/24
飲食店を開業する際、多くの経営者が特に頭を悩ませるのが内装工事の費用です。予想以上に高額になってしまい開業資金が不足したり、逆に予算を削りすぎて理想の店舗イメージを実現できなかったりと、適切な予算配分は開業成功の重要な鍵となります。
この記事では、飲食店の内装費用の相場から業態別の坪単価、さらにコストを抑えながら質の高い店舗を作るための具体的な方法まで詳しく解説します。
飲食店の内装工事にかかる費用の全体像
飲食店の内装工事費用は、物件の状態や業態、立地条件によって大きく変動します。一般的に、新規開業時の内装工事費用は開業資金全体の中でも大きな割合を占める項目であり、適切な予算計画を立てることが重要です。
内装工事費用を構成する主要項目
飲食店の内装費用は、複数の項目から構成されています。主要な費用項目を理解しておくことで、見積もりの妥当性を判断したり、どこにコストをかけるべきかを適切に判断したりすることができます。
内装工事費用の主な構成要素は、設計・デザイン費、工事費、設備費、什器備品費の4つに大きく分けられます。設計・デザイン費は、店舗のコンセプトを形にするための図面作成や設計監理にかかる費用です。工事費には、解体工事、電気工事、給排水工事、内装仕上げ工事などが含まれます。設備費は厨房機器や空調設備など、店舗運営に必要な設備の導入費用です。什器備品費は、テーブルや椅子、食器類、POSシステムなどの購入費用を指します。
| 費用項目 | 内容 | 費用目安(坪あたり) |
|---|---|---|
| 設計・デザイン費 | 図面作成、設計監理 | 3万〜8万円 |
| 工事費 | 解体、電気、給排水、内装仕上げ | 15万〜40万円 |
| 設備費 | 厨房機器、空調設備 | 10万〜30万円 |
| 什器備品費 | テーブル、椅子、食器、POSシステム | 5万〜15万円 |
これらの費用項目は相互に関連しており、一つの項目を削減すると別の項目に影響が出る場合があります。例えば、デザイン費を削減して簡素な設計にすると、店舗の魅力が低下し、集客に影響が出る可能性があります。逆に、過度にデザインにこだわりすぎると、工事費が膨らみ予算オーバーになるリスクがあります。バランスの取れた予算配分が成功する店舗づくりの基本となります。
業態別の費用相場と坪単価の違い
飲食店の内装費用は業態によって大きく異なります。これは、各業態に求められる設備や内装の質、客席のレイアウトなどが異なるためです。業態ごとの相場を把握しておくことで、自身が開業する店舗の適切な予算を見積もることができます。
カフェやベーカリーなどの軽飲食業態では、坪単価20万〜40万円程度が相場です。これらの業態は比較的シンプルな厨房設備で済むため、内装費用を抑えやすい傾向にあります。居酒屋やバルなどの一般飲食店では、坪単価30万〜50万円程度が目安となります。ラーメン店や焼肉店などの専門店は比較的高く、坪単価40万〜70万円程度が一般的ですが、これは特殊な厨房設備や排気設備が必要になるためです。高級レストランやフレンチ、イタリアンなどの業態では、質の高い内装材や照明、厨房設備が求められるため、坪単価50万〜80万円以上かかることも珍しくありません。
これらの相場はあくまでも一般的な目安であり、立地条件や物件の状態、こだわりの程度によって大きく変動します。都心部の一等地では、相場よりも2割〜3割程度高くなることもあります。また、物件がスケルトン状態(何もない状態)か居抜き物件(前の店舗の設備が残っている状態)かによっても、費用は大きく変わってきます。居抜き物件を活用すれば、内装費用を3割〜5割程度削減できる可能性があります。
飲食店内装費用の坪単価と工事内訳
飲食店の内装費用を正確に把握するためには、坪単価の概念を理解し、工事内容の詳細な内訳を知っておく必要があります。坪単価とは、1坪(約3.3平方メートル)あたりにかかる工事費用のことで、物件選定や予算計画の基準として広く使われています。
スケルトン物件と居抜き物件の費用差
飲食店の物件には大きく分けてスケルトン物件と居抜き物件の2種類があり、どちらを選ぶかで内装費用は大きく変わります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを理解しておくことが重要です。
スケルトン物件とは、コンクリートの躯体だけが残された状態の物件です。床や壁、天井の仕上げ材がなく、電気や給排水の配管も基本的な幹線のみという状態です。スケルトン物件の坪単価は40万〜70万円程度が相場となります。すべてを一から作り上げる必要があるため費用は高額になりますが、自由度が高く理想の店舗を実現できるメリットがあります。配管や電気容量なども店舗のニーズに合わせて設計できるため、将来的な拡張やメニュー変更にも対応しやすくなります。
