結婚式場の内装デザインで差をつける|“記憶に残る空間”をつくる建築設計とは

 
     
  • 公開日:2025/12/04
  •  
  • 最終更新日:2025/12/04

結婚式場の競争が激化する中、差別化の鍵を握るのは「内装デザイン」です。SNSで拡散されるような美しさだけではなく、新郎新婦とゲスト全員の心に刻まれる”記憶に残る空間”をつくることが、選ばれ続ける結婚式場には求められています。そのためには、表面的な装飾ではなく、建築設計の段階から緻密に計算された空間デザインが不可欠です。

この記事では、結婚式場の内装デザインで差をつけるために必要な建築設計の考え方と具体的な手法について解説します。

結婚式場チャペル内装デザイン

コンセプトと動線で差がつく結婚式場の内装デザイン

結婚式場の内装デザインにおいて重要なのは、「誰に、どんな体験を提供するのか」という明確なコンセプトを持つことです。競合との差別化を図るためには、会場全体の設計思想を一貫させ、動線やゾーニングを含めたトータルな空間設計が求められます。ここでは、結婚式場の内装デザインで差をつけるための基本的な設計について、会場コンセプトの構築方法とゲスト体験を最適化する動線設計の両面から詳しく解説します。

会場コンセプトを軸にした空間設計

結婚式場の内装デザインを成功させるには、会場全体を貫く明確なコンセプトが必要です。単なる「おしゃれ」や「高級感」といった抽象的なイメージではなく、ターゲットとなる顧客層のライフスタイルや価値観に深く根ざしたコンセプトを設定することで、他の式場との差別化が可能になります。たとえば都市型ホテルウェディングであれば洗練されたモダンデザイン、リゾートウェディングであれば自然の要素を取り入れたナチュラルデザイン、、和モダンをテーマにした式場であれば伝統と現代性の融合といった具合に、コンセプトが明確であればあるほど、空間設計の方向性も定まりやすくなります。

実際の空間設計においては、チャペル設計やバンケットルーム、ロビー、控室に至るまで、すべてのエリアがコンセプトに基づいて統一されている必要があります。たとえば、「モダンで洗練された空間」がコンセプトであれば、チャペルにはクリーンなラインとガラスを多用し、開放感のある空間設計が求められます。天井にはシンプルでスタイリッシュなライトを配し、フロアや家具もミニマルで現代的な素材を選ぶことで、全体的な統一感が生まれます。インテリアコーディネートにおいても、家具や装飾品の選定がコンセプトと矛盾しないよう注意が必要です。このような統一感が、結婚式場の内装デザインにおいて「記憶に残る空間」を生み出す土台となります。

さらに、地域性を活かしたオリジナルウェディングの提案も、コンセプト設計において有効です。地元のアートやデザインのエッセンスを取り入れることで、地域性を反映し、他にはない独自性を持った空間を創り出すことができます。こうしたコンセプトの深化は、単なる見た目の美しさを超えて、新郎新婦とゲストの心に響くストーリー性を持った空間を実現します。

動線とゾーニングでゲスト体験を最適化

結婚式場の内装デザインにおいて、見た目の美しさと同じくらい重要なのが動線設計です。新郎新婦とゲストが会場内をどのように移動し、どこでどのような時間を過ごすのか、その流れを緻密に計画することが、快適で印象的な体験につながります。動線が複雑だったり、待ち時間が長くなったりすると、どれほど美しい空間でもゲストの満足度は低下します。逆に、スムーズでストレスのない動線設計は、空間演出の質を高め、結婚式場全体の評価を向上させる要因となります。

ゾーニング設計では、会場を機能ごとに明確に区分し、それぞれのエリアが持つ役割を最大化することが求められます。たとえば、ゲストが最初に訪れるウェルカムスペースは、期待感を高めるための演出が必要です。ここでは照明デザインやインテリアコーディネートを工夫し、フォトスポットとしても機能するような空間を設計します。次に、挙式を行うチャペルやバンケットルームへの移動は、自然な流れで誘導できるよう動線を設計し、廊下や階段といった移動空間にも演出の余地を残します。また、控室やトイレといったバックヤードエリアも、ゲストの動線と干渉しないよう配置することで、全体の快適性が向上します。

動線設計で考慮すべき主なポイント
  • ゲストの到着から退場までの一連の流れを時間軸で整理
  • 新郎新婦とゲストの動線を分離し、サプライズ演出の余地を確保
  • 高齢者や車椅子利用者にも配慮したバリアフリー動線の確保
  • 混雑が予想されるエリアでの滞留スペースの確保
  • スタッフ動線とゲスト動線の交錯を最小限に抑える配置

動線とゾーニングの最適化は、結婚式場の内装デザインにおいて目に見えにくい要素ですが、ゲスト体験の質を決定づける重要なファクターです。建築設計の段階からこれらを綿密に計画することで、後からの変更や調整を最小限に抑え、運営効率の向上にも寄与します。結果として、新郎新婦とゲスト双方が心地よく過ごせる空間が実現し、リピーターや口コミによる集客力の向上にもつながります。

照明と素材で”記憶に残る空間”をつくるには?

