モダンリゾートデザインの家とは?非日常を日常に変える建築設計の魅力

 
     
  • 公開日:2025/12/09
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  • 最終更新日:2025/12/10

毎日の生活空間が、まるで高級リゾートホテルに滞在しているかのような心地よさを提供することがモダンリゾートなデザインの本質です。従来の住宅や商業施設が単なる「機能を満たす箱」であったのに対し、モダンリゾートなデザインは空間そのものが価値を生み出し、利用者の感情や行動に深く影響を与える設計思想として、経営者やデベロッパーから注目を集めています。

この記事では、モダンリゾート風デザインの設計手法から商業的な活用事例まで、投資価値を最大化する建築デザインの本質を解説します。

モダンリゾートなデザインが生み出す暮らしの変革

モダンリゾートなデザインとは、リゾート地で感じる開放感や上質な時間の流れを、日常の建築空間に再現する設計アプローチです。単なる見た目の美しさではなく、空間が生み出す心理的効果やブランド価値の向上まで視野に入れた、戦略的な建築設計手法として確立されています。

日常に溶け込む非日常空間の設計思想

モダンリゾートなデザインの核心にあるのは、「日常と非日常の境界線を曖昧にする」という設計思想です。多くの人がリゾート地で感じる解放感は、単に景色が良いからではありません。視界の抜け、素材の質感、光の入り方、音の響き方など、複数の要素が複合的に作用して生まれる体験なのです。この体験を住宅や商業施設に移植するためには、表層的なデザインを真似るのではなく、空間が人の感情に与える影響を科学的に分析し、設計に落とし込む必要があります

例えば、高級リゾートホテルでは、エントランスから客室までの動線において、視線の高さや天井高さが段階的に変化するように設計されています。これは人が空間を移動する際の心理的な緊張と弛緩をコントロールする技術です。同様の手法を住宅に適用すれば、帰宅した瞬間から「日常の疲れを癒す空間」へと気持ちが切り替わる仕掛けを作ることができます。玄関から居住空間への動線に「予期せぬ視線の抜け」を配置することで、毎日帰る自宅でありながら、初めて訪れたリゾート施設のような新鮮な驚きを提供できるのです。

また、モダンリゾートなデザインでは、空間の「余白」が極めて重要な役割を果たします。日本の伝統的な茶室や庭園が「間」を重視してきたように、現代のモダンリゾートなデザインでも、何もない空間こそが贅沢さの象徴となります。これは単なるミニマリズムとは異なり、計算された余白によって利用者の視線や意識を特定の要素に誘導し、空間体験の質を高める手法です。商業施設においては、この余白が顧客の滞在時間を延ばし、購買行動を促進する効果を持つことが、複数の商業施設分析で実証されています。

五感を刺激する空間体験の実現手法

モダンリゾートなデザインが他の建築スタイルと決定的に異なるのは、視覚だけでなく、触覚・聴覚・嗅覚・味覚まで含めた五感全体をデザインの対象としている点です。高級リゾート施設が記憶に残るのは、そこで体験した「感覚の総体」が脳に強く刻まれるためです。この原理を理解し、建築設計に組み込むことで、単なる「きれいな建物」ではなく、「また訪れたくなる空間」「そこにいるだけで価値を感じる場所」を創造できます。

触覚への配慮は、素材選定において顕著に現れます。モダンリゾートなデザインでは、床材・壁材・手すりなど、人が直接触れる部分に天然素材や質感の高い仕上げ材を採用します。例えば、無垢材のフローリングは視覚的な美しさだけでなく、素足で歩いたときの温もりや適度な柔らかさが、利用者に安心感と上質さを伝えます。医療施設にモダンリゾートなデザインを導入する場合、待合室の椅子や受付カウンターに木材や石材を使用することで、無機質な病院のイメージを払拭し、患者の不安を軽減する効果が期待できます

聴覚のデザインも見過ごせません。リゾート施設では、波の音、風の音、鳥のさえずりなど、自然の音が心地よさを生み出しています。都市部の建築では自然音を再現することは困難ですが、代わりに「静寂」をデザインすることが可能です。遮音性能の高い壁材や窓サッシの採用、音の反響を計算した天井高さや壁面角度の設定により、外部騒音をシャットアウトし、室内の音響環境を最適化します。特に医療施設やホテルでは、プライバシーと静穏性が利用者満足度に直結するため、音環境の設計は投資対効果の高い要素となります。

嗅覚へのアプローチとしては、建材から発生する揮発性有機化合物(VOC)を極力抑えた素材を選定し、化学的な臭いのない空間を作ることが基本です。その上で、天然木材の持つ自然な香りや、植栽による緑の香りを空間に取り入れることで、リゾート地特有の爽やかさを演出できます。商業施設においては、エントランスやロビーに特定の香りを配置することで、ブランドの記憶定着率を高める「香りのブランディング」も有効な手法として注目されています。

