医療モール設計のクリニックデザイン:経営面でも診療面でもメリットを活かすポイント

 
     
  • 公開日:2024/12/24
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  • 最終更新日:2024/12/24

医療モール設計のクリニックデザイン:経営面でも診療面でもメリットを活かすポイント

はじめまして、KTXアーキラボ一級建築士事務所です。私たちは東京都港区と兵庫県姫路市にオフィスを構え、クリニックや医院の設計・デザインを多数手がけています。近年、医療モールでの開業が注目されている背景には、高齢化社会の進展や医療費の増加、病床数削減方針による新規開業ニーズの高まりなど、さまざまな要因があります。

本記事では、医療モールの基礎情報とともに、医療モールでの開業のメリット・デメリットや実際の成功例・失敗例についてご紹介します。これからクリニックを開業しようと検討されているドクターの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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医療モールとは

医療モールとは、異なる診療科のクリニックが1カ所に集まっている形態を指します。アクセスの良い駅前ビルやショッピングモールの一角など、利便性の高いロケーションに設けられるケースが多く、患者にとってもドクターにとってもメリットが多いことから、都市部を中心に増え続けています。

医療モールには大きく分けて、以下の3つのタイプがあります。

  1. 医療ビレッジ
    戸建てタイプのクリニックが1カ所に集まった形態です。外装や内装をクリニックのコンセプトに合わせて自由に設計しやすい一方、駐車場は他クリニックと共有になるケースが多いのが特徴です。
  2. 医療モール(商業施設併設型)
    駅ビルやショッピングモールなどの一角に複数のクリニックを集める形態を指します。施設自体が地域のランドマークになっていることも多く、クリニックの認知度向上や買い物ついでの受診など、集患につながりやすいメリットがあります。
  3. 医療ビル
    ビル全体が医療機関や調剤薬局のみで構成される形態です。最初から医療施設が入ることを想定して設計されているため、エレベーターやバリアフリー設計、電気容量や給排水のインフラなどが整っている点も特長といえます。

医療モールが増加している背景

1. 高齢化にともなう医療費の増加

高齢社会が進む日本では、高齢者医療費が年々増加しています。保険制度を維持するためにも医療費の削減が急務となり、政府は病床数の削減やジェネリック医薬品の普及、薬価改定などに取り組んでいます。一方で、高齢化によって患者数は減ることなく増える見通しにあります。そのため、医療機関の需要は依然として高く、新規開業を検討するドクターも増えているのが現状です。

2. 病床数の削減と開業医の増加

政府は2025年までに病床数を119万床に削減する方針を掲げており、集中治療が不要な患者は在宅や通院へシフトしやすい環境づくりを推進しています。病院施設数の減少に反して医師の人数は増加しているため、勤務医の就職先が不足する地域も出てきました。その結果、「自分で開業する」という選択肢を取るドクターが増えています。しかし、都心部では開業医同士の競合も激化しており、相乗効果の期待できる医療モールがより注目を集めています。


医療モールの役割

医療モールは、総合的な初期医療と専門医療を同時に提供できる点が最大の特徴です。駅の近くなどアクセスの良い場所に複数の専門クリニックが集まることで、患者は一度の外出で複数の診療科を受診できる利便性を手に入れます。また、患者を医療モールに誘導することで、大学病院や基幹病院はより重篤な患者の対応に専念できるなど、地域医療の効率化にもつながります。


医療モールで開業するメリットとデメリット

メリット

  1. 集患力を高めやすい
    立地の良い医療モールには複数のクリニックや調剤薬局が集まるため、単独開業よりも認知度が上がりやすく、効率的に患者を集められます。
  2. 設備投資コストを抑えられる
    看板や駐車場、共用スペース(待合室・トイレなど)を複数のテナント間で共有できるため、初期費用や維持費を大幅に削減できます。
  3. ドクター同士の連携がしやすい
    他の診療科の医師が近くにいるため、情報共有や患者の紹介がスムーズです。自身の専門医療に集中しやすくなるうえ、クリニック経営やスタッフ教育に関する相談ができる仲間を得られる点も大きな魅力です。

