- 公開日:2025/03/03
- 最終更新日:2025/03/12
医療施設のデザインにおけるブランディングの重要性—空間がもたらす差別化効果とは?
こんにちは。東京都港区と兵庫県姫路市を拠点に、クリニック・病院など医療施設の空間づくりを得意とする建築設計事務所「KTXアーキラボ一級建築士事務所」です。今回は、帝国データバンクの記事(医療法人福慈会が東京地裁へ自己破産申請)を参考に、医療業界の厳しい経営環境と、そこから見えてくる「空間デザインを活用したブランディング」の必要性について考えてみたいと思います。
■ 医療業界を取り巻く厳しい経営環境
帝国データバンクの報道によると、医療法人福慈会(資産総額約9608万円、従業員400名)は2024年3月期に約40億円の収入を計上していたものの、過大な設備投資負担や人件費の上昇による低収益に悩まされ、2期連続で赤字決算となった結果、約67億円超の負債を抱え自己破産を申請する運びとなったようです。
これは近年、医療法人やクリニックが新たな施設を次々と開設し続ける一方で、急激な人件費アップや運営コストが重荷となっている実情を象徴しているといえるでしょう。実際、多くの医療施設が「高度な医療サービスを提供しなければならない」という使命感のもと、最新の医療機器の導入や施設拡充に注力する一方、集客や利用者満足度の向上のためのブランディング強化までは手が回らないケースが散見されます。
■ 空間デザインによるブランディングの必要性
こうした経営状況の中、医療施設として生き残るためには、**「選ばれる理由」**を利用者に提供しなければなりません。単に新しい設備や高度な医療技術だけでは、なかなか差別化が図りにくいのが現状です。
そこで注目されているのが、空間デザインを含むトータルなブランディングです。空間や建築を通して「このクリニック(病院)に行きたい」と思わせる独自の世界観や安心感を利用者に伝えられるかどうかが、医療施設の存在価値を高めるカギとなっています。
1. ユニークな空間設計が信頼感を高める
患者さんがクリニックや病院に足を踏み入れた瞬間、「落ち着く」「不安が和らぐ」といったプラスの感情を抱いてもらうことが重要です。たとえば、色彩計画やインテリアの素材選び、動線設計にこだわり、利用者の心身をリラックスさせる空間を実現すれば、「もう一度ここを利用したい」「家族や知人にも勧めたい」というポジティブな印象が生まれます。
2. スタッフにとって働きやすい職場環境づくり
医療施設は患者さんだけでなく、スタッフの働きやすさも非常に重要です。疲弊したスタッフが多い職場では、サービス品質にも影響が及ぶ可能性があります。休憩室やスタッフルームの動線、採光、プライバシー確保など、スタッフが快適に働ける空間設計を行うことが、長期的には施設全体の評判向上にも貢献します。
3. 医療機能とデザイン性の融合
医療施設では高度な医療機器が必要とされますが、それらをただ「置く」だけでは空間の圧迫や利用者への威圧感につながる場合があります。医療機能とデザイン性をうまく融合させることで、必要な設備を備えながらも、安心感のある環境を演出することが可能になります。
■ 今後求められる医療施設の在り方
医療法人福慈会のケースでは、運営施設が別の法人へ譲渡される見込みとのことですが、医療機関が大規模設備投資のみで生き残るのはますます困難な時代になっています。
今後は、施設そのものをブランドとして確立させることが重要となるでしょう。最新設備の導入はもちろんですが、「利用者が不安を感じやすい環境をいかに和らげるか」「医療施設の理念を空間にどう落とし込むか」といった視点を持ち、空間デザインを含むブランディング戦略を行うことで、利用者からもスタッフからも「選ばれる医療施設」になっていくと考えられます。
■ KTXアーキラボ一級建築士事務所の取り組み
当社では、クリニックや病院など医療施設の設計・デザインに特化し、**「機能性とデザイン性を兼ね備えたブランディング」**を得意としています。私たちは「医療者が安心して働ける環境」「利用者がストレスなく受診できる空間」を両立するため、以下のような視点を大切にしています。
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徹底的なヒアリング
医療施設で提供する診療科目やサービス方針、理事長先生やスタッフの理念を丁寧にお伺いし、どのような空間が求められるかを明確にします。 -
エビデンスに基づくデザイン提案
カラーコンサルティングや動線計画の研究成果、医療分野での実績に基づき、快適性・機能性を追求したプランを提案します。 -
ブランドイメージの一貫性
ロゴやサイン計画だけでなく、患者さんが見るすべての要素(受付、診察室、待合室、トイレなど)をトータルでコーディネートし、イメージを統一させます。
■ まとめ
医療法人福慈会の破産申請は、医療業界における厳しい経営環境を改めて映し出しました。今後の医療施設運営では、ハード面だけでなく、ブランディングや空間デザインを活用した差別化戦略がよりいっそう重要になるといえるでしょう。
私たちKTXアーキラボ一級建築士事務所では、医療施設の特徴や理念を最大限に引き出し、利用者・スタッフ双方にとって魅力的な空間づくりをお手伝いします。「医療施設もブランドの時代」と言われる今、空間デザインによる差別化で新たな価値を生み出してみませんか?
お気軽にご相談・お問い合わせください。共に、新しい医療施設の可能性を切り拓いていきましょう。
2025.3.3.

【この記事を書いた人 松本 哲哉】
KTXアーキラボ 代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師
2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)
お問い合わせ
建築設計事務所 KTXアーキラボ 一級建築士事務所
本社:兵庫県姫路市船丘町298-2-2F
東京オフィス:東京都港区南麻布3-4-5-002
- メール: kentixx@ktx.space
- 電話番号: 03-4400-4529(代表)
- ウェブサイト: https://ktx.space/
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