- 公開日:2025/01/05
- 最終更新日:2025/01/05
超高層ビル終焉?麻布台ヒルズがガラガラ廃墟化|KTXアーキラボ一級建築士事務所
近年の都市再開発を象徴するように注目されていた麻布台ヒルズ(東京都港区)。総事業費6400億円をかけて開発され、2022年11月に開業したばかりの大規模商業施設ですが、「ガラガラで廃墟化しているのでは?」といった声がSNSやメディアで話題になっています。都市開発の未来を占ううえで象徴的存在ともいえる麻布台ヒルズが、なぜ集客に苦戦しているのか。また、**“超高層ビル終焉”**という言葉まで飛び出す背景や、今後どのようなシナリオが考えられるのかをまとめました。
東京都港区と兵庫県姫路市にオフィスを構えるKTXアーキラボ一級建築士事務所では、これまで数多くの都市開発・建築設計に携わってまいりました。その視点から、現在の麻布台ヒルズの状況と、超高層ビルを主体とした再開発が抱える課題・展望について解説いたします。
麻布台ヒルズとは?—30年以上の歳月を費やした超大型プロジェクト
森ビルが手がける総事業費6400億円の都市再開発
麻布台ヒルズは、大手ディベロッパーである森ビルが計画着手から30年以上を費やし、満を持してオープンさせた都市再開発プロジェクトです。
- 場所:東京都港区 虎ノ門5丁目、麻布台1丁目・六本木3丁目
- アクセス:東京メトロ「六本木一丁目駅」「神谷町駅」から徒歩圏
- 主な施設:3棟の超高層タワー(1棟は建設中)と4棟の低層建物
- コンセプト:”Green”と”Wellness”を軸にした「Modern Urban Village」
- 特徴:約2.4ヘクタールの緑地、約6000平方メートルの中央広場、世界最高級ホテルブランド「アマン」の居住エリアほか、飲食店や高級ブランドショップ、オフィスフロアなど多数
老朽化した木造住宅やビルが密集する都心の“取り残された地域”だったエリアを、最新のインフラと豊富な自然空間を備えた「都市型ビレッジ」へと生まれ変わらせる壮大な計画でした。
麻布台ヒルズが「ガラガラ」?その現状とSNS上の声
開業当初、森ビルは年間約3000万人の来街者を見込んでいました。しかし、実際には**「休日でも人がまばら」「高級ブランド店はいつも閑散としている」など、SNSでも「ガラガラ」と評される状況が目立っています。さらに、「高級店ばかりで庶民には敷居が高い」**といった声も多く、「いったい誰をターゲットにしているのか」という疑問の声が上がっています。
一方で、主に上層階に入居するオフィスワーカーや、麻布台ヒルズ内に暮らす人々が利用する区画は比較的利用者が見られるものの、一般消費者や観光客を呼び込むほどの賑わいには至っていないようです。
※弊社の事務所(南麻布)から麻布台ヒルズまでは徒歩圏内で私はよく利用しますが、ネットで言われるほどガラガラという印象はありませんが、一部閑散としているエリアが部分的に存在しているという印象です。
集客に苦戦する2つの理由
1.ロケーション・アクセスの問題
- 高低差が激しい立地
もともと細い路地や急な坂が多く、スロープを上り下りしながらショッピングや観光を楽しむというイメージを持ちにくい。 - 観光地としての魅力不足
六本木や渋谷、新宿のように有名なランドマークや繁華街がすぐ隣にあるわけではなく、わざわざ買い物や観光で訪れる層を十分に取り込めていない。
2.コンセプトと経済環境とのズレ
- 高級ブランド店が並ぶ商業施設
円安や物価高など、国内経済状況が厳しい中で、富裕層以外が気軽に利用できる価格帯ではない。 - 富裕層・インバウンド依存は難しい
中国をはじめとするアジアからの“爆買い”の時代は過去のもの。個人旅行客が中心となり、麻布台ヒルズのような超高層ビル型施設に集団で押し寄せるトレンドは薄れつつある。
「超高層ビル終焉」?再開発のオワコン化が囁かれる理由
不動産コンサルティングの専門家らは、超高層ビルを主体とする商業施設の開発が、既に時代遅れとなりつつあると指摘しています。2003年開業の六本木ヒルズが大ブームを巻き起こしたのは、当時はIT企業や外資系企業が成長期にあり、ヒルズ族に代表されるセレブ文化が脚光を浴びていた背景がありました。しかし20年を経た今、
- オフィス需要の変化:リモートワークの普及や企業の経費削減により、空室リスクが高まっている
