【2025年最新版】クリニック設計のポイントとデザインの重要性を徹底解説

 
     
  • 公開日:2025/11/10
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  • 最終更新日:2025/11/20

クリニック設計は、単なる医療施設の建設ではなく、患者の治療体験と医療スタッフの働きやすさを同時に実現する総合的なデザインプロジェクトです。患者の心理的負担を軽減し、効率的な医療サービス提供を支える空間づくりが、現代のクリニック設計に求められています。

この記事では、クリニック設計における重要なポイントとデザインの役割について詳しく解説します。

クリニック設計の基本理念と患者体験向上への取り組み

現代のクリニック設計は、医療機能の確保だけでなく、患者の心理的安心感と治療への意欲を高める空間づくりが重要視されています。患者体験向上デザインは、医療の質向上に直結する要素として位置づけられており、設計段階から綿密に計画される必要があります。

患者中心の空間設計とプライバシー配慮レイアウト

患者中心の空間設計では、来院から診察、会計まで一連の流れを通して、患者が感じるストレスを最小限に抑える環境づくりが求められます。プライバシー配慮レイアウトは、特にデリケートな診療科目において重要な要素となり、音響設計や視線の遮蔽、個別相談スペースの確保など、多角的なアプローチが必要です。

美容クリニックなどでは、他の患者との接触を避けたいという心理的ニーズに配慮し、完全個室待合や専用動線の設計が採用されています。受付から診察室まで他の患者と顔を合わせることなく移動できる設計は、患者満足度の向上に寄与するはずです。実際に、NHO(国立病院機構)の患者満足度調査結果(https://www.soumu.go.jp/main_content/000981859.pdf)では、プライバシーを重視したクリニックは、そうでないクリニックよりも10%ほど満足度が高いというデータも出ています。また、カウンセリングルームでは防音性能を高め、相談内容が外部に漏れない環境を整備することで、患者の安心感を醸成します。

さらに、クリニック内装においては色彩心理学を活用し、不安を和らげる暖色系の配色や、清潔感を表現する白を基調とした色彩計画が採用されます。照明計画では、自然光に近い色温度の照明を使用し、患者の生体リズムに配慮した環境を創出します。

事例紹介:MidLight Runway ~光のランウェイを歩く美容クリニック~

プライバシー配慮と非日常的な空間演出を両立させた「MidLight Runway」の事例を用いて、患者中心の空間設計について詳しく見ていきましょう。
MidLight Runway ~光のランウェイを歩く美容クリニック~

コト売り体験型店舗デザイン

■ プロジェクトの要点

  • 立地と課題:夙川に位置する美容クリニックで、限られたスペースでの患者プライバシー確保が最重要課題。
  • 動線計画:エントランスから真っ直ぐメイン通路を確保し、両サイドに診察室や待合ブースを配置する明快なレイアウト。
  • 光の演出:通路両サイドのステンレス列柱パネルが発光し、鏡面天井により天井高さ3.1mが視覚的に6.2mの光のラインとして垂直方向に伸びる設計。
  • 心理的効果:通路奥の全面鏡張りの壁面が、ランウェイを歩く自分の姿を映し出し、美への期待感を高揚させる演出。
  • 空間の開放感:カウンセリングルーム兼待合ブースは庭園に面したガラス張りで、屋外空間との一体感により狭さを感じさせない工夫。
患者体験向上の3つの視点
プライバシー確保 ステンレス列柱の間から各室へアクセスする設計により、他の患者との視線交差を最小限に抑制。
心理的演出 光のランウェイという非日常的な空間体験が、治療への前向きな期待感と自己肯定感を醸成。
機能的効率性 中央通路を軸とした明快な動線計画により、限られた面積でも効率的な診療オペレーションを実現。

医療機能性とデザイン性を両立させる設計思想

医療施設として求められる機能性と、患者に安心感を与えるデザイン性の両立は、クリニック設計における最大の課題の一つです。医療機器の配置や感染症対策、清掃のしやすさといった実用面と、居心地の良さや美的満足度を同時に実現する必要があります。

機能性を重視した設計では、医療機器の導入・更新を見越した電源・配管計画、効率的な清掃を可能にする仕上げ材の選定、緊急時の避難経路確保などが基本となります。一方で、デザイン性の向上には、洗練された色彩計画と計算された照明デザインによる心地よい空間演出や、アート作品の設置による心理的効果が重要な役割を果たします。

最新のクリニック設計では、光のデザインを空間演出の中心に据えた近未来的なアプローチが注目されています。導光板などの先進的な照明技術を活用し、光そのものをデザインモチーフとすることで、高度な医療技術への信頼感と期待値を高める効果が期待できます。また、受付システムの電子化により、受付レイアウトもよりシンプルで開放的なデザインが可能なのです。

効率的な動線設計とスタッフ動線効率化の実践

クリニックの運営効率と患者満足度を左右する重要な要素が動線設計です。患者、医療スタッフ、物流の3つの動線を適切に分離・統合することで、スムーズな診療業務と快適な患者体験を実現します。狭小地クリニック設計では、限られた面積を最大限に活用した動線計画が特に重要となります。