豪邸設計デザイン

モダンリゾートなデザインを構成する建築要素

モダンリゾートなデザインを実現するためには、特定の建築要素を戦略的に組み合わせる必要があります。これらの要素は単独では効果を発揮せず、相互に関連し合うことで初めて「非日常を日常に変える」空間体験を生み出します。

開放性と採光を最大化する設計技術

モダンリゾートなデザインの象徴的な特徴は、圧倒的な開放感です。これは単に窓を大きくすれば実現できるものではなく、構造設計・断熱性能・眺望計画を統合した高度な技術が求められます。特に日本のように四季があり、夏の高温多湿と冬の寒冷に対応しなければならない気候では、開放性と居住性能を両立させる設計が不可欠です。

大開口窓を実現するためには、まず構造計画が重要になります。従来の在来工法では、耐力壁の配置によって開口部の大きさが制限されますが、鉄骨造やRC造を採用することで、壁面のほぼ全体をガラス面にすることが可能になります。ただし、大開口窓は熱損失の原因となるため、Low-E複層ガラスやトリプルガラスの採用、適切な庇の設置による日射遮蔽など、断熱性能を確保する対策が必須です。高性能な窓サッシを採用することで、開放的な視界を確保しながらも、冷暖房効率を維持し、ランニングコストを抑えることができます。

採光計画においては直射日光をそのまま室内に取り込むのではなく、「光をコントロールする」という視点が重要です。モダンリゾートなデザインでは、深い庇や格子、ルーバーなどを活用して、光の入り方を調整します。これにより、時間帯や季節によって変化する光と影のパターンが生まれ、同じ空間でありながら常に新しい表情を見せる演出が可能になります。医療施設の待合室にこの手法を取り入れれば、患者が待ち時間を苦痛に感じにくくなり、クレーム減少にもつながります。

開放性を高める主要設計技術
技術要素 具体的手法 効果
構造計画 鉄骨造・RC造による耐力壁の最小化 大開口の実現、視界の連続性確保
窓サッシ 高性能Low-Eガラス、トリプルガラスの採用 断熱性能維持、ランニングコスト削減
庇・ルーバー 方位別の日射計算に基づく設置 眩しさ軽減、夏季の遮熱効果
天井高 2.7m以上の高さ設定、勾配天井の採用 心理的開放感の向上、空気循環の改善

また、開放性は水平方向だけでなく、垂直方向にも意識する必要があります。天井高を2.7メートル以上に設定するだけで、人が感じる空間の広がりは大きく変わります。さらに、吹き抜けや勾配天井を取り入れることで、視線が上方に誘導され、実際の床面積以上の開放感を生み出すことができます。商業施設のエントランスに吹き抜けを配置すれば、訪れた顧客に強い印象を与え、施設全体のブランド価値を高める効果があります。

事例紹介:住宅リノベーション T-house(兵庫県姫路市)

住宅リノベーション T-house(兵庫県姫路市)
」の事例を用いて、前章で解説した“開放性と非日常性の共存”を実際の住宅空間でどのように実現しているかを見ていきましょう。

■ プロジェクトの要点

  • コンセプト:社屋オフィスを住宅へとリノベーションし、非日常の開放感を日常生活に取り込む。
  • 構造計画:既存の躯体を活かしつつ吹き抜けを新設し、上下階をつなぐ縦方向の視線の抜けを確保。
  • 空間構成:リビング・ダイニング・ゴルフルームを連続的に配置し、アクティビティが自然につながる設計。
  • 素材と照明:グレーを基調とした落ち着いた色彩に、間接照明とガラスパーティションを組み合わせ、ホテルライクな“モダンリゾート”を演出。
  • 付帯棟:敷地内に離れのシミュレーションゴルフ棟を新設し、趣味と暮らしを融合した「余白のある生活空間」を実現。
「用・強・美」で見る価値
用(機能性) 吹き抜けを中心に自然採光と通風を取り込み、家全体に心地よい明るさと空気の流れを形成。
強(構造・耐久性) 既存構造を補強しながら新たな開口部を追加し、開放感と耐震性の両立を実現。
美(美観) 直線的な構造美とガラスの透明感を活かしたミニマルデザインで、非日常的な静けさと上質感を演出。

住宅でありながら、まるでリゾートラウンジのような開放感を実現したT-houseは、モダンリゾートデザインの本質――「非日常を日常に溶け込ませる」建築思想を体現しています。
家族が集い、趣味を楽しみ、自然光の移ろいを感じながら暮らす空間は、建築そのものがライフスタイルを再定義する好例と言えるでしょう。