結婚式場の内装デザインにおいて、空間の印象を最も強く左右する要素が照明と素材です。光の演出は時間の流れや感情の変化を視覚的に表現し、素材の質感と色は空間全体のトーンを決定します。これらを戦略的に選び、組み合わせることで、ゲストの記憶に深く刻まれる空間を創り出すことができます。ここでは、照明デザインと素材選定のそれぞれについて、建築設計の視点から具体的な手法を解説します。

光の演出で時間と感情をつくる

照明デザインは、結婚式場の内装デザインにおいて劇的な効果を生み出す要素の一つです。自然光と人工照明を適切に組み合わせることで、時間帯や演出シーンに応じた多彩な表情を空間に与えることができます。特にチャペル設計では、天井照明や壁面デザインと連動させた光の演出が、挙式の神聖さや感動を増幅させる重要な役割を果たします。昼間の挙式では大きな窓から差し込む自然光を活かし、夕方や夜の挙式ではシャンデリアやスポットライトを用いた演出で非日常的な雰囲気を創り出します。

照明計画においては、全体照明、アクセント照明、演出照明の3層構造で考えることが基本です。全体照明はゲスト全員が快適に過ごせる基礎的な明るさを確保し、アクセント照明は空間の特定部分を際立たせることで視線を誘導します。演出照明は、入場シーンやケーキカット、キャンドルサービスといったハイライトシーンで使用し、劇的な効果を生み出します。これらを建築設計の段階から組み込むことで、後付けの照明設備では実現できない、空間と一体化した照明演出が可能になります。

照明デザインの種類と役割
照明の種類 主な役割 設置場所の例
全体照明 空間全体の基礎的な明るさを確保 天井埋込型ダウンライト、間接照明
アクセント照明 特定の場所や装飾を際立たせる スポットライト、ウォールウォッシャー
演出照明 シーンごとの劇的効果を生み出す カラー変換可能なLED、ムービングライト

さらに、調光システムや色温度の調整機能を導入することで、同じ空間でも時間帯や演出内容に応じて全く異なる表情を見せることができます。たとえば、挙式中は温かみのある電球色で厳かな雰囲気を演出し、披露宴では明るい昼白色で華やかさを強調し、エンディングでは青みがかった照明で幻想的な雰囲気を創り出すといった具合です。このような光による時間と感情のコントロールは、ゲストの記憶に深く残る体験を生み出します。

事例紹介:光の演出と構造技術の統合による非日常空間(CLOUD OF LUSTER CHAPEL)

CLOUD OF LUSTER CHAPEL の事例は、光の演出とシームレスな空間デザインが、いかに記憶に残る非日常的な体験を生み出すかを示しています 。

姫路市内の建築設計事例チャペル建築デザイン

■ プロジェクトの要点

  • コンセプト:水盤に浮かぶ「雲」をイメージし、新郎新婦にとって特別な日をより特別な日にする非日常的な風景を追求
  • 空間演出:床面に透明なガラスビーズを樹脂で固めた素材を採用し、日差しによって水盤のようにキラキラと光る演出を実現
  • 機能統合:天井に一切の設備を配置せず、照明や空調吹出口は全て床面に設置することで、空間を覆う雲を淀みのないものにした
  • コスト戦略:特殊な曲面デザインの制作コストを抑えるため、曲面ガラス、ステンレスサッシなどの軌跡の半径を2500ミリに規格化
「用・強・美」で見る価値
用(機能性) 設備の床面集約により、視覚的ノイズを排除しつつ、挙式に集中できる快適な環境を確保 。
強(構造・耐久性) 曲面の半径を規格化することで製作精度と施工性を両立し、特殊な形態にもかかわらずコストを最適化 。
美(美観) 雲形の連続曲面と水面のような床が包まれるような空間体験を生み、非日常性と記憶に残る象徴性を実現.