一方、居抜き物件は、前のテナントが使用していた設備や内装の一部がそのまま残っている物件です。居抜き物件の坪単価は15万〜40万円程度が相場で、スケルトン物件と比較すると大幅にコストを抑えられます。特に厨房設備や空調設備がそのまま使える場合、数百万円単位でコストダウンできる可能性があります。ただし、既存設備のレイアウトに制約があるため、理想の店舗イメージと完全に一致させることが難しい場合があります。
- スケルトン物件
- 坪単価: 40万〜70万円
- 自由度: 高い(設計の自由度あり)
- 工事期間: 長い
- 初期費用: 高額
- 居抜き物件
- 坪単価: 15万〜40万円
- 初期費用: 低い
- 開業期間: 短い
- 制約: 既存レイアウトに制限あり
- 選択のポイント
- 予算
- こだわりの程度
- 開業スケジュール
- 業態の適合性
居抜き物件を選ぶ際の注意点として、設備の老朽化具合を必ず確認する必要があります。見た目は使えそうでも実際は修理や交換が必要になる場合があり、想定外の費用が発生することがあります。特に厨房機器や空調設備は専門業者による点検を依頼し、残存耐用年数や修理費用を事前に把握しておくことが重要です。
デザイン料と設計料の相場
飲食店の内装工事において、デザイン料と設計料は見落とされがちですが、店舗の完成度を左右する重要な項目です。これらの費用は工事費全体の1割〜2割程度を占めることが一般的です。
デザイン料は、店舗のコンセプトを視覚化し、魅力的な空間を創造するための費用です。デザイン会社やデザイナーに依頼する場合、工事費の10%〜15%程度が相場となります。
設計料は、デザインを実現するための技術的な図面作成や、法規制への適合確認、工事監理などにかかる費用です。一級建築士事務所などに依頼する場合、工事費の5%〜10%程度が相場です。
デザイン料や設計料を削減しようとする経営者もいますが、これらの費用は店舗の品質や完成度に直結する重要な投資です。特に初めて飲食店を開業する場合、専門家のアドバイスを受けることで、動線の悪さや設備配置のミスなど、開業後に後悔するような問題を未然に防ぐことができます。
内装工事の各項目別コストと見積もりのポイント
飲食店の内装工事費用を正確に把握するためには、各工事項目の内容とコストを詳しく理解しておく必要があります。見積書を受け取った際に、どの項目が適正価格なのか、どこに交渉の余地があるのかを判断できるようになります。
設備工事と什器備品にかかる費用
飲食店の設備工事は、店舗運営の基盤となる重要な部分です。適切な設備投資を行うことで、スムーズな店舗運営と長期的なコスト削減につながります。
電気工事は、照明設備、コンセント増設、厨房機器用の電源工事、看板用の電源などが含まれます。費用相場は50万〜120万円程度で、店舗の規模や厨房機器の種類によって変動します。特に大型の業務用冷蔵庫やオーブンなどを導入する場合、電気容量を増やす工事が必要になり、費用が高額になることがあります。給排水工事は、厨房のシンク、トイレ、手洗い場などの水回り設備の配管工事です。費用相場は80万〜120万円程度で、既存の配管からの距離や、排水設備の容量によって大きく変わります。
空調工事は、快適な店舗環境を維持するために重要な設備です。費用相場は60万〜100万円程度で、店舗面積や天井高、厨房の熱量などによって必要な空調能力が変わります。厨房エリアは一般客席よりも強力な空調が必要になるため、業務用エアコンの台数や能力を適切に計算する必要があります。ガス工事は、ガスコンロやオーブンなどを使用する場合に必要です。費用相場は30万〜60万円程度で、ガス管の引き込みが必要な場合はさらに費用がかかります。
厨房設備は、業態によって必要な機器が大きく異なります。基本的な厨房設備として、調理台、シンク、冷蔵庫、冷凍庫、ガスコンロ、作業台などがあり、これらを新品で揃えると300万〜700万円程度かかります。中古品を活用すれば、厨房設備費を半額程度に抑えることも可能ですが、故障リスクや衛生面を考慮して慎重に選ぶ必要があります。
| 工事項目 | 内容 | 費用相場 |
|---|---|---|
| 電気工事 | 照明、コンセント、厨房機器電源 | 50万〜150万円 |
| 給排水工事 | シンク、トイレ、グリストラップ | 80万〜200万円 |
| 空調工事 | エアコン設置、換気設備 | 60万〜180万円 |
| ガス工事 | ガス管引き込み、設備接続 | 30万〜100万円 |
| 厨房設備 | 調理台、冷蔵庫、コンロ等 | 300万〜800万円 |