住宅から商業施設まで広がるモダンリゾートなデザインの応用

モダンリゾートなデザインは、今や住宅だけでなく商業施設・医療施設・宿泊施設など、幅広い建築分野で応用されています。それぞれの用途において、モダンリゾートなデザインが生み出す価値は異なりますが、共通するのは「利用者の感情に働きかけ、行動を変容させる」という効果です。

高級住宅における導入効果とブランド価値

高級住宅市場において、モダンリゾートなデザインは物件の差別化と資産価値向上に直結します。従来の高級住宅が「広さ」や「立地」で価値を競っていたのに対し、現代の富裕層は「そこで過ごす時間の質」を重視する傾向が強まっています。モダンリゾートなデザインの住宅は、この需要に的確に応え、住む人のライフスタイルそのものをブランド化する効果があります。

具体的な導入事例として、都心の高層マンション最上階に設計されたペントハウスでは、全面ガラス張りの外壁と、屋上に配置されたインフィニティプールにより、都市にいながらリゾート地にいるかのような体験を提供しています。このプロジェクトでは、構造設計において特殊な制振装置を採用し、高層階特有の揺れを最小限に抑えることで、大開口窓の安全性と快適性を両立させました。結果として、周辺相場の1.5倍以上の価格設定にもかかわらず、販売開始から2ヶ月で成約に至り、モダンリゾートなデザインの市場価値の高さが実証されました。

また、郊外の戸建て住宅においても、モダンリゾートなデザインは顕著な効果を発揮します。敷地面積が比較的広く取れる郊外では、建物と庭の一体設計により、リゾート感をさらに高めることができます。例えば、リビングから続くウッドデッキと、その先に配置されたプライベートガーデンを視覚的につなげることで、室内と屋外の境界を曖昧にし、敷地全体が一つの大きなリゾート空間として機能します。この手法は、限られた敷地でも視線の抜けを計画的に設計することで、実際の面積以上の広がりを感じさせる効果があります。

高級住宅におけるモダンリゾートなデザインの投資対効果
効果項目 従来型高級住宅 モダンリゾートなデザイン住宅
販売価格プレミアム 周辺相場+10-20% 周辺相場+30-50%
販売期間 6-12ヶ月 2-4ヶ月
資産価値の維持率(10年後) 70-80% 85-95%
購入者の満足度 標準的 非常に高い(リピーター・紹介率向上)

さらに、モダンリゾートなデザインの住宅は、転売時の資産価値が高く維持される傾向があります。これは、デザインの普遍性と、経年変化を「味わい」として楽しめる素材選定によるものです。特に、天然木材や石材を適切にメンテナンスすることで、築10年・20年後も新築時と変わらない、あるいはそれ以上の魅力を持つ住宅として評価されます。デベロッパーにとっては、初期投資は増えるものの、販売価格の上乗せと早期完売により、投資回収期間を短縮できるメリットがあります。

まとめ

この記事では、モダンリゾートなデザインの設計思想から具体的な実現手法、そして住宅・商業施設における導入効果まで、幅広く解説してきました。モダンリゾートなデザインは、単なる見た目の美しさを追求するスタイルではなく、空間が生み出す心理的効果やビジネス価値までを設計する、戦略的な建築アプローチです。開放性と採光の最大化、自然素材と現代技術の融合、五感に訴える空間体験の創造により、日常に非日常の価値をもたらし、利用者の行動と感情を変容させる力を持っています。

経営者や施設オーナーにとって建築デザインへの投資は、単なるコストではなく、顧客満足度向上・ブランド価値構築・収益性改善を実現する戦略的投資です。モダンリゾートデザインは、その投資に対して明確なリターンをもたらす手法として、今後さらに注目が高まるでしょう。あなたのビジネスにおいても空間が持つ力を最大限に活用し、競合との差別化を実現することを願っています。

「商業建築の設計は、ただ美しい箱を作りだすためのプロセスであってはならない。」というのが、私達KTXの考え方です。

より大きなベネフィットを生む建築を創り出し、投資に見合う利益を還元するビジネスツールを我々は設計しています。建築設計からインテリアの空間デザイン、グラフィックに至るまで、あらゆるデザインを一貫してコントロールすることであなたのビジネスに強力な付加価値を生み出します。もし、建築設計についてお悩みなのであれば、是非一度我々にご相談ください。

KTXアーキラボでは、非日常を日常に変えるモダンリゾートなデザインをご提案しております。お気軽にお問い合わせください。

弊社の設計事例についてはコチラの作品集をご覧ください

2025.12.9


松本 哲哉

【この記事を書いた人 松本哲哉】

KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)

ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


【お問い合わせ先】

KTXアーキラボ一級建築士事務所

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飲食店・クリニック・物販店・美容院などの店舗デザイン・設計

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