- 公開日:2026/01/16
- 最終更新日:2026/01/16
建築設計会社の選び方を間違えると、思い描いていたビジョンと異なる建物が完成してしまったり、予算超過やトラブルに見舞われたりするリスクがあります。商業施設や病院など大規模なプロジェクトでは特に、設計会社の専門性や実績、提案力が最終的な事業成果を大きく左右します。
この記事では、建築設計会社を選ぶ際に押さえておくべきポイントと判断基準について、実務経験に基づいた視点で解説します。
建築設計会社を選ぶ前に押さえておきたいポイント
建築設計会社を選ぶ際には、まず基本的な知識を理解しておく必要があります。設計事務所の種類や役割、それぞれの特徴を把握することで、自分のプロジェクトに最適なパートナーを見極めることができるでしょう。ここでは、建築設計会社とは何か、組織形態の違い、プロジェクトの性質による選び方の違いを整理していきます。
建築設計会社の役割とは
建築設計会社とは、建物の企画・設計から工事監理まで、建築プロジェクトの中核を担う専門組織です。依頼主の要望やビジョンを具体的な設計図面に落とし込み、機能性・安全性・美観を兼ね備えた建築物を実現するための提案を行います。単に図面を描くだけではなく、法令遵守の確認、構造設計や設備設計との調整、施工段階での工事監理といった一連のプロセスを統括する役割も担っています。
特に商業施設や医療施設などの大規模プロジェクトでは、建築設計会社の選び方も事業の成否を左右する要素です。デザインだけではなく、コスト管理、工期管理、施設の収益性に至るまで、幅広い視点から提案できる設計会社を選ぶことが求められます。また、建築主との綿密なコミュニケーション能力、関係者との調整力、アフターサービスの充実度なども重要な評価ポイントとなります。
設計会社によって得意分野や対応範囲が大きく異なるため、自社のプロジェクトの特性に合った専門性を持つ設計会社を選ぶことが、満足度の高い建築物を実現する第一歩となります。
個人設計事務所と企業設計会社の違い
建築設計を依頼する際、個人設計事務所と企業設計会社のどちらを選ぶかは、プロジェクトの規模や性質によって変わります。個人設計事務所は、建築家個人またはごく少数のスタッフで運営されており、オーナーの個性や独自の設計デザインが色濃く反映されるのが特徴です。住宅や小規模な店舗など、こだわりの強いプロジェクトには適していますが、大規模案件や短納期のプロジェクトでは対応力に限界があることもあります。
一方、企業設計会社は組織として複数の専門家を抱え、構造設計、設備設計、インテリアデザインなど各分野のスペシャリストがチームとして動きます。商業建築や医療施設、大規模オフィスビルなどの複雑な案件では、こうした総合力が大きな強みとなります。設計担当者が複数名で構成されるため、ヒアリングから設計、工事監理まで一貫した体制が整っている点も安心材料です。
また企業の設計会社は施工事例や実績が豊富なことから、過去の実績や評判を確認しやすい点もメリットです。費用相場については個人設計事務所の方が柔軟に対応できるケースもありますが、企業設計会社は見積もり比較がしやすく、アフターサービスや保証制度も整っていることが多いため、長期的な視点で判断することが重要です。
新築とリフォームでの選び方の違い
新築とリフォームでは、求められる設計会社の専門性が異なります。新築の場合、ゼロから建物を創り上げるため、法規制の確認、敷地調査、構造計算、耐震性や断熱性能の設計など、幅広い専門知識が必要です。特に商業施設や病院などの用途では、動線計画、バリアフリー対応、設備配置の最適化といった高度な提案力が求められます。このため、実績豊富で専門分野に強い設計会社を選ぶことが不可欠です。
リフォームや改修工事の場合は、既存建物の調査・診断能力が重視されます。構造の制約や設備の状況を正確に把握し、限られた条件の中で最適な改善提案ができるかどうかが鍵となります。特に築年数の古い建物では、耐震補強や断熱性能の向上といった技術的な課題をクリアする必要があり、施工段階での工事監理能力も重要です。
新築では「理想を実現する提案力」、リフォームでは「制約の中で最善を導く技術力」が求められるという違いを理解し、プロジェクトの性質に合った設計会社を選定しましょう。また、新築・リフォームいずれの場合も、建築主の意図を正確に汲み取れる設計担当者がいるかどうかも重要な選定基準となります。
建築設計会社の選び方の重要ポイント