- 消費者嗜好の変化:大型施設に高級ブランドを寄せ集めるだけでは、若い富裕層も魅力を感じにくい
こうした傾向は“オフィスフロアの空き”や“想定より少ない来客数”に直結し、現在の麻布台ヒルズの苦戦ぶりを象徴していると言えます。
麻布台ヒルズは廃墟化するのか?今後のシナリオ
結論からいえば、すぐに廃墟化する可能性は低いと考えられます。森ビルグループの強固な資本力や、慶應義塾大学予防医療センター、インターナショナルスクールのブリティッシュ・スクール・イン・東京など、教育・医療機関と連携した機能が揃っているため、一定の人の流れは確保されるでしょう。
しかし、高級ブランド系の商業テナントやオフィス区画を中心に苦戦が続けば、テナント入れ替えや再ブランディングを余儀なくされる可能性があります。さらに、将来的には施設全体の運営コストを下げつつ、より幅広い層を取り込めるコンテンツ作りが求められるでしょう。
KTXアーキラボ一級建築士事務所が見る、都市再開発のポイント
東京都港区と兵庫県姫路市にオフィスを構えるKTXアーキラボ一級建築士事務所では、様々な規模の建築設計・都市再開発に携わっています。その経験から導き出された、再開発を成功させるためのポイントを以下にまとめます。
- 地域と共生するコンセプト設計
大規模プロジェクトほど、周辺地域の生活者やコミュニティと連携し、地形や歴史・文化を尊重した街づくりが欠かせません。 - 多層的な交通アクセスの確保
駅直結やバスネットワークの充実など、歩いて楽しめる動線を備えた計画は集客力向上につながります。 - 幅広い層を狙ったテナントミックス
高級ブランドだけでなく、日常使いができる店舗や娯楽要素をバランスよく配置することで、リピーターを増やす工夫が重要です。 - 環境・サステナブルな視点
「Green」と「Wellness」を追求するのであれば、単なる緑地の確保だけでなく、人々が本当にリラックスできる空間デザインや、地球環境にも優しい施工・運営が求められます。 - 常に変化・アップデートする運営体制
時代の変化に合わせてコンテンツやテナントを柔軟に入れ替え、施設そのものを持続的に成長させるビジョンを描くことが不可欠です。
まとめ|「都市開発のゴール」はまだ先にある
**麻布台ヒルズの“ガラガラ現象”**は、単なる一施設の問題ではなく、超高層ビルを主体とした旧来型の再開発モデルが転換期に差し掛かっていることを示す象徴的な事例といえます。
- ロケーションや動線設計の難しさ
- 高級ブランドメインのコンセプトと現代の消費者意識との乖離
- リモートワークなどによるオフィス需要の先行き不透明感
これらの要因が複雑に絡み合い、「超高層ビル終焉」というフレーズが現実味を帯びつつあります。とはいえ、都市の成熟や人口動態の変化を踏まえた再開発計画のアップデート次第では、麻布台ヒルズを含むこうした大型施設が新しい方向性へ転換していく可能性も十分にあるでしょう。
KTXアーキラボ一級建築士事務所へのご相談
当事務所では、大型商業施設や超高層ビル開発のみならず、地域密着型のプロジェクトまで幅広く設計・デザインを行っています。近年は都市のサステナビリティや、地域住民との共生を重視した街づくりへの関心が高まっており、従来の“ヒルズモデル”から学ぶべき教訓も多くあると考えています。
超高層ビルのリノベーションから地方の再開発プロジェクトまで、都市の未来を見据えたご提案をいたします。再開発計画でお悩みの方は、ぜひお気軽にKTXアーキラボ一級建築士事務所にご相談ください。
街づくりの未来は、常に変化と進化の連続です。ひとつの施設が抱える課題を教訓としながら、豊かで活気ある都市空間を実現していきましょう。
2025.1.5
【この記事を書いた人 松本 哲哉】
KTXアーキラボ 代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師
2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)
お問い合わせ
建築設計事務所 KTXアーキラボ 一級建築士事務所
本社:兵庫県姫路市
東京オフィス:港区南麻布
- メール: kentixx@ktx.space
- 電話番号: 03-4400-4529(代表)
- ウェブサイト: https://ktx.space/
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