マンションデザイン〜台北の超高級マンション「陶朱隠園」が売れない理由|KTXアーキラボ一級建築士事務所ブログ

 
     
  • 公開日:2025/01/04
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  • 最終更新日:2025/01/04

マンションデザイン〜台北の超高級マンション「陶朱隠園」が売れない理由|KTXアーキラボ一級建築士事務所ブログ

東京・港区と兵庫・姫路市にオフィスを構えるKTXアーキラボ一級建築士事務所(以下、KTXアーキラボ)です。今回は、台湾の台北市で「エコシンボル」として開発された超高級マンション「陶朱隠園」を題材に、デザインや販売不振の理由を考察しながら、マンションデザインの在り方について解説していきます。


1. 台北の超高級マンション「陶朱隠園」とは?

台北101近くの信義計画区に位置する「陶朱隠園」は、地上21階建て・地下4階建て、総戸数40戸の超高級マンションです。2018年に完成したにもかかわらず、現在もほとんどが空室という状況が話題を呼んでいます。

1-1. 好立地にも関わらず空室が目立つ

  • 観光名所台北101の近隣
  • 500㎡の中に15個のデパートが密集している信義計画区
  • 台北で最も開発が進むエリアであり、いわゆる「一等地」

これだけの好立地でありながら売れ残っているのはなぜでしょうか?


2. 特徴的な建築デザインとエコへの取り組み

「陶朱隠園」は、ベルギーの有名建築家によって設計されました。各フロアが4.5度ずつ回転し、あたかもDNAのようにねじれた独特のファサードが目を引きます。

2-1. 垂直森林(バーティカル・フォレスト)の実現

  • 各フロアに2万3千本の樹木を植栽
  • 太陽光発電や雨水再利用装置など、環境配慮型の設備を完備
  • 都市中心部ながら豊かな緑を取り込み、街のエコシンボルを目指す

2-2. 高い耐震性能

台湾は地震が多い国です。そのため、耐震構造の性能が厳しく求められます。「陶朱隠園」はこの点でも高い評価を得ています。


3. 驚きの価格と維持管理費

「陶朱隠園」が売れ残っている最も大きな理由の一つに、購入費用や維持管理費の高さが挙げられます。

3-1. 1戸80〜140億円という高額価格帯

総工費約350億円という巨額の費用をかけた本物件の販売価格は、1戸あたり約80〜140億円。桁違いの高額さが、購入層を極めて限定的にしています。

3-2. 月70万円の維持管理費

  • 樹木のメンテナンスコスト
  • 七機のエレベーター(車も乗れる仕様)の維持管理
  • 各種サービスの充実によるマンション管理費の高騰

結果的に月あたりの管理費が70万円という驚くべき水準になっています。


4. 厳しすぎる審査と競合物件の存在

価格や維持費に加えて、入居審査が非常に厳しいことも「陶朱隠園」が売れ残る要因となっています。

4-1. 社会的地位・財力・会社の信用度もチェック

高所得者向けマンションは一般的に審査が厳しい傾向にありますが、「陶朱隠園」の審査基準はさらに高く、普通の人では購入が難しい状況です。

4-2. 周囲に多数の高級マンションが存在

信義計画区周辺には、ここよりも安価でかつ優良な高級物件が多数存在します。わざわざ「陶朱隠園」を選ぶ購入者が限られるのは当然の帰結と言えます。


5. デベロッパーの狙い:台北市の「エコシンボル」

デベロッパーの威京グループは、この物件が売れないことを大きな問題とは見ていません。
最大の目的は、台北市の「エコシンボル」となる建築を具現化することだったからです。

  • 都市部で自然と共生する試み
  • 環境重視型の建築によりブランド力を高める戦略

売却益よりも象徴的な建築物の存在自体がプロモーションになっているのです。


6. まとめ:超高級マンションから見る今後のマンションデザイン

「陶朱隠園」が示唆するのは、高級マンションでもコンセプトや価格設定が合わなければ売れ残る可能性があるということです。一方で、エコシンボルとして街のブランドイメージを高める効果は大いに期待できます。

KTXアーキラボでは、こうした時代や地域のニーズに合ったマンションデザインを常に探求しています。環境配慮型の取り組みやランドスケープデザイン、ファサードの見せ方など、様々な観点で「これからの建築」を提案していく所存です。

KTXアーキラボの取り組み

意匠性の高いファサードデザイン

環境配慮型建築の設計・デザイン

耐震性能・構造デザインの設計ノウハウ

  • 東京(港区)・姫路(兵庫県)での都市型&地域型建築経験

不動産開発、マンション設計でお困りの際は、ぜひKTXアーキラボにご相談ください。


KTXアーキラボ一級建築士事務所について

KTXアーキラボは、東京都港区と兵庫県姫路市にオフィスを構える建築デザイン事務所です。高級マンションや商業施設、集合住宅から個人邸宅まで、幅広い領域で「デザイン性と機能性の両立」を目指しています。環境や地域特性への配慮、時代が求める高付加価値建築にフォーカスし、クライアントの理想を形にするお手伝いをいたします。


今後もKTXアーキラボ一級建築士事務所では、国内外の先進的な建築事例をもとに、マンションデザインや最新の建築情報を発信していきます。最後までお読みいただきありがとうございました。

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2025.1.4


松本 哲哉

【この記事を書いた人 松本 哲哉】

KTXアーキラボ 代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)

▶ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


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