建築設計会社を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。デザインの相性、実績の確認、専門性の見極めなど、複数の視点から総合的に判断することが、後悔しない選択につながります。ここでは、実務で特に重視すべき3つのポイントについて詳しく解説します。
デザインや作風が合うか
建築設計において、デザインや作風の相性は極めて重要です。どれほど実績が豊富でも、設計会社の得意とする設計デザインが自社のビジョンと合致しなければ、満足のいく結果は得られません。特に商業施設や病院などでは、ブランドイメージや利用者の体験価値を左右する要素となるため、慎重に見極める必要があります。
デザインの相性を確認するには、まず設計会社のウェブサイトや施工事例を細かくチェックすることから始めましょう。単に「おしゃれ」「かっこいい」という表面的な印象だけではなく、空間の使い方、素材の選定、照明計画、サイン計画に至るまで、トータルでの設計思想が自社の求める方向性と一致しているかを見極めます。モダン、クラシック、ミニマルなど、設計会社によって得意なテイストが異なるため、複数の設計会社を比較することが重要です。
また、デザインの方向性だけでなく、機能性と美観のバランスをどう取るかという設計哲学も確認すべきポイントです。商業建築では収益性を最優先すべき場面もあれば、ブランド価値を高めるためにデザインに投資すべき場面もあります。こうした判断基準が自社の考え方と合致する設計会社を選ぶことで、プロジェクトがスムーズに進行します。
実績とポートフォリオの確認方法
設計会社の実績とポートフォリオは、その会社の技術力や提案力を測る確実な指標です。特に大規模な商業施設や医療施設などの建築では、類似プロジェクトの経験があるかどうかが成功の鍵を握ります。実績を確認する際には、単に「何件手がけたか」ではなく、「どのような課題を解決したか」「どんな成果を生んだか」まで評価しましょう。
ポートフォリオを見る際には、以下のポイントに注目します。第一に、自社のプロジェクトと同規模・同用途の建築実績があるか。第二に、その建物が実際に稼働している様子や利用者の反応はどうか。第三に、設計から竣工までのプロセスがどのように進められたかです。優れた設計会社は、完成写真だけではなく、プロジェクトの背景やコンセプト、課題解決のプロセスまで丁寧に説明できるはずです。
- 同じ建築種別(商業施設、医療施設など)での実績数
- 施工事例の詳細説明(コンセプト、課題、解決策)
- 竣工後の建物の稼働状況や評判
- 設計から工事監理までの一貫対応の有無
- 受賞歴や業界での評価
- 設計事務所ランキングでの位置づけ
また、可能であれば実際の建物を見学させてもらうことも有効です。図面や写真だけでは伝わらない空間の質感、動線の流れ、ディテールの仕上がりなどを体感できます。こうした実地調査を通じて、設計会社の真の実力を見極めることができるでしょう。
専門性と対応可能な建築種別
建築設計には、住宅、商業施設、オフィスビル、医療施設、教育施設など、多様な建築種別が存在します。それぞれの用途に応じた法規制、機能要件、設備計画があり、高度な専門知識が求められます。設計会社を選ぶ際には、自社のプロジェクトに必要な専門分野に強みを持っているかを確認しましょう。
例えば、病院の設計では医療法や建築基準法の詳細な知識に加え、医療機器の配置計画、感染症対策、患者動線とスタッフ動線の分離といった専門的な配慮が必要です。一方、商業施設では集客力を高める外観デザイン、効率的な売場配置、バックヤードの機能性などが重視されます。このように、建築種別ごとに求められる専門性は大きく異なるため、実績のある専門分野を持つ設計会社を選ぶことが重要です。
また、耐震性や断熱性能といった建物の基本性能についても、設計会社の技術力によって大きな差が生まれます。特に長期的な運用コストや資産価値を考えると、こうした性能面での提案力は極めて重要です。設計段階でのシミュレーションや性能検証をどこまで丁寧に行うかは、設計会社の姿勢を表す指標となります。
| 建築種別 | 必要な専門知識 | 重視すべきポイント |
|---|---|---|
| 商業施設 | 集客動線、テナント計画、設備容量 | 収益性、ブランド価値、可変性 |
| 医療施設 | 医療法、感染対策、医療機器配置 | 機能性、安全性、拡張性 |
| オフィスビル | 働き方、環境性能、セキュリティ | 快適性、効率性、フレキシビリティ |
| 住宅 | ライフスタイル、居住性、デザイン | 快適性、個性、コストパフォーマンス |
