店舗設計デザインの基本とは?集客につながる空間づくりの考え方を徹底解説

 
     
  • 公開日:2025/12/06
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  • 最終更新日:2025/12/08

店舗の売上を左右する最大の要素は、商品やサービスの品質だけではありません。顧客が足を踏み入れた瞬間に感じる空間の魅力、店内での快適な体験、そして記憶に残る印象――これらすべてを設計するのが店舗設計とデザインです。適切な設計は顧客体験を高め、リピーターを生み、結果的に収益を最大化します。

この記事では、店舗設計とデザインの基本から集客につながる空間づくりの考え方、業種別の具体的なポイントまでを体系的に解説します。

姫路市内の建築設計事例ワダスポーツのデザイン

店舗設計・デザインの基本

店舗設計とデザインとは、ブランドの世界観を空間に落とし込み、顧客の購買行動や滞在時間を最適化するための総合的なプロセスです。単なる内装の美しさではなく、ビジネス目標を達成するための戦略的な設計が求められます。ここでは店舗設計とデザインを構成する三つの基本要素を深掘りしていきます。

コンセプト設定とターゲット選定

店舗設計とデザインの出発点は、明確なコンセプト設定とターゲット層の絞り込みです。コンセプトとは「この店舗が提供する体験の核心」であり、すべてのデザイン要素に一貫性を持たせる軸となります。たとえば高級路線を狙うのであれば、素材選定から照明計画まですべてが上質さを演出する必要があります。逆にカジュアル路線であれば、親しみやすさやアクセスのしやすさを重視した設計が適切です。

ターゲット層の明確化も欠かせません。20代女性をメインターゲットとするアパレル店と40代男性ビジネスマンを想定したバーでは、求められる空間性はまったく異なります。ターゲットのライフスタイルや価値観、購買行動パターンをリサーチし、それに応じた空間設計を行うことで、ブランドイメージと顧客ニーズの最適な接点が生まれます。

顧客動線とレイアウトの基本

店舗内での顧客の動きをコントロールする「動線設計」は、売上に直結する重要な要素です。入口から奥へ、そしてレジへと自然に誘導される流れをつくることで、商品との接触機会が増え、購買率が向上します。一般的に顧客は入店後に右回りに進む傾向があるため、主力商品や目玉商品を右側の動線上に配置する手法が有効です。

ゾーニングもレイアウトプランの核心です。店舗全体をいくつかのエリアに分割し、それぞれに役割を持たせることで、空間の機能性と回遊性が高まります。たとえば飲食店であれば、入口付近にテイクアウトコーナー、中央に一般席、奥に個室やVIPスペースを配置するといった具合です。物販店では、高額商品を奥に配置し、手前には手に取りやすい低価格帯商品を並べることで、顧客の心理的ハードルを下げつつ、店内を深く回遊させる仕掛けが可能になります。

また通路幅の設定も見逃せません。狭すぎると窮屈で回遊性が下がり、広すぎると空間が間延びして商品密度が下がります。業種や客層に応じて、最適な通路幅とレイアウトプランを設計することが、快適な顧客体験と効率的な売場づくりを両立させる鍵です。

動線設計の基本パターン
動線タイプ 特徴 適した業種
直線動線 入口から奥へ一直線、シンプルで分かりやすい コンビニ、ファストフード
回遊動線 店内を一周する動線、商品接触率が高い アパレル、雑貨店
中央集中型 中央にレジや主力商品、周囲を回遊 書店、家電量販店

色彩・照明・素材でつくる雰囲気

空間の雰囲気を決定づけるのは、色彩計画、照明計画、そして素材選定の三要素です。これらは視覚・触覚・感覚すべてに働きかけ、ブランドの世界観を体現します。色彩は心理的な影響が大きく、暖色系は親しみやすさや食欲を刺激し、寒色系は落ち着きや清潔感を与えます。高級感を演出したい場合は黒やネイビー、ゴールドを基調とし、カジュアルな印象にはホワイトやベージュ、ナチュラルトーンが適しています。

照明計画は空間の印象を劇的に変える力を持ちます。全体照明(ベース照明)で基本的な明るさを確保しつつ、アクセント照明で商品やディスプレイを際立たせることで、視線誘導と演出効果を同時に実現できます。たとえば飲食店では、テーブル上にペンダントライトを配置することで料理が映え、SNS映えする写真が撮りやすくなります。一方、アパレル店では試着室の照明を工夫し、顧客が自分を魅力的に見せられる環境を整えることが重要です。

素材選定は、触感や質感を通じてブランドの価値を伝えます。無垢材や石材は高級感とぬくもりを、ステンレスやガラスはモダンで洗練された印象を与えます。また、メンテナンス性やコストも考慮しなければなりません。初期投資を抑えたい場合でも、顧客の目に触れる部分には質の高い素材を用い、バックヤードや見えない部分でコストを調整するといったメリハリが効果的です。