患者・スタッフ・物流動線の最適化手法

効率的な動線設計では、まず患者動線の明確化が重要です。入口から受付、待合室、診察室、会計、薬局までの一方向の流れを基本とし、逆流や交差を最小限に抑えます。スタッフ動線効率化では、診察室間の移動距離短縮、カルテ室や処置室への迅速なアクセス、清掃・消毒作業の効率化を考慮した配置計画が必要です。

物流動線では、医療材料の搬入・保管・配布の効率化を図り、診療に必要な物品が迅速に供給される仕組みを構築します。バックヤード機能の充実により、患者エリアから見えない位置で物流業務を完結させ、清潔で整然とした診療環境を維持します。

現代のクリニック設計では、電子カルテシステムの導入を前提とした設計が一般的となっており、各診察室やナースステーションでの情報アクセスを考慮したIT配線計画が重要です。また、感染症対策として、発熱患者専用の動線確保や、一般患者との接触を避ける設計配慮も必要不可欠となっています。

バリアフリー設計と車椅子対応レイアウト

バリアフリー設計は、法的要求事項であると同時に、すべての患者が安心して来院できる環境づくりの基本です。車椅子対応レイアウトでは、通路幅の確保、段差の解消、適切な手すりの設置、車椅子対応トイレの配置などが重要な要素となります。

高齢者や身体障害者の利用を考慮した設計では、入口のアプローチから診察室内まで一貫してバリアフリー化を図ります。エレベーターの設置、スロープの適切な勾配設定、滑り止め材料の使用など、安全性と使いやすさを両立させた設計が重要です。また、視覚障害者への配慮として、点字サインの設置や音声案内システムの導入も検討されます。

診察室設計においては、車椅子でのアクセスを考慮した診察台の高さ調整機能、十分な回転スペースの確保、介助者同伴時の待機スペース設置などが重要です。ユニバーサルデザインの思想に基づき、特別な配慮を必要とする患者だけでなく、すべての利用者にとって使いやすい空間づくりを目指します。

各エリア別設計のポイントと最新デザイントレンド

クリニックの各エリアは、それぞれ異なる機能と役割を持ち、エリア特性に応じた専門的な設計アプローチが必要です。最新のデザイントレンドを取り入れながら、医療機能との調和を図ることで、患者にとって快適で、スタッフにとって効率的な空間を創出します。

待合室デザインと受付レイアウトの最適化

待合室は患者が最初に接触するクリニックの顔であり、第一印象を決定する重要な空間です。待合室デザインでは、適切な座席配置、プライバシーの確保、リラックスできる環境づくりが重要な要素となります。受付レイアウトは、効率的な業務遂行と患者対応の質向上を両立させる必要があります。

現代の待合室デザインでは、従来の病院的な雰囲気を脱却し、ホテルのロビーやカフェのような居心地の良い空間づくりが トレンドとなっています。座席配置では、個人のプライバシーを重視した一人掛けソファの採用、家族連れに配慮したソファ席の設置、車椅子利用者のためのスペース確保など、多様なニーズに対応した配置計画が実施されています。

照明計画では、間接照明を多用した柔らかな光環境により、患者の緊張を和らげる効果を狙います。自然光の導入も重要で、天窓や大型窓の設置により、開放感のある明るい空間を演出可能です。また、空調設備設計では、静音性と快適性を重視し、患者が長時間待機しても快適に過ごせる環境を整備します。

受付カウンターの設計では、患者との適切なコミュニケーションを促進するカウンター高さの設定、プライバシー保護のためのパーティション設置、車椅子利用者への対応を考慮した一部ローカウンターの設置などが重要です。電子カルテや予約システムの導入により、受付業務の効率化と患者サービスの向上を同時に実現しています。

クリニックデザイン 病院設計

診察室設計と収納スペース最適化の実践

診察室は医療行為の中核を担う空間であり、機能性と快適性の高度な両立が求められます。診察室設計では、医療機器の配置、患者とのコミュニケーション環境、感染症対策、プライバシー確保などの多面的な配慮が必要です。収納スペース最適化は、診療効率と空間の美観維持に直結する重要な要素です。

診察室内の家具配置では、医師と患者の適切な距離感を保ちながら、円滑なコミュニケーションを促進するレイアウトが重要です。診察台、医師用デスク、患者用椅子の配置バランスにより、診察の質と効率性を向上させます。また、付き添い者用の椅子配置も考慮し、家族同伴での診察に対応できる空間設計を行います。

収納計画では、医療機器、医薬品、カルテ、消耗品などの分類別収納を基本とし、使用頻度に応じた配置の最適化を図ります。壁面収納システムの活用により、限られた空間を有効活用し、必要な物品への迅速なアクセスを実現します。引き出し式収納、回転式収納、吊り下げ式収納など、多様な収納方式を組み合わせることで、機能性と美観を両立出来るのです。

