- 公開日:2018/08/17
- 最終更新日:2024/03/01
潜在意識の扉を開く空間デザイン – INCEPTION
INCEPTION という映画をご存知でしょうか。
レオナルド・ディカプリオや渡辺謙が出演する映画で、ある要人を操るために相手の潜在意識(夢)に潜入し、ある考えを植え付けるというストーリーです。
ただ考えを伝えるだけなら、話して伝えたり文章で伝えることもできるはずですが、なぜ潜在意識に潜り込んでアイデアを植え付ける必要があるのでしょうか?
それは外部から伝えられた情報と、内部から出てきた情報(つまり自分自身で考え導き出した答え)では、情報の信憑性に大きな差があるからです。
これは商環境設計においても応用すべきものであると私達は考えています。
外部から受け取った情報を私達は「広告情報」として処理します。広告情報は相手からの売り込みであり、美化された情報であることを私達は知っています。
一方、内部からの情報は自分自身が考え導き出した答えですから、その信頼性は前者に比べ非常に高くなります。
例えば飲食店であれば、「うちの料理は美味しいですよ」と謳う広告を見ても気に留める人は少ないでしょう。しかしお店の雰囲気や様々な状況を自ら感じ取った結果、「このお店はおいしいに違いない」と自ら考えた場合、その期待値は大きく押し上げられます。
病院やクリニックなど医療施設においては「うちの医療技術は最先端ですよ」「うちの先生は有能ですよ」と言葉で伝えるのではなく、「ここのクリニックには最先端の医療技術があるに違いない」「ここの先生は信頼できるに違いない」と患者さんに自ら感じさせることができれば、そこでの医療に対する期待値が大きく押し上げられます。
視覚情報から思い通りの情報を、見る人の潜在意識に届ける=inception を成し、クライアントのビジネスを成功に導くことが、商環境設計における最優先事項であると私達は考えています。
それを成し得る空間は相当に印象の強いものである必要があります。それが潜在意識の扉を一瞬にして開け放つ「鍵」となるからです。そしてその鍵には、扉を開けると同時に伝えるメッセージを潜り込ませなければなりません。
そのメッセージはどのようなメッセージであるべきなのか、それを伝えるための鍵はどのような形であるべきなのか、それをクライアントと共に考え、創り上げるのが私たち商環境デザイナーの仕事です。
設計実例
用途:泌尿器科クリニック
鍵 :近未来的なデジタル空間
メッセージ:最先端の医療技術を持つクリニック
世界的に認定医の少ないダヴィンチを使用するロボット手術を得意とする先生の開業案件でした 。高度な医療技術を訴求し、他院との差別化を図りたいところですが、 医療法上そのような医院同士の競争を生む広告物は認められません。「最先端のハイテク医療」その技術がこのクリニックにある、ということを言葉ではなくイメージで伝える必要がありました。→read more
用途:眼科クリニック
鍵 :外から手術室内が見える大胆なレイアウト
メッセージ:手術を得意とする高度な医療技術
眼科手術が得意な先生の開業案件でした。それを「私は手術が得意です」という言葉で伝えるのではなく、イメージによって伝える手法を模索しました。外部に面してガラス張りの手術室を配置し、来院された患者さんや、外部(施設の通路)を歩くお客さんに「手術のできる眼科がここにある」ということを印象付け、医療技術の高さへの期待値を上げます。 更に明るく清潔感のある手術室を可視化することで、手術に対する不安を拭います。開業わずか5ヶ月にして手術の予約が殺到し、手術日を増やすため診療時間を変更することになる程、評判の眼科クリニックとなりました。→read more
用途:皮革ショールーム
鍵 :巨大な立体什器
メッセージ:膨大なアイテム数
皮革製造会社のためのショールーム。皮革問屋を通さずに靴や鞄のメーカーと直接商談するために作られたショールームでした。メーカーが皮革問屋を通して皮革を購入するのは「豊富な選択肢」と「皮革の安定供給」のため。そこでここを訪れる商談相手には、多様な選択肢とじゅうぶんなストック量があることを印象付ける必要がありました。クライアントからの要望は、約300㎡の展示スペースに皮革3000点以上を展示すること。この数の皮革をこの面積で展示するには、一つの階だけでは展示しきれないため、展示室を2ないし3階に積み上げる必要がありました。しかし展示室を分割すると「膨大なストック」と「多様な選択肢」を印象付ける効果が薄くなるため、ひとつの展示室に巨大な立体什器を設置しました。→read more
用途:調剤薬局
鍵 :先端医療研究施設のイメージ
メッセージ:調剤される薬品への高い信頼性
調剤薬局を訪れる目的は薬を買うことです。つまり消費者は病気や傷に対する「癒し」を求めて薬局を訪れます。医療関係施設の設計において、度々話題に上るキーワードが「癒し」です。「癒し」といえば「自然」、室内に植栽を置きしましょう、壁に木を使いましょう、というような自然を生かした癒しへと傾きがちです。それも確かに癒しの一要素ですが、人が医療に求めている「癒し」とは、本来違うベクトルの先にあるものと私たちは捉えています。→read more
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written by KTX archiLAB 一級建築士事務所 松本哲哉
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