設計会社によっては、特定の建築種別に特化している場合もあれば、幅広い分野に対応できる総合力を持つ場合もあります。自社のプロジェクトの性質を見極め、最適な専門性を持つパートナーを選定することが、建築設計会社の選び方における最も重要な判断基準となります。
事例紹介:The Laminaesculapian(姫路第一病院)
建築設計会社を選ぶ際には、単に見た目のデザインだけでなく、課題整理からコスト調整、長期的な視点に立った提案力が備わっているかを見極めることが重要です。ここでは、弊社が手がけた実際のプロジェクトを通して、その判断ポイントを具体的にご紹介します。
兵庫県姫路市に建つThe Laminaesculapian(姫路第一病院)は、築56年が経過した総合病院の新築移転計画として進められた医療施設です。耐震性の確保や医療機能の更新といった必須条件に加え、患者やスタッフの心理に配慮した建築デザインが求められる、高度な判断と調整が必要なプロジェクトでした。
■ この事例から分かる設計会社選びの視点
- 課題整理力:耐震性、機能更新、予算制約といった複数条件を同時に整理
- 提案の一貫性:コストを抑えながらも、建築の意匠を犠牲にしない設計判断
- 専門性:医療施設特有の動線、心理的配慮、法規への深い理解
- 長期視点:設備更新を前提に、建築の価値が長く残る構成を採用
- 対話力:施主の要望を抽象論で終わらせず、空間として具体化
このように、実績を見る際には「どんな建物をつくったか」だけでなく、「どのような制約条件の中で、どんな判断を積み重ねてきたか」に注目することで、その設計会社の本質的な力を見極めることができます。
建築設計会社を選ぶ際のプロセス
建築設計会社を実際に選定する際には、体系的なプロセスを踏むことが重要です。候補を絞り込み、面談を通じて相性を確認し、提案内容を比較検討するという段階を経ることで、最適なパートナーを見極めることができます。ここでは、実務で活用できる具体的な選定プロセスについて解説します。
候補の探し方と情報収集方法
建築設計会社の候補を探す方法はいくつかあります。一般的なのは、インターネット検索や設計事務所ランキングを活用する方法です。「建築設計事務所」「設計会社 比較」といったキーワードで検索すれば、多数の候補がリストアップされます。ただし、ウェブサイトの情報だけで判断するのは危険です。掲載されている施工事例が実際にその会社が主導したプロジェクトなのか、外部の協力会社の実績が含まれていないかなど、慎重に確認する必要があります。
より確実な方法は、業界関係者や既に建築プロジェクトを経験した知人からの紹介です。実際にプロジェクトを進めた経験者からの評判や実績は、ウェブ上の情報よりも信頼性が高いといえます。また、建築関連の展示会やセミナーに参加し、直接設計会社の担当者と話をする機会を設けることも有効です。こうした場で得られる情報は、設計会社の提案力やコミュニケーション能力を直接感じ取る貴重な機会となります。
候補を絞り込む際には、以下のような情報を収集しましょう。まず、設計会社の所在地や組織規模、設立年数などの基本情報。次に、主要な施工事例と専門分野、対応可能な建築種別。さらに、設計料の相場や費用体系、アフターサービスの内容などです。これらの情報を一覧表にまとめることで、複数の候補を客観的に比較できるようになります。
- 会社の基本情報(所在地、規模、設立年数)
- 主要な施工事例と専門分野
- 対応可能な建築種別と実績数
- 設計料の費用相場と見積もり方式
- 設計担当者の経歴と専門性
- 工事監理の体制とアフターサービス
- 評判や口コミ、受賞歴
面談で確認する質問リスト
候補が絞り込めたら、次は実際に面談を行います。面談は単なる顔合わせではなく、設計会社の提案力、コミュニケーション能力、専門性を見極める重要な機会です。事前に質問リストを準備し、すべての候補に同じ質問をすることで、公平な比較が可能になります。
確認することとして、設計のプロセスや体制が挙げられます。「設計担当者は誰になりますか」「ヒアリングから設計完了までのスケジュールは」「構造設計や設備設計は社内で対応できますか」といった質問です。特に大規模プロジェクトでは、チーム体制や専門家の配置が重要になります。また、工事監理についても「施工段階でどのような関与をしますか」「変更があった場合の対応は」など、具体的に確認しましょう。
- 当社のプロジェクトと類似した案件の実績とその成果は?