業種別の色彩・照明・素材の組み合わせ例
  • 高級レストラン:ダークトーン×間接照明×天然木・革素材
  • カフェ:ナチュラルトーン×温白色LED×無垢材・タイル
  • アパレル(ハイブランド):モノトーン×スポットライト×大理石・ガラス
  • 美容室:ホワイト×昼白色LED×鏡面素材・清潔感重視
美容院設計 店舗内装デザイン

集客につながる空間づくりの考え方

いかに優れた商品やサービスを提供していても、顧客が店舗に足を運ばなければ意味がありません。集客力を高めるには外観デザインから店内演出、さらにはデジタル戦略まで、複層的なアプローチが必要です。ここでは、集客につながる空間づくりの具体的な手法を解説します。

第一印象を決めるファサードと入口のデザイン

店舗の顔となるファサードデザインと入口は、通行人を顧客に変える最初の接点です。ファサードは遠くからでもブランドを認識できる視認性と、近づいたときに感じる魅力の両方を備える必要があります。看板デザインは特に重要で、ロゴ、色、フォント、照明の組み合わせによって、ターゲット層に「自分のための店だ」と感じさせることができます。

入口の設計も慎重に検討すべきポイントです。開放的なオープンエントランスは入店ハードルを下げ、通行人の視線を店内に誘導します。一方、重厚なドアや狭い入口は高級感や特別感を演出し、ターゲットを絞り込む効果があります。ガラス面を多用することで店内の様子を外から見せ、賑わい感や安心感を与える手法も有効です。

VMDとディスプレイで購買意欲を高める空間設計

店内に入った顧客の購買意欲を最大化するには、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の手法が不可欠です。VMDとは、視覚的な訴求によって商品価値を高め、購買行動を促進する技術です。

特に重要なのは「アイキャッチポイント」の設定です。入店直後の視線が集まる位置に、季節商品や推奨商品を配置することで、顧客の関心を一気に引き寄せます。また、商品を単体で見せるのではなく、ライフスタイル全体を提案するコーディネート陳列が効果的です。たとえばアパレル店であれば、トップス・ボトムス・小物をセットで展示し、「この組み合わせで買いたい」と思わせる演出が購買単価の向上につながります。

物販店では、商品の回転率や利益率に応じた配置戦略も重要です。利益率の高い商品を視線の集まる中段に、回転率の高い定番商品を手に取りやすい下段に配置するなど、売上構造を意識したレイアウトプランが求められます。

VMDの基本原則
  • PP(ポイントプレゼンテーション):商品カテゴリーごとの訴求ポイント
  • IP(アイテムプレゼンテーション):個別商品の魅力を伝える陳列方法
  • カラーコーディネート:色の統一感でブランドイメージを強化
  • ストーリー性:商品に物語を持たせ、購買意欲を促す

デジタルサイネージとSNSによる来客の促進

現代の店舗はデジタル技術の活用が集客力を大きく左右します。デジタルサイネージは、動画やアニメーションで情報を発信し、静的な看板よりも注目を集めやすい利点があります。店頭に設置すれば通行人へのアピール力が増し、店内に配置すれば商品情報やキャンペーン告知をリアルタイムで更新できます。

SNS映えする空間設計も、集客戦略の重要な柱です。特にInstagramやTikTokなどビジュアル重視のプラットフォームでは、顧客自身が撮影・投稿したくなる「フォトスポット」の設置が有効です。たとえばネオンサインやアート作品、特徴的な壁面デザインを配置し、ハッシュタグを促すPOPを添えることで、顧客が自発的にブランドの宣伝役となってくれます。

また、店内イベントの開催もSNSと相性が良く、限定商品の発売日や季節イベント、インフルエンサーとのコラボレーションなどを企画することで、来店動機を創出できます。イベントスペースを常設して柔軟にレイアウト変更できる設計にしておくことで、話題性と集客力を持続的に生み出す仕組みが完成します。デジタルとリアルを融合させた体験設計こそが、次世代の店舗集客の鍵なのです。

コト売り体験型店舗デザイン

業種別に見る店舗設計とデザインのポイント

店舗設計・デザインの基本原則は共通していますが、業種ごとに求められる空間性や機能は大きく異なります。飲食店では回転率と居心地のバランス、物販店では商品の見せ方と回遊性、サービス業ではプライバシーと信頼感の演出がそれぞれ重視されます。ここでは代表的な業種について、具体的な設計のコツと集客ポイントを解説します。

飲食店の設計ポイント|動線と空間づくりで快適性を高める

飲食店の設計では、顧客の快適性とオペレーション効率の両立が重要です。厨房、客席、トイレの位置関係は売上と満足度に影響します。オープンキッチンは調理過程を見せ、顧客の期待を高めますが、高級レストランでは厨房を隠し静かな空間を提供します。

席配置はビジネスモデルに応じた工夫が必要です。回転率重視のファストフードやカフェではカウンター席や小さなテーブルを、レストランでは広めの間隔でテーブルを配置し、快適な空間を確保します。個室やセミプライベート空間は高単価利用を取り込む手段となります。

