サロン設計の基本|美容室・エステの集客や動線を考えた空間設計の流れ

 
     
  • 公開日:2026/01/07
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  • 最終更新日:2026/01/07

美容室やエステサロンの設計において重要なのは、単に「美しい空間」を作ることだけではありません。来店した顧客が心地よく過ごし、スタッフが効率的に働ける動線を確保し、さらに集客と収益につながる戦略的な空間設計が求められます。サロン設計は、ビジネスの成功を左右する重要な投資なのです。

この記事では、サロン設計の基本から具体的な空間設計の流れまでを詳しく解説します。

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サロン設計で最も重要な「顧客体験」の視点

サロン設計において何よりも優先すべきは、顧客が店舗に足を踏み入れた瞬間から施術を終えて帰るまでの一連の体験です。この体験価値が高ければリピート率が上がり、口コミによる集客効果も期待できます。設計段階から顧客目線を徹底することが、競合との差別化につながります。

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動線設計が顧客満足度を左右する理由

サロンにおける動線設計は、顧客とスタッフの両方の動きを考慮する必要があります。顧客動線では、エントランスから受付、待合スペース、施術スペース、会計、そして退店までの流れをスムーズにすることが基本です。この流れに無駄や混乱があると、顧客は無意識のうちにストレスを感じ、満足度が低下します。

特に美容室では、カット中の顧客とカラー待ちの顧客、シャンプー台への移動など、複数の動線が交錯します。動線が交差する箇所を最小限に抑え、各エリアへの移動距離を短くすることで、顧客の待ち時間やストレスを軽減できます。エステサロンの場合は、プライバシーを重視した個室への誘導動線と、施術後のパウダールームへのアクセスを考慮した設計が求められます。

スタッフ動線も同様に重要です。施術に必要な道具や材料へのアクセス、バックヤードとの往復、複数の施術スペース間の移動効率を高めることで、スタッフの労働負担が軽減され、サービス品質の向上につながります。動線設計では、顧客動線とスタッフ動線が干渉しないよう配慮することも必要です。顧客の目に触れたくないバックヤード作業や在庫管理スペースへの動線は、できるだけ顧客エリアから分離することが望まれます。

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集客につながる空間演出の基本原則

サロンの集客力は、店舗の外観とエントランスデザインに大きく左右されます。通行人の視線を引きつけ、「入ってみたい」と思わせる外観デザインは、新規顧客獲得の第一歩です。特に路面店の場合、ガラス面を効果的に使って店内の雰囲気を外から見えるようにすることで、入店へのハードルを下げることができます。

店内に入った瞬間の印象も重要です。エントランスから見える最初の視線をデザインすることで、ブランドイメージを強く印象づけることができます。高級感を演出したいサロンであれば、素材選びや照明計画で上質さを表現し、カジュアルで親しみやすいサロンであれば、温かみのある色調や開放的なレイアウトを採用します。

照明設計も集客に大きく影響します。自然光を取り入れた明るい空間は清潔感を与え、間接照明を効果的に使った空間は落ち着きとプライバシー感を演出します。美容室では、カラーチェックに影響しない照明の色温度選びが必須であり、一般的には5000K前後の昼白色が推奨されます。エステサロンでは、リラクゼーション効果を高めるために3000K前後の電球色を使用することが多いです。

サロンタイプ別の空間演出ポイント
サロンタイプ 演出のポイント 推奨照明色温度 素材選びの方向性
高級美容室 上質感・ラグジュアリー 4000-5000K 大理石、木材、金属
カジュアル美容室 親しみやすさ・開放感 4500-5500K 明るい木材、ポップな色
高級エステ プライバシー・非日常感 2700-3000K 大理石、落ち着いた色調
リラクゼーションサロン 癒し・安心感 2700-3000K 木材、ファブリック

事例紹介:Pinning the Light(ヘアサロン ルミエール)