什器備品費も忘れてはならない重要な項目です。客席のテーブルと椅子は、デザインや素材によって価格が大きく変わりますが、1席あたり2万〜6万円程度が目安です。20席の店舗であれば、40万〜120万円程度の予算を見込む必要があります。食器類、カトラリー、グラス類などは、客席数の1.5倍〜2倍程度の数を揃えるのが一般的で、費用は30万〜80万円程度です。POSシステムやレジスターは、タブレット型の簡易的なものなら10万〜30万円、本格的なシステムなら50万〜150万円程度かかります。
見積もり段階で確認すべき重要事項
内装工事の見積もりを受け取った際、金額だけでなく内容をしっかり確認することが重要です。見積もり段階での確認不足が、後々のトラブルやコスト増につながることがあります。
最初に確認すべきは工事範囲です。一式見積もりでは、具体的に何が含まれているのかが不明確なことがあります。例えば、内装仕上げ工事一式と書かれていても、壁塗装は含まれていても床材の施工は含まれていないといったケースがあります。各項目の材料費、施工費、諸経費を明示してもらうことで、妥当性を判断しやすくなります。
次に重要なのは、使用材料や設備のグレードの確認です。同じ「壁仕上げ工事」でも、塗料や壁紙のグレードで品質が大きく異なります。見積書に記載された材料のメーカー名や品番を確認し、必要に応じてサンプルを見せてもらうとよいでしょう。特に床材や壁材は店舗の雰囲気やメンテナンスコストに影響するため、実物を確認してから決定することが大切です。
工事期間も重要な確認事項です。開業予定日から逆算して工期を設定しますが、予期せぬトラブルで遅延する可能性もあります。各工程の期間や、遅延時の対応方針を事前に確認しておくことで、開業スケジュールへの影響を最小限に抑えられます。
追加費用が発生する可能性も確認しましょう。特に古い建物では、予想外の工事が発生することがあります。追加費用が発生する場合、その単価や承認プロセスを明確にしておくと、予算オーバーのリスクを減らせます。
施工後の保証内容も重要です。内装工事には通常、施工不良に対する保証期間があります。保証範囲や対応方法を確認し、定期的なメンテナンスサービスがあるかも確認しましょう。
- 工事範囲の明確化:具体的内容と含まれない工事の確認
- 材料・設備のグレード:メーカー名、品番、サンプル確認
- 工事期間と工程:着工日、完成予定日、スケジュール確認
- 追加費用の可能性:追加工事の取り決め
- 保証内容:施工保証の期間、対象範囲、アフターサービス
- 支払い条件:着手金、中間金、完成金の割合とタイミング
飲食店の内装費用を抑える実践的な方法
飲食店の内装費用は開業資金の中で大きな割合を占めますが、工夫次第でコストを抑えながら魅力的な店舗を実現することは十分に可能です。ただし、単純に安い業者を選ぶだけでは、品質や完成度に問題が生じる可能性があります。
物件選定と業者選びのポイント
内装費用を抑えるには、物件選定段階から戦略的に考えることが重要です。物件の状態や立地条件で内装費用が大きく変わります。
居抜き物件を活用すると、内装費用を3割〜5割削減できます。特に同業態の店舗が撤退した物件では、厨房設備や客席レイアウトをそのまま使え、大幅なコストダウンが可能です。しかし、設備の状態を専門家に点検してもらい、今後使用できるか確認することが重要です。配管や電気設備の老朽化により、修理費がかかることもあります。
物件の立地条件も費用に影響します。高層階や地下階は資材搬入や廃材搬出が手間となり工事費が高くなる傾向があります。また、建物の構造によっては配管距離が長くなり、費用が増加します。路面店や低層階を選べば、追加コストを抑えられる可能性があります。
またDIYもコスト削減の手段です。壁の塗装や家具の組み立て、小物の配置などは自分で行えます。ただし電気工事や給排水工事などは専門的な資格が必要で、素人が行うと法律違反や安全上の問題が生じるので注意が必要です。
- 相見積もり:最低3社から見積もりを取り比較
- 実績確認:飲食店施工実績が豊富な業者を選ぶ
- 専門性:業態に応じた業者選び(例:ラーメン店なら排気設備の経験豊富な業者)
- コミュニケーション:丁寧に答えてくれる業者を選ぶ
- 保証体制:施工後の保証やアフターサービスが充実している業者を選ぶ
長期視点で考える内装投資
内装費用を考える際、初期費用だけでなく長期的なコストパフォーマンスを考慮することが重要です。初期費用を抑えすぎて質の低い材料や設備を使用すると、短期間で修理や交換が必要になり、結果的に総コストが高くなることがあります。