- 設計担当者の経歴と専門分野は?
- ヒアリングから設計完了までのプロセスとスケジュールは?
- 構造設計、設備設計、インテリアデザインの対応体制は?
- 工事監理の範囲と頻度は?
- 設計料の算定方法と追加費用の発生条件は?
- 想定される課題とその対策は?
- アフターサービスや保証制度の内容は?
費用についても明確にしておくことが重要です。設計料の算定方法(工事費の何%、面積単価など)、追加費用が発生する条件、支払いスケジュールなどを確認します。また、「耐震性や断熱性能を高めたい場合、どの程度のコスト増になりますか」といった、性能向上とコストのバランスについても質問すると、設計会社の技術力や提案力が見えてきます。面談での印象やコミュニケーションの取りやすさも重要な判断材料となるため、複数の候補と面談することをお勧めします。
提案書と初期プランの比較方法
面談を経て、いよいよ提案書や初期プランを受け取る段階に進みます。ここでの比較検討が、最終的な選定を左右する最も重要なステップです。提案書は単にデザインの良し悪しだけでなく、設計会社の理解力、提案力、実現可能性を総合的に評価する材料となります。
まず、提案書がこちらの要望をどれだけ正確に理解しているかを確認します。ヒアリングで伝えたビジョンや課題が反映されているか、単に一般的なプランを提示しているだけではないかをチェックしましょう。優れた提案は、依頼主の要望を咀嚼した上で、さらに一歩踏み込んだ提案が含まれています。例えば、当初想定していなかった動線の改善案や、コストを抑えながら価値を高める工夫などが盛り込まれていれば、その設計会社の提案力の高さを示しています。
次に、実現可能性とコストのバランスを評価します。どんなに美しいデザインでも、予算を大幅に超えていたり、技術的に実現困難だったりすれば意味がありません。提案書には概算工事費や工期の見通しが含まれているはずですので、これらが現実的な範囲に収まっているかを確認します。また、「この部分を変更すれば○○円削減できる」といった代替案が示されていれば、柔軟な対応力を持つ設計会社だと判断できます。
| 評価項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 要望の理解度 | ヒアリング内容が正確に反映されているか |
| 提案力 | 当初想定を超える価値ある提案があるか |
| 実現可能性 | 技術的・法規的に問題なく実現できるか |
| コスト感覚 | 予算内に収まる現実的なプランか |
| 説明のわかりやすさ | 図面や資料が理解しやすいか |
| 柔軟性 | 変更や調整に対応できる余地があるか |
まとめ
この記事では、建築設計会社の選び方について、基本的な知識から具体的な選定プロセスまで詳しく解説してきました。個人設計事務所と企業設計会社の違い、新築とリフォームでの選び方の違いを理解し、デザインの相性、実績とポートフォリオ、専門性といった重要ポイントを押さえることが大切です。そして、候補の探し方、面談での確認事項、提案書の比較方法といった体系的なプロセスを踏むことで、最適な設計会社を見極めることができます。
建築は長期にわたる投資であり、事業の成否を左右する重要な要素です。設計会社選びに時間をかけ、複数の候補を慎重に比較検討することで、満足度の高いプロジェクトを実現できるでしょう。あなたのビジョンを理解し、共に最高の建築を創り上げるパートナーとの出会いを心から応援しています。
「商業建築の設計は、ただ美しい箱を作りだすためのプロセスであってはならない。」というのが、私達KTXの考え方です。
より大きなベネフィットを生む建築を創り出し、投資に見合う利益を還元するビジネスツールを我々は設計しています。建築設計からインテリアの空間デザイン、グラフィックに至るまで、あらゆるデザインを一貫してコントロールすることであなたのビジネスに強力な付加価値を生み出します。もし、建築設計についてお悩みなのであれば、是非一度我々にご相談ください。
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2026.1.16

【この記事を書いた人 松本哲哉】
KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師
2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)
【お問い合わせ先】
KTXアーキラボ一級建築士事務所
東京都港区南麻布3-4-5 エスセナーリオ南麻布002
兵庫県姫路市船丘町298-2 日新ビル2F
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飲食店・クリニック・物販店・美容院などの店舗デザイン・設計
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