ここまで解説してきた集客につながる空間演出の考え方が、実際のサロン空間でどのように実装されているのかを、弊社が手がけた事例を通してご紹介します。

兵庫県姫路市にあるPinning the Light(ヘアサロン ルミエール)は、コンビニ撤退跡の物件をリノベーションした美容室です。限られた工事予算の中で強い印象を残す空間が求められ、素材選定と光の演出によってブランドイメージを確立する設計が行われました。

■ プロジェクトの要点

  • 計画条件:居抜き物件を活用し、工事費を抑えながら集客力のある空間を実現
  • 素材計画:天井と壁にOSBボードを重ね貼りし、空間全体の質感を統一
  • 床仕上げ:OSBボード柄のビニルタイルを用い、視覚的な一体感を強化
  • 演出要素:約12万本の画鋲を用いたインスタレーションを壁面中央に配置
  • 光の設計:昼は自然光を反射し、夜は内部照明を外部へ放つ二面性を持たせた
  • 視認性:通行人の視線を捉える象徴的な演出により、外観自体を広告装置として機能させた

 

「用・強・美」で見る価値
用(機能性) 低コスト素材を活用しながら、サロンとして必要な明るさと視認性を確保
強(合理性・持続性) 下地材として使われる素材を意匠として転用し、施工性とコストバランスを最適化
美(美観) 光を乱反射するインスタレーションによって、記憶に残る象徴的な空間体験を創出

Pinning the Lightは、装飾や高価な素材に頼らず、光と素材の扱い方によってサロンの集客力を最大化した事例です。空間そのものが広告となり、ブランドの世界観を直感的に伝える設計は、美容室やエステサロンにおける空間演出の一つの完成形と言えるでしょう。(当該美容院はグッドデザイン賞を受賞しました)

美容室・エステサロンに特化した設計プロセス

サロン設計は、一般的な商業施設とは異なる専門的な知識と経験が必要です。施術に必要な設備、水回りの配置、電気容量の確保、換気システムなど、サロン特有の要件を満たしながら、ブランドコンセプトを空間に落とし込むプロセスが求められます。設計段階での綿密な計画が、開業後の運営効率を大きく左右します。

コンセプト設定から図面化までの具体的ステップ

サロン設計の第一歩は、明確なコンセプト設定です。ターゲット顧客層、提供するサービス内容、価格帯、ブランドイメージを具体化し、それを空間デザインに反映させる方針を固めます。この段階では、競合分析や市場調査の結果を踏まえ、差別化ポイントを明確にすることが重要です。たとえば、「30代女性向けのナチュラルオーガニックエステ」というコンセプトであれば、グリーンの配置、アースカラーの配色といった具体的な設計方針が導き出されます。

次に行うのが、スペースプログラミングと呼ばれる面積配分の検討です。総床面積に対して、施術スペース、待合スペース、バックヤード、トイレなどの各エリアにどれだけの面積を割り当てるかを決定します。一般的な美容室では、施術スペースが全体の50〜60%、待合・受付が15〜20%、バックヤードが15〜20%、その他設備が10%程度の配分が標準的です。エステサロンでは、個室の施術ルームが中心となるため、施術スペースの比率がより高くなります。

スペース配分が決まったら、基本設計に入ります。この段階では、平面図、立面図、断面図を作成し、各エリアの配置と動線を具体化します。設備関係では、シャンプー台の給排水位置、電気容量、換気ダクトのルート、空調機器の配置などを検討します。

基本設計の承認後、実施設計に進みます。ここでは、仕上げ材の選定、家具・什器の詳細仕様、照明器具の配置、サインデザインなど、施工に必要なすべての情報を図面化します。サロン設計では、メンテナンス性も重要な検討事項です。床材は清掃しやすく、薬剤に強い素材を選び、壁材は汚れが目立ちにくく、部分的な補修が可能なものを選定します。

業態別に異なる設計上の注意点

美容室とエステサロンでは、設計上の重点が大きく異なります。美容室では、複数の顧客が同じ空間にいることが前提となるため、適度な開放感と各セット面のプライバシーのバランスが重要です。セット面の間隔は、一般的に1.2〜1.5mが標準とされ、この距離が狭すぎると圧迫感が生まれ、広すぎるとスタッフの移動効率が低下します。