床材の選定は、長期的なコストに大きく影響します。安価なクッションフロアは初期費用を抑えられますが、耐久性が低く数年で張り替えが必要になる場合があります。一方、初期費用は高めでも、タイルやフロアタイルなどの耐久性の高い材料を選べば、10年以上メンテナンスフリーで使用できます。飲食店の床は油汚れや水濡れが多く、頻繁に清掃が必要なため、清掃のしやすさと耐久性のバランスを考えて材料を選ぶことが重要です。
厨房設備も長期的視点での選定が重要です。中古の厨房機器を使用すればコストを抑えられますが、故障リスクや修理費用を考慮する必要があります。新品の業務用機器は初期費用が高額ですが、メーカー保証がついており、省エネ性能も高いため、長期的には運用コストを抑えられる可能性があります。特に冷蔵庫や冷凍庫などの連続稼働する設備は、電気代の差が大きくなるため、省エネ性能を重視して選ぶことをおすすめします。
照明設備も初期費用と運用コストのバランスが重要です。LED照明は従来の蛍光灯や白熱灯と比較して初期費用が高いですが、消費電力が少なく寿命も長いため、数年で投資回収できます。飲食店は営業時間が長く照明の使用時間も長いため、LED照明への投資は長期的に見て合理的な選択といえます。
事例紹介:居酒屋つのふり(奈良県奈良市)
飲食店内装の費用相場は、物件条件や既存空間の扱い方によって大きく左右されます。ここでは、居抜き物件の特性を活かすことで、内装費用と空間価値の両立を実現した事例をご紹介します。
奈良県奈良市にある居酒屋つのふりは、かつて映画館として使われていた地下空間を、和風居酒屋へと再生したプロジェクトです。客席床がスクリーンに向かって傾斜しているという特殊な条件を、あえて修正せず、空間の個性として取り込む設計判断が行われました。
■ プロジェクトの要点
- 物件特性:映画館跡地特有の大空間と傾斜床を持つ居抜き物件
- 費用判断:床をフラットにせず、既存の傾斜を活かすことで大工工事を抑制
- 空間構成:傾斜床を利用し、水盤や橋を配した立体的な客席構成を実現
- デザイン手法:日本庭園を思わせる要素を地下空間に組み込み、非日常性を演出
- 結果:他店では再現できない強い個性を持つ居酒屋として話題化
| 用(機能性) | 大人数利用に対応する宴会場と個室構成を確保し、収容力と回転率を両立 |
|---|---|
| 強(合理性・耐久性) | 既存床を活かすことで解体・再施工を減らし、工事費と工期を最適化 |
| 美(意匠性) | 地下空間に日本庭園的な演出を施し、記憶に残る体験型の内装を実現 |
今回の事例は飲食店内装において「条件の悪さ」が必ずしもコスト増につながらないことを示しています。既存空間を正しく読み替え、設計に転用することで、費用を抑えながらも集客力の高い店舗づくりが可能となります。
まとめ
この記事では、飲食店の内装費用の全体像から業態別の坪単価、コストを抑えながら質の高い店舗を実現する方法まで解説しました。内装費用は開業資金の中でも大きな割合を占めますが、適切な知識と戦略を持って臨めば、予算内で理想の店舗を実現することは十分に可能です。物件選定から業者選び、材料選定に至るまで、長期的なコストパフォーマンスを考慮して判断することが成功する飲食店経営の第一歩となります。
「商業建築の設計は、ただ美しい箱を作りだすためのプロセスであってはならない。」というのが、私達KTXの考え方です。
より大きなベネフィットを生む建築を創り出し、投資に見合う利益を還元するビジネスツールを我々は設計しています。建築設計からインテリアの空間デザイン、グラフィックに至るまで、あらゆるデザインを一貫してコントロールすることであなたのビジネスに強力な付加価値を生み出します。もし、建築設計についてお悩みなのであれば、是非一度我々にご相談ください。
KTXアーキラボでは、ご希望に沿った内装設計をご提案しております。お気軽にお問い合わせください。
2026.1.24

【この記事を書いた人 松本哲哉】
KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師
2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)
【お問い合わせ先】
KTXアーキラボ一級建築士事務所
東京都港区南麻布3-4-5 エスセナーリオ南麻布002
兵庫県姫路市船丘町298-2 日新ビル2F
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飲食店・クリニック・物販店・美容院などの店舗デザイン・設計
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