照明や音響も重要で、温かみのある照明は料理を美味しそうに見せ、BGMは会話に適した音量に調整します。また、換気・空調・清潔感の維持はリピーター獲得のための基盤です。

飲食店の席配置パターンと適性
席タイプ メリット 適した業態
カウンター席 一人客の利用促進、回転率向上 ラーメン店、バー、寿司店
テーブル席 グループ利用、滞在時間の調整 カフェ、ファミリーレストラン
ボックス席 プライバシー確保、落ち着いた雰囲気 居酒屋、焼肉店
個室 高単価利用、特別感の演出 懐石料理、高級レストラン

物販店の設計ポイント|レイアウトと演出で購買を促す

物販店では、商品との接触機会を増やすレイアウトが重要です。入口付近には季節商品や新商品を配置し、顧客の関心を引きます。この「マグネットゾーン」の効果により、店内への誘導率が高まります。

商品カテゴリーごとのゾーニングも重要です。関連商品を近くに配置する「クロスセル配置」で購買点数を増やせます。例えば、靴売り場近くに靴下やシューケア用品を配置するなどの工夫が有効です。また、高額商品と低額商品を混在させることで、顧客に選択肢を提供します。

試着室やフィッティングスペースの設計は重要で、清潔で使いやすくプライバシーが保たれる空間にすることが必須です。照明を工夫して、顧客が魅力的に見える環境を作り、購買決定を後押しします。レジ周辺には小物やギフト商品を配置し、追加購買を促します。

事例紹介:買物本来の楽しみを喚起するスーパーマーケット(The Marketrium)

弊社が手がけた ヤマダストアー新青山店(The Marketrium)は、兵庫県姫路市に位置するスーパーマーケットです。既存店舗を建て替えるプロジェクトとして始まり、「日常の買い物をもっと楽しくする」ことをテーマに設計されました。

■ プロジェクトの要点

  • コンセプト:ヨーロッパの屋外マルシェのように、「買い回る楽しさ」を感じられるスーパーマーケット体験を再現
  • 空間構成:店内中央に大きな吹抜け広場を設け、周囲を店舗空間が囲む構成とすることで、光と開放感に満ちた回遊性を創出
  • 素材と演出:内外壁には同一素材(ケイミュー・ソリド)を使用し、屋内外の境界を曖昧にし、自然光が差し込む開放的な空間を演出
  • 設備計画:TOPPAN LCマジックによる自動調光システムを採用し、直射日光による商品の劣化を防止
  • 連携体制:弊社が建築デザインとインテリアを担当し、構造・設備設計は他社と協業し高いデザイン性と実用性を両立
「用・強・美」で見る価値
用(機能性) 吹抜け広場の自然光と回遊性のある動線が、買い物の楽しさと利便性を両立日常の購買行動を心地よい体験へと昇華
強(構造・耐久性) 既存店舗を全面改築し、地域に長く愛されるスーパーマーケットとしての耐久性と運営効率を確保
美(美観) 内外一体の素材選定と吹抜けの光演出により、屋外マルシェのような開放感と地域のランドマークとなる美しさを実現

この事例は、「物販店の設計ポイント」で述べる回遊性・照明・素材の選定がどのように実空間で展開されるかを示す好例です。単なる購買施設ではなく、「滞在したくなる空間」としての設計が、結果的に集客力とブランド体験の向上につながっています。

まとめ

この記事では、店舗設計とデザインの基本から集客につながる空間づくりの考え方、そして業種別の具体的なポイントまで詳しく解説しました。コンセプト設定、動線設計、色彩・照明・素材の選定といった基本要素を押さえたうえで、ファサードやVMD、デジタル戦略を駆使することで、顧客体験を最大化し、収益向上につながる店舗が実現します。

「商業建築の設計は、ただ美しい箱を作りだすためのプロセスであってはならない。」というのが、私達KTXの考え方です。

より大きなベネフィットを生む建築を創り出し、投資に見合う利益を還元するビジネスツールを我々は設計しています。建築設計からインテリアの空間デザイン、グラフィックに至るまで、あらゆるデザインを一貫してコントロールすることであなたのビジネスに強力な付加価値を生み出します。もし、建築設計についてお悩みなのであれば、是非一度我々にご相談ください。

KTXアーキラボでは、集客につながる空間を作り出す店舗設計デザインをご提案しております。お気軽にお問い合わせください。

弊社の設計事例についてはコチラの作品集をご覧ください

2025.12.6


松本 哲哉

【この記事を書いた人 松本哲哉】

KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)

ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


【お問い合わせ先】

KTXアーキラボ一級建築士事務所

東京都港区南麻布3-4-5 エスセナーリオ南麻布002

兵庫県姫路市船丘町298-2 日新ビル2F

事業内容

飲食店・クリニック・物販店・美容院などの店舗デザイン・設計

建築・内装工事施工

メール:kentixx@ktx.space

電話番号:03-4400-4529(代表)

ウェブサイト:https://ktx.space/


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