素材の質感と色で印象を強める

結婚式場の内装デザインにおいて、素材選定は空間の品質と印象を決定づける重要な要素です。床、壁、天井、家具に至るまで、使用する素材の質感と色が統一されていることで、空間全体に一貫性と高級感が生まれます。特に現代的な素材を効果的に取り入れることで、洗練された空間を実現できます。例えば、コンクリート、ガラス、金属といった素材を組み合わせる際には、それぞれの特性を理解し、バランスを取ることが求められます。

たとえば、チャペルやバンケットルームの壁面デザインには、滑らかな塗り壁や高品質な金属パネルを使用することで、視覚的な深みと触覚的な心地よさを与えることができます。床材には大理石やポリッシュドコンクリートを選定し、歩行時の音や足触りにも配慮します。また、天井には間接照明を仕込むための懐を設けたり、吸音材を兼ねた素材を使用したりすることで、機能性とデザイン性を両立させます。インテリアコーディネートでは、カーテンやクロス、椅子の張地といったファブリック類も、全体のカラースキームに合わせて慎重に選定します。

色の選定においては、心理的効果を考慮することが重要です。白やベージュといったニュートラルカラーは清潔感と上品さを演出し、どんな装花やドレスにも調和します。一方で、ゴールドやシルバーといったアクセントカラーを効果的に用いることで、空間に華やかさと非日常性を加えることができます。モダンデザインをテーマとした式場では、ブラックやグレーといった落ち着いた色調に、シルバーやガラス素材をアクセントとして取り入れることで、洗練された現代的な雰囲気を創り出します。

素材選定で考慮すべきポイント
  • 視覚的な美しさだけでなく、触覚や音響特性も考慮
  • メンテナンス性と耐久性を踏まえた実用的な素材選定
  • 環境配慮型のアップサイクル素材や地域性を活かした素材の活用
  • 照明との相互作用を考慮した質感と色の選定
  • 季節やトレンドに左右されにくい普遍的な美しさの追求

素材の質感と色の選定は、結婚式場の内装デザインにおいて長期的な価値を生み出す投資です。流行に左右されず、時間が経っても色褪せない普遍的な美しさを持つ素材を選ぶことで、リニューアル事例においても最小限の改修で新鮮さを保つことができます。建築設計の段階から素材選定に十分な時間と予算を割くことが、結果として記憶に残る空間を創り出す鍵となります。

結婚式場の内装デザインで差をつける設備と可変性の設計

結婚式場の内装デザインにおいて、美しさと並んで重要なのが機能性です。特に音響設備や映像設備は、挙式や披露宴の演出を支える基盤となり、その質が全体の満足度を大きく左右します。また、多様化する結婚式のスタイルに対応するため、空間の可変性とフレキシビリティを設計段階から組み込むことが、長期的な競争力を維持するために不可欠です。ここでは、技術設計と可変性の両面から、結婚式場の内装デザインで差をつける設備設計について解説します。

音響と映像で演出を支える技術設計

結婚式場において、音響設備は感動的なシーンを演出するための重要なツールです。新郎新婦の入場曲、誓いの言葉、スピーチ、BGMといった音の要素が適切に届けられることで、空間全体の一体感と感動が生まれます。しかし、音響設計は建築設計と密接に関連しており、後から設備を追加するだけでは理想的な音環境を実現することは困難です。

特にチャペルのような残響が重要な空間では、適切な残響時間を確保しつつ音のクリアさを損なわないバランスが必要です。壁面デザインに吸音パネルを組み込んだり、天井に反射板を設置したりすることで、自然で美しい音響環境を実現できます。一方バンケットルームでは、マイクやスピーカーの配置、音量調整が容易なシステムを導入してスピーチやBGMが会場全体に均等に届くよう設計します。また、生演奏やライブパフォーマンスにも対応できるよう、ステージエリアや電源設備を事前に確保しておくことも重要です。

映像設備も、現代の結婚式場には欠かせない要素です。プロフィールムービーやエンドロール、オープニングムービーといった映像演出は、ゲストの感情を大きく動かすハイライトシーンとなります。大型スクリーンやプロジェクター、LED壁面といった映像機器を建築設計の段階から組み込むことで、配線やメンテナンススペースを適切に確保し、美観を損なわないスマートな設置が可能になります。さらに、4K映像やライブ配信にも対応できる通信インフラを整備することで、遠方のゲストもリアルタイムで式に参加できる環境を提供できます。