デメリット

  1. モール内の人間関係に左右される
    大病院の医局のような上下関係はないものの、治療方針が合わないドクターもいるかもしれません。互いにメリットを享受するには、医療モール全体の連携やコミュニケーションを大切にすることが必要です。
  2. 施設のルールや使い勝手の制約
    医療モールは複数のクリニックが共用する前提で設計されているため、単独でクリニックを設計するのに比べて自由度が下がることがあります。標榜科目や診療時間など、事前に細やかな打ち合わせを重ねておくことが欠かせません。

医療モールで開業した成功例・失敗例

成功例

  • 駅から徒歩3分以内の物件で開業
    開業直後からスムーズに患者が来院し、短期間で経営が安定した事例があります。乗降客数の多い駅に隣接する商業ビルなど、利便性が高い立地で開業することが成功のポイントのひとつです。
  • 専門性の高いクリニック同士が集まる
    競合にならずに相互に患者を紹介し合えるため、地域の医療レベル向上に貢献しながら、クリニックも安定経営につながった例があります。さらに調剤薬局も同じフロアに入っていると、患者の利便性が上がるメリットがあります。

失敗例

  • モールのコンセプトがまとまらず、ドクター同士が連携を図れない
    他クリニックとの関係がうまくいかず、本来の医療モールの利点を活かしきれないケースです。
  • 立地調査や競合リサーチが不十分
    書類上では良いと思っていた場所が実際は人通りが少ない・ターゲット層が想定より少ない、などで集患に苦戦する事例が報告されています。

KTXアーキラボが考える「医療モール設計」のポイント

私たちKTXアーキラボ一級建築士事務所は、東京都港区と兵庫県姫路市を拠点に、数多くのクリニック設計や医療モール開発に携わってまいりました。その経験から、医療モールでのクリニック開業が成功するために以下の視点を大切にしています。

  1. 診療動線を徹底的に検討する
    複数の診療科が集まる医療モールだからこそ、患者さんの動線だけでなく、ドクター・スタッフの動線、各種設備の配置などを事前にしっかりと設計する必要があります。長期的に見て、動線が無駄なく効率的であるほど診療の質も高まります。
  2. 患者の安心感を生むデザイン設計
    医療モールは、多くの患者さんが訪れる“地域の医療拠点”でもあります。清潔感と安らぎのある空間設計や、視認性の高いサイン計画を通じて、初めて訪れた患者さんが迷わず受診できる工夫を重視しています。
  3. スケーラビリティを考慮した設備計画
    電気容量や給排水設備など、医療施設ならではの設備要件を初期段階でしっかりと押さえることが重要です。将来の診療科拡張や最新医療機器の導入に対応できるスケーラビリティを考慮した設計が求められます。
  4. テナント間の連携・コミュニケーションを後押しする仕組みづくり
    医療モール成功の鍵は、ドクター同士およびスタッフ同士の連携にあります。顔を合わせて話し合える共用スペースをあらかじめ設計する、定期的に意見交換できる場を設けるなど、医療モール全体で交流が生まれるよう配慮すると、相乗効果が高まります。

まとめ

高齢化社会にともなう医療ニーズの高まりや病床数削減方針も相まって、医療モールという形態は開業医にとって大きなチャンスとなっています。コスト・集患の効率・ドクター同士の連携など、多くのメリットを得られる一方で、テナント間の人間関係や建物の制約などのデメリットがあることも事実です。

しかし、しっかりとした立地選定や設備計画、ほかのドクターとの連携体制を整えることで、医療モールでの開業は十分に成功を目指せます。KTXアーキラボ一級建築士事務所では、医療モール設計やクリニック開業支援を通じて培ったノウハウをもとに、ドクターの皆さまの理想のクリニックづくりをお手伝いしております。医療モールでの開業やクリニックデザインに少しでも興味をお持ちでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。


KTXアーキラボ一級建築士事務所

  • 東京オフィス:東京都港区
  • 姫路オフィス:兵庫県姫路市

医療モール設計、クリニック建築設計、医院改修や移転など、幅広くサポートいたします。医療モールならではの空間づくり、働きやすい診療動線の設計、地域に愛されるクリニックデザインのことなら、ぜひ私たちKTXアーキラボ一級建築士事務所にお任せください。

 

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2024.12.24


松本 哲哉

【この記事を書いた人 松本 哲哉】

KTXアーキラボ 代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師

2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)

▶ウィキペディア 松本哲哉(建築家)


お問い合わせ

建築設計事務所 KTXアーキラボ 一級建築士事務所

本社:兵庫県姫路市

東京オフィス:港区南麻布

 

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