シャンプーブースの設計も美容室特有の重要ポイントです。シャンプー台は、施術の流れの中で顧客が最もリラックスできる瞬間を提供する場所であり、同時に首や背中に負担がかかりやすい場所でもあります。天井高の確保、適切な照明配置、視線の抜け感などを考慮した設計が求められます。また、シャンプーブースへの動線は、カット中の顧客の視界に入らないよう配慮することも大切です。

エステサロンでは、個室性とプライバシー保護が大切です。完全個室型、セミオープン型、カーテン仕切り型など、業態や価格帯によって適切な間仕切り方法を選択します。高級エステサロンでは、防音性能の高い壁で仕切られた完全個室が基本となり、隣室の音や気配を感じさせない設計が必須です。一方、リラクゼーションサロンでは、コストを抑えつつ一定のプライバシーを確保するため、天井までは届かない可動式パーティションやカーテンを使用することもあります。

ネイルサロンの場合は、また異なる設計配慮が必要です。ネイル施術は細かい作業が中心となるため、手元を明るく照らす照明設計が不可欠です。色の判別が正確にできる演色性の高い照明(Ra90以上)を選定し、影ができない配光計画を立てます。また、ネイルの薬剤臭対策として、通常より強力な換気システムの導入が推奨されます。1時間あたり15〜20回の換気回数を確保することで、快適な施術環境を維持できます。

業態別の設計チェックリスト
  • 美容室:セット面間隔の確保、シャンプー台の配置、ドライヤー使用時の電気容量、カラー剤保管スペース
  • エステサロン:完全個室の遮音性能、施術ベッドのサイズ対応、着替えスペースの確保、シャワー設備の検討
  • ネイルサロン:手元照明の演色性、換気システムの強化、ダストコレクターの配置、商材ディスプレイスペース
  • まつげエクステサロン:施術ベッドの配置角度、施術者の作業姿勢への配慮、グルー保管の温度管理

サロン設計における機能性と収益性の両立

サロンの空間設計は、顧客満足度を高めるだけでなく、経営的な収益性も考慮しなければなりません。限られた床面積の中で、どれだけの売上を生み出せる設計にするか、初期投資をどの程度の期間で回収できるか、といった経営視点が不可欠です。美しさと機能性、投資効率のバランスを取ることが、成功するサロン設計の条件となります。

施術スペースの効率的なレイアウト手法

サロンの収益性を最大化するには、施術スペースの効率的なレイアウトが鍵となります。美容室の場合、セット面数が売上のキャパシティを直接左右します。しかし、単純にセット面を増やせば良いわけではありません。スタッフの動線効率、顧客の快適性、設備のメンテナンス性などを総合的に考慮した上で、最適なセット面数を決定する必要があります。

一般的に、美容室のセット面数は、想定する1日の来客数とスタッフ数から逆算して決定します。1人のスタイリストが1日に対応できる顧客数は、カット中心であれば6〜8人、カラーやパーマを含めると4〜6人程度が目安です。この数字に在籍スタイリスト数を掛け合わせ、回転率を考慮してセット面数を算出します。たとえば、スタイリスト3人で1日平均18人の顧客を想定する場合、最低6セット面が必要となりますが、ピーク時の余裕を考えると7〜8セット面が適切でしょう。

エステサロンの施術室数も同様の考え方で決定します。ただしエステの場合は施術時間が長いため、回転率は美容室より低くなります。また施術室の広さも重要な検討事項です。フェイシャルエステであれば1室あたり8〜10㎡、ボディエステでは10〜15㎡が標準的ですが、贅沢な空間演出を求める高級サロンではさらに広い面積が必要になるでしょう。

複合型サロンの場合は、各メニューのスペース配分を事業計画に基づいて最適化します。ヘアとネイルを併設する場合、どちらの売上比率が高いかによって、それぞれに割り当てる面積と設備数を調整します。将来的な業態変更も可能な柔軟性のある設計にすることも一つの戦略でしょう。

