隈研吾氏設計の美術館でルーバー老朽化問題が浮上:建築家の責任と今後の課題

 
     
  • 公開日:2024/11/30
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  • 最終更新日:2024/11/30

隈研吾氏設計の美術館でルーバー老朽化問題が浮上:建築家の責任と今後の課題

こんにちは、東京都港区と兵庫県姫路市にオフィスを構える建築設計事務所、KTXアーキラボです。今回は、隈研吾氏が設計した「那珂川町馬頭広重美術館」で発生しているルーバーの老朽化問題と、建築家の責任について考察します。

那珂川町馬頭広重美術館の概要

「那珂川町馬頭広重美術館」は、東海道五十三次で知られる歌川広重の浮世絵版画などを展示する美術館です。2000年に約10億円をかけて建設され、地元産の八溝杉(やみぞすぎ)を使用したルーバーが特徴的なデザインとなっています。設計は隈研吾建築都市設計事務所、施工は大林組が担当し、鉄筋コンクリート造と一部鉄骨造で構成されています。

ルーバー老朽化問題の経緯

約5年前から、屋根を覆うルーバーの一部が崩れ始め、館内で雨漏りが発生するなどの問題が顕在化しました。特にここ1~2年でルーバーの腐食が深刻化し、那珂川町は約3億円を投じて改修工事を計画しています。2025年4月の着工、同年度内の工事完了を目指しており、議会の承認を経て進められる予定です。

老朽化の原因と背景

那珂川町生涯学習課の川上浩課長補佐によれば、美術品管理のための温度調節などに多くのコストがかかり、建物の外観のメンテナンスに十分な費用を割けなかったと説明しています。また、隈研吾氏は老朽化の原因について、「木を守るための保護塗料が現在のものと比べて性能が低かった」と述べています。

建築家の責任とは

建築家はデザインだけでなく、建物の耐久性やメンテナンス性も考慮する責任があります。しかし、設計時には最新の技術や素材を使用しても、時間の経過とともに劣化する可能性は否めません。

  • 素材選定の重要性:地元産の木材を使用することで地域活性化に貢献していますが、耐候性やメンテナンス性も重視すべきです。
  • メンテナンス計画の提案:長期的な維持管理を見据えたメンテナンス計画を施主に提案することも建築家の役割です。

今後の課題と対策

改修工事では、耐久性の高い素材や最新の保護塗料の使用が検討されるでしょう。また、定期的なメンテナンスを行うことで、建物の寿命を延ばすことが可能です。

  • 最新技術の導入:新しい防腐・防水技術を取り入れることで、同様の問題を防ぐ。
  • 予算の確保:維持管理費用を長期的な予算計画に組み込む。

※木材を外装(特に雨を受ける屋根)に使用すると、同じ問題が再発する可能性も高いと思われますので、個人的にはルーバーの素材自体の変更を検討された方が良いのではないかと考えます。

まとめ

「那珂川町馬頭広重美術館」のルーバー老朽化問題は、建築家の責任と建物の維持管理の重要性を再認識させる事例です。私たちKTXアーキラボも、デザイン性だけでなく、耐久性やメンテナンス性を考慮した建築設計を心掛けています。今後も持続可能な建築物の提供に努めてまいります。

2024.11.30


  • 松本 哲哉

    【この記事を書いた人 松本 哲哉】

  • KTXアーキラボ 代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師
  • 2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)
  • ▶ウィキペディア 松本哲哉(建築家)

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