感染症対策として、診察室間の適切な換気システム設置、清拭しやすい仕上げ材の選定、手指消毒設備の戦略的配置などが重要です。また、個室診察室では防音性能を高め、診察内容の機密性を確保します。最新の診察室設計では、テレメディシンに対応した設備配置も考慮され、遠隔診療の実施環境も整備されています。

医療法規制への対応と費用相場の実態

クリニック設計においては、医療法、建築基準法、消防法をはじめとする各種法規制への適切な対応が不可欠です。これらの法的要件を満たしながら、機能的で美しいクリニックを実現するためには、専門知識と豊富な経験を持つ設計事務所との協働が重要となります。また、設計・建設にかかる費用の適正な把握と投資対効果の検証も、成功するクリニック運営の基盤となります。

建築基準法・消防法対応と安全性確保

クリニック設計における法規制対応は、患者と医療スタッフの安全確保を目的とした基本的要件です。建築基準法では、構造安全性、防火・避難規定、設備基準などが詳細に定められており、医療施設特有の要求事項も存在します。消防法対応では、防火設備、避難設備、消火設備の適切な設置と維持管理が求められます。

建築基準法の医療施設関連規定では、病院・診療所の区分に応じた構造・設備基準の適用、バリアフリー新法に基づくアクセシビリティ確保、耐震性能の確保などが重要な項目となります。特に、避難階段の設置基準、廊下幅の確保、防火区画の設定などは、設計初期段階から綿密に計画される必要があります。

消防法対応では、自動火災報知設備、スプリンクラー設備、排煙設備などの消防用設備等の設置が義務付けられており、クリニックの用途と規模に応じた適切な設備選択が必要です。また、消防計画の策定と定期的な避難訓練の実施も法的要求事項となっています。

医療法に基づく規制では、診療所の構造設備基準として、診察室、待合室、処置室等の必要面積の確保、医療機器の適切な配置スペース、医療廃棄物の適正処理設備の設置などが定められています。また、感染症対策として、適切な換気設備の設置、清潔区域と不潔区域の明確な分離、手洗い設備の戦略的配置なども重要な要素となります。

クリニック設計の費用相場と投資対効果分析

クリニック設計・建設の費用相場は、診療科目、施設規模、立地条件、設備グレードなどにより大きく変動しますが、適正な予算計画と投資対効果の分析が成功するクリニック運営の基盤となります。近年の建設コスト上昇傾向を踏まえ、初期投資の最適化と長期的な運営効率の向上を両立させる設計アプローチが重要です。

一般的な内科クリニック(50坪程度)の設計・建設費用は、設計費が建設費の10-15%、建設費が坪単価50-80万円程度が相場となっています。美容クリニックや歯科クリニックなど、高度な内装仕上げや特殊設備を要する診療科目では、坪単価100万円を超える場合も珍しくありません。設計費には基本設計、実施設計、監理業務が含まれ、追加業務として法的手続き支援、家具・医療機器選定支援なども提供されます。

投資対効果分析では、患者数増加、診療効率向上、スタッフの働きやすさ向上による収益改善効果を定量的に評価しましょう。優れたクリニック設計により、患者満足度向上に伴う口コミ効果、効率的な動線設計による診療時間短縮、働きやすい環境によるスタッフ定着率向上などの効果が期待できます。

費用削減のアプローチとしては、構造・設備のスタンダード化、汎用性の高い設備機器の採用、将来の変更に対応可能なフレキシブル設計の導入などがあります。一方で、患者体験の向上や運営効率化に直結する部分への適切な投資は、長期的な収益向上に寄与します。設計段階でのライフサイクルコスト分析により、初期費用と維持管理費用の最適バランスを見極めることが重要です。

クリニック種別 坪単価目安 主な特徴
一般内科 50-70万円 標準的な設備・仕上げ
整形外科 60-80万円 リハビリ設備・バリアフリー重視
美容クリニック 80-120万円 高級感のある内装・プライバシー重視
歯科クリニック 70-100万円 専門設備・感染対策設備

まとめ

この記事では、クリニック設計における基本理念から具体的な実践手法まで、包括的に解説しました。患者体験向上と医療機能の両立、効率的な動線設計、法規制への適切な対応、そして投資対効果を考慮した設計アプローチが、成功するクリニック運営の基盤となることがお分かりいただけたでしょう。現代のクリニック設計は、単なる医療施設の建設を超えて、患者の治療体験と医療従事者の働きがいを同時に実現する総合的なデザインプロジェクトとして位置づけられています。あなたのクリニック設計プロジェクトが、地域医療の質向上と患者満足度の向上に貢献することを心より願っています。

「商業建築の設計は、ただ美しい箱を作りだすためのプロセスであってはならない。」というのが、私達KTXの考え方です。

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2025.11.10


松本 哲哉

【この記事を書いた人 松本哲哉】

KTXアーキラボ代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)

ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


【お問い合わせ先】

KTXアーキラボ一級建築士事務所

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