音響・映像設備で考慮すべき技術要素
設備カテゴリ 主な機能 設計上の配慮点
音響設備 BGM、マイク、生演奏のサポート 吸音・反射のバランス、スピーカー配置
映像設備 ムービー上映、ライブ配信 スクリーン位置、配線の隠蔽、照明との連動
照明設備 演出照明、調光システム 制御システムの統合、メンテナンス性

音響と映像の技術設計は、結婚式場の内装デザインにおいて演出の質を根底から支える要素です。これらを建築設計と統合することで、目に見えない部分で圧倒的な差別化を実現し、新郎新婦とゲストに忘れられない体験を提供できます。

可変性とフレキシビリティで多様な式に対応

結婚式のスタイルは年々多様化しており、従来の定型的な挙式・披露宴だけでなく、少人数のカジュアルウェディング、ガーデンウェディング、オリジナルウェディングといったニーズが増加しています。このような多様なニーズに対応するためには、空間の可変性とフレキシビリティを建築設計の段階から組み込むことが不可欠です。固定された空間では、時代の変化や顧客の要望に柔軟に対応できず、競争力を失うリスクがあります。

可変性を持たせる代表的な手法として、移動可能な家具の活用があります。大きなバンケットルームを可動間仕切りで複数の小空間に分割できるようにすることで、少人数から大人数まで対応可能な会場を実現できます。また、テーブルや椅子、ステージといった家具や設備を簡単に移動・配置変更できるよう、床に固定金具を埋め込んだり、キャスター付きの家具を採用したりすることで、レイアウトの自由度が大幅に向上します。

さらに、屋内と屋外をシームレスにつなぐ設計も、ガーデンウェディングやアウトドア演出に対応するために有効です。大きな開口部やテラス、ウッドデッキを設けることで、天候や季節に応じて屋内外を使い分けることができ、多彩な演出が可能になります。ランドスケープデザインと連携して、庭園や植栽を会場の一部として取り込むことで、自然と建築が調和した唯一無二の空間を創り出すことができます。

可変性を高める設計手法の例
  • 移動可能な家具やステージの導入
  • 床や天井への設備固定用レールの設置
  • 屋内外をつなぐ大開口部やテラスの設計
  • 照明や音響設備の配線を複数ゾーンに対応させる
  • 季節やイベントに応じた装飾変更が容易な壁面デザイン

こうした可変性とフレキシビリティは、結婚式場の内装デザインにおいて長期的な投資価値を生み出します。新しいトレンドや顧客ニーズの変化に対して、大規模なリニューアル事例を必要とせずに柔軟に対応できるため、運営コストの削減と収益性の向上に直結します。また、オリジナルウェディングやパーソナライズされた演出を求める顧客にとって、自由度の高い空間は大きな魅力となり、口コミやSNSでの拡散を通じて新たな顧客獲得にもつながります。

まとめ

この記事では、結婚式場の内装デザインで差をつけるために必要な建築設計の視点と具体的な手法について解説しました。会場コンセプトを軸にした空間設計、動線とゾーニングの最適化、照明と素材の戦略的選定、そして音響・映像設備と可変性を組み込んだ技術設計まで、あらゆる要素を統合することで、”記憶に残る空間”を実現できるでしょう。

「商業建築の設計は、ただ美しい箱を作りだすためのプロセスであってはならない。」というのが、私達KTXの考え方です。

より大きなベネフィットを生む建築を創り出し、投資に見合う利益を還元するビジネスツールを我々は設計しています。建築設計からインテリアの空間デザイン、グラフィックに至るまで、あらゆるデザインを一貫してコントロールすることであなたのビジネスに強力な付加価値を生み出します。もし、建築設計についてお悩みなのであれば、是非一度我々にご相談ください。

KTXアーキラボでは、記憶に残る空間を生み出す、結婚式場の内装デザインをご提案しております。お気軽にお問い合わせください。

弊社の設計事例についてはコチラの作品集をご覧ください

2025.12.4


松本 哲哉

【この記事を書いた人 松本哲哉】

KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)

ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


【お問い合わせ先】

KTXアーキラボ一級建築士事務所

東京都港区南麻布3-4-5 エスセナーリオ南麻布002

兵庫県姫路市船丘町298-2 日新ビル2F

事業内容

飲食店・クリニック・物販店・美容院などの店舗デザイン・設計

建築・内装工事施工

メール:kentixx@ktx.space

電話番号:03-4400-4529(代表)

ウェブサイト:https://ktx.space/


【関連記事リンク】

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。