リピート率を高める空間設計の工夫

サロンビジネスの成功において、リピート率の向上は最も重要な課題の一つです。新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5倍とも言われており、いかにリピーターを増やすかが収益性を左右します。空間設計の工夫によって、顧客の再来店意欲を高めることが可能です。

まず重要なのが、快適な待ち時間の演出です。予約制のサロンでも、わずかな待ち時間は発生します。この短い時間を不快に感じさせないよう、魅力的な待合スペースを設計することが大切です。座り心地の良いソファ、雑誌やタブレット端末の充実、無料のドリンクサービス、Wi-Fi環境の提供などは、顧客満足度を高める基本的な要素です。

施術中の快適性も重要です。美容室のセット面では、鏡の大きさと角度、椅子の座り心地、足元のスペース、手荷物置き場の位置などが顧客の快適性に影響します。長時間座っていても疲れない椅子の選定、適切な高さ調整機能、肘掛けの有無などを慎重に検討します。エステサロンの施術ベッドでは、マットレスの硬さ、室温調整、音響環境、アロマの香りなど、五感すべてに配慮した空間づくりが求められます。

パウダールームやトイレの充実度も、顧客の印象を大きく左右します。施術後のメイク直しができる十分な広さのパウダールーム、明るく清潔なトイレは、サロン全体の評価を高めます。特に女性客が中心のサロンでは、パウダールームに大きな鏡、十分な照明、コンセント、ヘアアイロンやドライヤーの備え付けなどがあると、顧客満足度が向上します。

リピート率向上のための設計チェックポイント
  1. 待合スペースの居心地の良さ(ソファ、雑誌、ドリンク、Wi-Fi)
  2. 施術中の快適性(椅子・ベッドの品質、室温、音響、香り)
  3. プライバシーへの配慮(個室性、視線の遮断、防音)
  4. 清潔感の維持しやすさ(掃除しやすい素材、見えない収納)
  5. パウダールームの充実度(鏡、照明、アメニティ)
  6. トイレの清潔さと設備(ウォシュレット、アメニティ、清潔感)
  7. 全体の統一感とブランドイメージの表現(色彩、素材、家具)
  8. 季節感の演出(照明の調整、ディスプレイの変更可能性)

さらに、五感に訴える空間デザインも効果的です。視覚だけでなく、心地よい音楽(聴覚)、アロマの香り(嗅覚)、質の良い素材の触感(触覚)、提供されるドリンクの味(味覚)など、五感すべてで「また来たい」と思わせる体験を設計します。特に香りは記憶に強く結びつくため、サロン独自のシグネチャーアロマを設定することで、ブランドの記憶を強化できます。照明の色温度や明るさも、リラックス効果に大きく影響します。調光可能な照明システムを導入し、時間帯や天候に応じて最適な明るさに調整できるようにすることも、上質な体験を提供する工夫の一つです。

まとめ

この記事では、サロン設計における基本的な考え方から、動線設計や空間演出、業態別の設計ポイント、リピート率向上のための空間設計まで幅広く解説しました。サロンの成功は美しさだけでなく、機能性と収益性を兼ね備えた設計によって実現されます。顧客体験を最優先に考えながらも、経営的な視点を忘れずに設計を進めることが重要です。

「商業建築の設計は、ただ美しい箱を作りだすためのプロセスであってはならない。」というのが、私達KTXの考え方です。

より大きなベネフィットを生む建築を創り出し、投資に見合う利益を還元するビジネスツールを我々は設計しています。建築設計からインテリアの空間デザイン、グラフィックに至るまで、あらゆるデザインを一貫してコントロールすることであなたのビジネスに強力な付加価値を生み出します。もし、建築設計についてお悩みなのであれば、是非一度我々にご相談ください。

KTXアーキラボでは、集客力と効率t系な動線を兼ね備えたサロンの設計をご提案しております。お気軽にお問い合わせください。

弊社の設計事例についてはコチラの作品集をご覧ください

2026.1.7


松本 哲哉

【この記事を書いた人 松本哲哉】

KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)

ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


【お問い合わせ先】

KTXアーキラボ一級建築士事務所

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